安倍・橋下会談

 
1月11日、安倍総理首相は、日本維新の会代表代行の橋下大阪市長と、幹事長の松井大阪府知事と、大阪市内のホテルで約20分間にわたり会談した。

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会談の内容は、松井幹事長によると、維新の会側が「特区を含め、大阪産業の構造転換に協力を依頼した」のに対して、安倍総理は「まったく同じ」と賛意を示した。また、安倍総理も国会での補正予算への協力をとりつけたようで、両者とも十分に得るところがあったと見られている。

ただ、20分の会談では、話足りなかったテーマは多々あったようで、大阪都構想や夏の参院選も含めた政務についての話は時間切れで殆どできなかったようだ。

それでも、会談後、橋下代表代行は「僕は安倍首相のもとでできると思う。本当にいい意見交換になった」と満足気に語り、「野党で『反対!反対!』はやりません」と述べている。また、松井幹事長も「国会審議はきちっとやらせてもらう」としつつ、「従来の野党的発想で審議を延ばすとか、後ろ向きの議論とかはやらない」としている。

これら、"維新は従来の野党ではない"発言は、裏を返せば、自分達は与党とも連携することもある、ということを意味してる。

維新の幹部の一部には、「維新は本来、旧太陽の議員より安倍首相の方が政策的に近い。改革推進には石原代表より橋下、松井両氏からお願いした方がいい形になる」との声もあるから、維新の会の代表である石原慎太郎氏を差し置いて、橋下代表代行、松井幹事長に先に会うという変則的な行動をした裏にも、それなりの計算が働いているとみたほうがいいだろう。

今回の会談は、安倍総理側から呼びかけたもので、しかも、維新の幹部でさえ「テレビ報道で知った」と語るほど、突然決まったようなのだけれど、それを可能とするパイプというか繋がりがある、という事実は、他の野党にとっては脅威。なぜなら、将来、自民と維新が連携もしくは連立を組むかもしれないと疑心暗鬼させるから。

現に、維新の会の国会議員のうち、その中心になるであろうベテラン議員は旧たち日系の議員ばかり。たち日は自民と統一会派を組んでいたから、元より自民寄り。そこへきて、維新の会内のもう一方の雄である、橋下代表代行と松井幹事長が安倍総理と電光石火で会談した。橋下-松井ラインまで安倍総理に近づいたら、維新の会は、自民の手に落ちたも同然。

今の所、維新の会は、夏の参院選に向けて、みんなの党と選挙協力することを検討しているし、参院選の候補者を養成する政治塾の合同開催をも検討している。

そんな中、安倍総理との会談が行われたのだから、みんなの党としては気が気ではないだろう。みんなの党の幹部は「自公を過半数割れに追い込むことで一致している。ぶれることはない」としつつも、維新が自民と選挙協力ということになったら、もう駄目だと感じているようだ。



では、自民と維新との連携はどれくらいの可能性があるのか。

筆者は、安倍総理は、その為の仕込みというか、布石を既に打っているのではないかと見る。それは、安倍政権の産業競争力会議のメンバーの一人に竹中平蔵氏を起用したこと。

竹中氏は維新の会にとってのブレーン的存在。特に、橋下代表代行や松井幹事長に対する影響力は大きいようだ。

昨年11月30日の維新の会の記者会見で、石原慎太郎代表は、「あんまり竹中を信じるなって。『そりゃ止めろ』って言ったの。彼らにとって神様みたいになってる。コンサルタントの堺屋太一なんか首かしげてる。発言力を認められないのかなあ。これに対しては批判的ですよ」と、維新の会内の大阪の面々にとって、竹中氏は"神様"扱いされていると述べている。

事実、竹中氏が産業競争力会議のメンバーに起用されたとき、橋下代表代行は、「いやぁ、うれしいですね。僕は竹中平蔵さんの考え方はとにかく大賛成ですから。竹中先生はもう政党がどこであれ、今の日本の経済成長の案をつくる知恵袋として絶対に必要な方。自民党の中枢に入って、竹中先生の正論をどんどん出してもらって。当然反対の方の人もいるでしょうが、やっぱり頑張ってもらいたい。 」と絶賛している。

だけど、産業競争力会議は、今回新設された「日本経済再生本部」の傘下に設けられた、民間人による会議であって、特に権限があるというわけじゃない。まぁ、一部には、安倍総理は当初竹中氏を、民間議員として、経済財政諮問会議へ参加させたい意向があったものの、周囲の反対を受けて諦め、産業競争力会議のメンバーとしたという報道もあるのだけれど、何れにしても、竹中氏を政権に取り込むことで、維新と連携するというメッセージを送ると同時に"人質"として預かる形を取っているのではないか。

同じことは、石原慎太郎代表に対しても行なっている。それは勿論、息子の石原伸晃氏を環境相に起用したこと。閣僚に据えることで、慎太郎氏に「よろしく」とメッセージを送っている。

夏の参院選で、自民が維新と選挙協力するかどうかについては、1月11日、石破幹事長が、BS朝日の番組で、「日本維新との間に自民、公明両党間のような信頼関係はない。選挙協力は綿密に組み立てなければならない。一朝一夕にできるものではない」と述べているから、今のところは、急にどうこうということはないかもしれないけれど、石原伸晃氏と竹中平蔵氏を"人質"に取り込んだことは事実。これは、維新の会のツートップの急所を抑えたということ。

