習の逝かざる いかにすべき

 
尖閣問題で関係が悪化している日中関係に、少し動きが出てきた。

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1月22日から、北京を訪れている公明党の山口代表は、24日午後、王家瑞対外連絡部長と会談した。

会談で、王氏が、「両国関係に紆余曲折があることはごく自然なことだ。このような特別な時期だからこそ、双方の意思疎通と対話を強化し、相互理解をより一層、深めなければならない」とした上で、尖閣問題について「これまで棚上げにすることで両国の友好が保たれてきた。今の世代に知恵がなく解決できないのであれば、後の世代に託すこともある」と棚上げ論を持ち出した。

会談の場で中国側から棚上げ論を持ち出してきたということは、中国自身が棚上げを落とし処だと考えているということ。

一見、あれだけ尖閣は自分のものだとアピールし、領海侵犯、領空侵犯を繰り返した中国が、棚上げ論を自ら言うなんて、譲歩する気になったのか、と見えなくもないけれど、あれほど度重なる領海侵犯、領空侵犯をやったからこそ、世界からは、尖閣は係争地だと受け止められてしまっている可能性がある。

そこで、棚上げ論で一旦落ち着かせて、日本側から尖閣に灯台やら港やら、公務員常駐やらをさせないよう約束させてしまえば、一歩前進とは言わないまでも、半歩ぐらいは前進したことになる。

見た目は"棚上げ"として双方手を出さないように見えて、日本の領土から、何時の間にやら、「係争地」へと変化しているから。

この尖閣棚上げ論は、公明党の山口代表も口にしたことがある。山口代表は訪中前日の21日に、香港・鳳凰衛星テレビのインタビューで、「将来の知恵に任せるということは一つの賢明な判断だ。…この問題を今ぶつけ合っても、満足する解決が容易に見つからないとすれば、しばらく静かにしておくということも大きな知恵だ。…両国の軍用機が島に近づき合うことは、不測の事態を招きかねない。…軍用機が入らないことを双方で理解する必要がある」と述べている。

果たして、この発言が、山口代表自身の持論なのか、それとも中国の意を汲んでのアドバルーン発言なのかは分からないけれど、元々、尖閣に領土問題は存在しないというのが日本の立場。それが棚上げ論によって、「係争地」にさせられてしまうことは許容できるものじゃない。今の状況下で、尖閣を棚上げ論で一先ず決着させるのは、日本にとっては、殆ど負けに等しい。

この山口代表の発言について、翌22日にすぐさま、自民党の石破幹事長が「尖閣はわが国固有の領土だ。棚上げする理由はどこにも存在しない。…かつてトウ小平氏が『棚上げ』を提案したが、日本政府として今まで一度も是認したことはない。政府、自民党はかつても今も立場は変わらない」と記者会見で述べ、安倍総理がテレビ朝日の番組で、 「基本的に尖閣上空は私たちの空であり、自衛隊機が入るかどうかは私たちが決めることだ」と発言したのは当然のことと言える。

これらの発言を受けて、山口代表は22日に尖閣諸島について「我が国固有の領土で、『領土問題は存在しない』という立場は、政府・与党の共通した認識だ」と軌道修正している。

ただ、こうした、表向きの発言はさて置いて、水面下では、激しく落としどころを探っているのではないかと思われる。

というのは、山口代表は、安倍総理から習近平総書記宛の親書を預かっての訪中であり、習近平と会うのがその最大の目的だから。だから、なんとしてでも、習近平との会談を実現したい筈。だけど、山口氏は22日の訪中以来、24日になっても、習近平との会談はおろか、面会すら実現していない。



では、習近平が他国の特使と会えないくらい忙しいのかといえば、23日に、韓国のパク・クネ次期大統領の特使が、先を越す形で、習近平と面会し、親書を手渡している。だから、時間がないわけじゃない。

とすると、日本側から譲歩を引き出すためとか、何かの駆け引きで会うのを遅らせているか、それとも、山口代表と王家瑞氏らとの会談内容の報告を受けてからに会うかどうか決めようとしているか、などが考えられる。

ただ、複数の関係筋によれば、25日午前に北京市内の人民大会堂で、山口代表と習近平総書記の会談を行う方向で、最終調整に入ったというから、習近平に、会談しようと判断させるだけの何かがあったということなのだろう。

