昨日のエントリーの続きです。
この安倍ドクトリンに対して、早速というか、またしてもというか、中国が噛みついた。
人民網は、「『安倍ドクトリン』をASEANに売り込む日本」と題した記事を掲載した。この記事は1月18日付なのだけれど、安倍総理が安倍ドクトリンを発表したのも同じく1月18日だから、ほぼ同時。もうストーカー並に神経を尖らせている。
その件の記事はこちらで参照していただければと思うけれど、要は、安倍ドクトリンに対する反論で、そんなものは通用しないという内容。
それによると、中国は「安倍ドクトリン」をASEAN、インド、オーストラリアを含むアジア太平洋地域での2国間関係、多国間関係の構築が地域の安定に寄与するという構想であるとし、その狙いは、対中包囲網を構築する事にあると見ているようだ。しかしながら、その目論見は、ASEANが多様性を持つ国々の集まりであるがゆえに、共通の基盤として通用しないと結論づけている。
昨日のエントリーで筆者は、安倍ドクトリンは、これまでのドクトリンの上に「自由や民主主義」といった「世界観」を更に上乗せしたものだといったけれど、中国はその「世界観」は通用しないという。
だけど、安倍ドクトリンで提示するところの「世界観」が、限定された地域だけで通用する「世界観」であればまだしも、「自由や民主主義」という世界観は、現時点では、普遍的価値観であると世界的に認められているもの。だから、その普遍的価値観を掲げた安倍ドクトリンの枠内に、ASEANは入らない、といって否定することは、すなわち、ASEANは普遍的価値観を有しておらず、また、それを世界と共にすることもできない、と宣言するに等しい。これは、随分と失礼な話。
例えば、ASEANが、「自由や民主主義」と同じくらいに、普遍的価値観とされる何かを共有していて、そうであるがゆえに、「自由や民主主義」という世界観の枠内には入らない、又は入る必要がないのだとでもいうのであれば、安倍ドクトリンがASEANには通用しない、という主張にも多少は説得力があるとは思うけれど、中国は、何らかの"普遍的価値観"を有する「別の世界観」を提示するわけでもなく、ASEANは多様性を持つ国々の集まりであるから、通用しないというだけで止まっている。
中国がただ、通用しない理由として挙げたものは、次の2つ。
1.安定した政府、良好な社会治安、整った法治中国は、この2つの満たす国はASEANには存在しないから、安倍ドクトリンは通用しない、という。だけど、これらの条件は、「国家の資源をどう使うか」という次元の問題であり、戦略の階層でいえば、上から3番目の「大戦略」レベルの話。安倍ドクトリンが「世界観」という戦略の階層の最上位層をしっかりとキャッチアップしようとしているのに対して、その2段階下の階層で、ああだこうだいったところで対抗し得ない。
2.十分な経済インフラ、人件費の低さ、十分な労働力、大きな潜在力を持つ市場
従って、安倍ドクトリンに対する中国人民網の反論記事は、戦略の階層の視点からみれば、既に敗れているのだけれど、人民網のこの記事は、「今後10年内にASEANが中国に完全に取って代わって日本企業が全く大胆に、安心して投資できる対象となるのは困難だ。また、世界第2の経済大国、アジア最大の経済大国である中国には日本企業の投資を引きつけられる地方がまだ多くある。現在、中国は投資先としてASEAN諸国とは比べものにならないプラス条件を持つ」と主張する。
これは、「中国こそが、ASEANが満たすことの出来ないこれら2条件を満たす国なのだ」と暗に主張しているに他ならないのだけれど、果たして本当にそうなのか正直疑問なところはある。
例えば、最初の条件である、「安定した政府、良好な社会治安、整った法治」にしても、昨年あれほどの反日暴動を起こしておいて、一体どのあたりが、"良好な社会治安"なのか。パクリ、偽物が蔓延する中のどこに"整った法治"があるのか。
また、2番目の条件である「十分な経済インフラ、人件費の低さ、十分な労働力、大きな潜在力を持つ市場」にしても、中国国内の地域ごとの格差が激しく、インフラにしても、市場にしても、中国全土に渡って"十分"だとは言い難い。