だから、安倍総理は、維新の会を牽制する形をとった上で、いつでも連携できる準備を整えたといえる。このような状況で、例えば、自民から選挙協力しましょうかなんて工作されたとしたら、維新の会は、それでも、みんなの党との協力関係を守って、自民の誘いを断ることができるのか。

先の衆院選では、維新の会は大阪の小選挙区を取れたとはいえ、選挙終盤で自民の大攻勢に慌てて、当初の全国区で戦う戦略を翻し、地元大阪の地盤固めをしてようやく議席を確保している。

筆者は「大阪冬の陣を仕立てあげた自民の選挙戦略」のエントリーで、衆院選で自民が維新を潰しにかかったのは、参院選または次の衆院選を睨み、維新の会を大阪に封じ込めることで、次の選挙で全国展開させないようする狙いがあるのではないかと述べたことがあるけれど、それがここにきて意味を持ってくる。

維新の会は、自民の組織力と選挙での強さを体感させた。だから、その自民から選挙協力しようと囁かれたら、ぐらっときてもおかしくない。

勿論、半年先のことだから、そのとき選挙の風はどう吹いているか分からないし、反自民に燃えるマスコミは、徹底して安倍自民を叩いているかもしれない。であれば尚の事、自民としても、維新の会と連携を取り付けておきたい。

少なくとも、今の段階で、安倍総理と、橋下代表代行、松井幹事長が会談することは、野党間に楔を打ち込んだことになる。その影響も小さなものではない。

安倍総理は、参院選の勝利に向けて着実に駒を進めている。




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この記事へのコメント

  • 白なまず

    ひふみ神示 第02巻 下つ巻 第十六帖
     知恵でも学問でも、今度は金積んでも何うにもならんことになるから、さうなりたら神をたよるより他に手はなくなるから、さうなりてから助けて呉れと申し ても間に合わんぞ、イシヤの仕組にかかりて、まだ目さめん臣民ばかり。日本精神と申して仏教の精神や基督教の精神ばかりぞ。今度は神があるか、ないかを、 ハッキリと神力みせてイシヤも改心さすのぞ。神の国のお土に悪を渡らすことならんのであるが、悪の神わたりて来てゐるから、いつか悪の鬼ども上がるも知れ んぞ。神の国ぞと口先ばかりで申してゐるが、心の内は幽界人(がいこくじん)沢山あるぞ。富士から流れ出た川には、それぞれ名前の附いてゐる石置いてある から縁ある人は一つづつ拾ひて来いよ、お山まで行けぬ人は、その川で拾ふて来い、みたま入れて守りの石と致してやるぞ。これまでに申しても疑ふ臣民ある が、うその事なら、こんなに、くどうは申さんぞ。因縁の身魂には神から石与へて守護神の名つけてやるぞ。江戸が元のすすき原になる日近づいたぞ。てん四様 を都に移さなならん時来たぞ。江戸には人住めん様な時が一度は来るのぞ。前のやうな世が来
    2015年08月10日 15:23
  • sdi

    橋下市長にいうことは一つだけ「国政なんかに色気見せずに、大阪市政に専念して任期完了時点で結果を出して見せろ!!」。はっきり言って、単なるアジテーターは不要です。
    自分が単なるアジテーターではなく、政治家としての資質と能力があることを結果で示すのが今の橋下市長がやらねばならないことではないですかね。今の状況で維新の会の国会運営に口を挟んでも、党内的にも党外的にもマイナスのほうが大きいでしょう。
    2015年08月10日 15:23
  • 洗足池

    米政府に嫌われた日本の政権は長続きしない。古くは田中角栄。最近では鳩山。尖閣をめぐって日中軍事対決に米国が巻き込まれても米国人は何の得もしない。TPPにも非協力、円安操作、対中強硬姿勢など米国の嫌う事ばかりやる安陪政権の凋落は早いだろう。橋下の経済政策は最初はまともに見えたが、太陽や安陪とすり寄って墓穴を掘ってしまったようだ。安陪のばら撒き政策は民主党よりひどい。日本は死に至る道を行進しはじめた。私が「安陪は国家主義の仮面を被った共産主義者と呼ぶ所以である。
    2015年08月10日 15:23
  • 小次郎

    初コメ失礼します。
    平蔵の囲い込みはオバマへのメッセージでもあります。「対米従属は当面続けますから心配無用」、ということでしょう。NYTの社説に見られるように、米国のリベラル派はアベを保護主義者、反米ナショナリストと警戒しています。TPP、慰安婦問題と絡めて攻撃してきます。参院選までは、内外の敵を少しでも懐柔すべきです。安倍総理もよくわかっているのでしょう。

    みんなの江田憲司は新自由主義者ですから、維新と合流するのが筋。逆に、平蔵に討伐された平沼先生らの郵政民営化反対組は維新を抜けて、自民に戻るべきです。日本の政治は政策よりも私情で動くので、予測が難しいですね。
    2015年08月10日 15:23

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