山口氏は、24日、中国の楊外相との会談で、「尖閣諸島を巡る立場に違いがあるのは事実だ。今回の訪中で対話の扉を開き、政治レベルでの対話を重ねて日中首脳会談の実現につなげたい」と述べているから、習近平総書記との会談を行なって、親書を手渡し、日中首脳会談への足掛かりを掴むことができれば、とりあえずの特使の役目を果たしたことにはなるだろうと思われる。

だけど、あまり、日中首脳会談の実現を焦る余り、尖閣棚上げ論などを口にして、下手な譲歩などはしないほうがいいと思う。

尖閣棚上げ論自身が、日本にとっての外交的敗北になるのは勿論だけれど、それ以上に、日中首脳会談までしばらく時間を置いた方が、日本にとっては有利に働くと思われるから。

今、安倍総理は、自由と繁栄の弧、セキュリティダイヤモンド構想を掲げ、中国包囲網を作り始めている。中国は包囲されるのをとても嫌がっている。外交交渉としてこれを使わない手はない。

安部総理は内閣発足後、閣僚をASEANに外遊させ、先日自らベトナム、タイ、インドネシアを歴訪した。インドネシアでは、「安倍ドクトリン」を発表し、東南アジアから着々と包囲網を構築している。

そして、2月以降に訪米するタイミングを探っているし、1月16日には、河井衆院外務委員長をブリュッセルのNATO本部に特使として派遣して、ラスムセン事務総長に親書を手渡し、春にもラスムセン氏を日本に招待する方向で動いている。

更には、2月に、森元総理を特使としてロシアに派遣し、首脳会議へ環境整備図ろうとしている。東南アジアのシーレーンから、EUから、ロシアから、完全に中国を包囲する形で関係強化を進めている。

だから、どうせなら、これらの中国包囲網の足固めをほとんど仕上げてから、中国との首脳会談に持ち込んだ方がいい。その方がずっと有利に事が運ぶ。

交渉事は、戦略的に不敗の地に立った側が圧倒的に強い。だから、中国との首脳会談は、慌てずゆっくりやればいいと思う。どうせ日本が譲らなければ、中国が退くことはない。こちらから、「対話のチャンネルは開けてますよ~、何時でも対話しますよ~」というポーズだけとっていればいくらでも時間は稼げるはず。向こうがガタガタいってくるのを受け流して、その間にせっせと中国包囲網を完成させる。

日中首脳会談は、四面楚歌に追い込んでから、何食わぬ顔ですればいい。




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この記事へのコメント

  • 白なまず

    今の公明党を制御しているのは、創価学会の池田さんであろうか?
    この在日朝鮮人である池田さんはたしか、85歳くらいだと思うが、
    相当耄碌していると思う。池田さんへ命令できるのは北朝鮮であろうか?
    もう彼に命令している者は居ないのではないか?

    もう彼は、まともに政治活動などできる状態ではないのだとすると、
    誰が彼に代わって支那や朝鮮と作戦を実行しているのか?
    それは、恐らくというか、確実に創価学会に北朝鮮のスパイが居て
    創価学会を仕切っていると考えると彼らの今後の行動も理解できるはずである。

    つまり、公明党を抑える為には、北朝鮮が嫌がる事をするに限る。
    2015年08月10日 15:23
  • sdi

    今回の北京の中国共産党党中央の動きは、やはり最低限の目的を達成したからでしょう
    。最低限の目的とは言うまでもありませんが「尖閣諸島の係争地化を世界に印象づける
    」です。これに対して日本は「尖閣諸島は日本の領土のイメージ保持に失敗した」とい
    うのが石原都知事の公有化発言(もしくは巡視船衝突事件)から今日まで一連の事件の評
    価になってしまいました。
    ただ、最低限といっても現在の国際情勢や中国の国内情勢を考えると、中国側はこれ以上の成果は望むべくもないことも確かです。いきなり尖閣諸島の領土化なんて飛躍は不可能ですし、彼らの海洋戦力を考えると尖閣諸島の実効支配も無理です。なにより、あちこちでトラブルを起こしている彼らは尖閣諸島に全力を傾注できません。尖閣海域よりは南シナ海の海上支配のほうが海洋戦略的には重要です。中国の「棚上げ」発言は、「尖閣諸島は日中両国間の係争地ということで固定しよう」という意図です。公明党の大臣の発言はあまり軽率ですし、石破幹事長が緊急でフォローに入ったのも当然です。
    今回は、日本側の失策に見事に付け込まれました。今後、同じような失策を繰り返せば致命傷に至るやもしれません
    2015年08月10日 15:23

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