また人件費にしても、もう"安い"なんていえるレベルではなくなりつつあるし、外資もそう思ってはいない。
最近、中国の国務院発展研究センターが、500社近い多国籍企業を対象に行なった調査によると、中国の投資環境に関する17要素のうち、外資企業が最も重視しているのは、「市場」「インフラ」「外資政策」の3つであり、人件費の安さは4番目だったそうだ。
また、昨年12月中旬に、「人民日報」のウェブサイトにて、新政権下における外資の商機についての討論会を開催したところ、「中国の人件費の面での優位性は薄れ、外資の商機は、中国の巨大なマーケットと費用対効果の高い研究者にある。費用対効果でみればブルーカラーの人件費は上昇しているが、研究者の人件費はさほど高くない。」という指摘や、「外資をより効果的に利用するためには、外資企業の権益や知的財産権の保護を重点に投資環境の改善を続け、外資導入政策も優遇措置中心の政策から総合的な強みを駆使した政策に移行しなければならない」といった意見が出たという。
だけど、本気でこうした政策をするのであれば、それこそ、安倍ドクトリンが宣言した、「自由や民主主義」という世界観、普遍的価値観が必要なのではないかと思われる。
いくら研究者の人件費が費用対効果安いといっても、そこで発明され、開発されたものの権利が護られず、直ぐにパクられ、真似されてしまうような国で、費用対効果が云々言われても、鼻白んでしまう。また、産業分野によっては、権益さえ護られればそれで十分とは限らない。特に情報・サービス産業などは、十分に行きわたったインフラと、十分な情報開示がなければ成り立たない。ノーベル平和賞受賞者の放送はブラックアウト。"六四天安門"が検索できない情報サービス。改竄される新聞記事。これで情報産業を呼び込むなんて至難の業。
だから、やっぱり、人民網の、安倍ドクトリンに対する反論は破綻していると言わざるを得ない。今後、中国が、人民網が主張する条件を満たそうとすればするほど、「自由や民主主義」という普遍的価値観を受け入れざるを得なくなる。それが政治の分野に及んだとき、中華人民共和国の短い歴史は終わりを迎える。
この記事へのコメント
白なまず
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013012200914
以前、三宅島も注意と2011/04/08にコメントしましたが、、、予想より早く起き始めています。
はやめに注意しておきます。
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ひふみ神示 五十黙示録 補巻 紫金の巻 第三帖
伊豆幣帛(いづぬさ)を 都幣帛(とぬさ)に結び 岩戸ひらきてし。
ウヨウヨしてゐる霊かかりにまだ、だまされて御座る人民多いのう、何と申したら判るのであるか、奇跡を求めたり、われよしのおかげを求めたり、下級な動 物のイレモノとなってゐるから、囚われてゐるから、だまされるのぢゃ、霊媒の行ひをよく見ればすぐ判るでないか。早うめさめよ、因縁とは申しながら、かあ いそうなからくどう申して聞かせてゐるのであるぞ、マコトの道にかへれよ、マコトとは ○一二三四五六七八九十と申してあろう、そのうらは十九八七六五四三二一 ○で、合せて二十二であるぞ、二二が真理と知らしてあろう、二二が富士(不二、普字)と申してあろうが、まだ判らんか。
sdi
この構想の最大のポイントは中国の後背を脅かすことのできる唯一の国ロシアをどこまでこちら側に引き寄せられるか、そしてアメリカを引きずり込めるかにかかってます。正念場は春以降の対米交渉です。ただ、北京の党中央もそのあたりの見通しが読めずいるゆえ記事にあるとおり噛み付いてきているのではないでしょうか?。
日比野
>今回の記事のタイトルは少し気が早いのではないでしょうか?
いやはや、すみません。少しでも多くの人に読んで貰えないかと、ここ最近、タイトルを多少過激気味に、キャッチ―なものにわざとしているのですが、ちょっとやり過ぎましたかね。(苦笑)
しばらくは様子見で「刺激的」なタイトルを付ける積りではいます。しばらく御容赦くださいませ。m(__)m