新春特別対談2013 後編
昨日につづいてK氏との対話の後編です。
日比野 民主党政権で、外交もガタガタになってしまいましたけれども、私が一番気になっているのは、尖閣問題で見られるように、対中国外交なんです。
K氏 前よりも、もっと難しくなってしまったね。
日比野 はい。去年夏の反日デモの影響もあり、対中好感度は最悪の状況です。尖閣での局地戦含めて、中国との戦争は有ると思われますか。
K氏 可能性はゼロとは言わないけれど、基本、勝てない喧嘩はしない国だからね。尖閣にしても、中国は自分の領土だといってるけども、本当に勝てると思っているのなら、何も言わないよ。何時でも獲れるのなら、いちいち獲るぞと教えてあげる必要はないからね。口でいうだけならタダだし、それで相手の妥協が引き出せるのなら儲けものだよ。
日比野 すると、尖閣への領海侵犯とかの挑発も、日本からの妥協を引き出すためのものということですか。
K氏 そこまで単純に言い切る積りはないんだけども、中国は長期で戦略をつくってくるからね。今の目標、十年先の目標と、段階で計画をしている筈だよ。今は尖閣を紛争地域だと日本に認めさせるか、共同管理するあたりを狙っているだろうね。確か尖閣周辺を日本と中国で交互に巡回すればいいとか言ってるんだろう。現に、今も中国船が尖閣の領海を何度もうろついているけども、あれもそのための既成事実を作っているんだと思うよ。
日比野 日本がそれを認めないと、戦争に発展すると。
K氏 やるとすれば、いきなりドンパチするんじゃなくて、経済戦争が先だろうね。戦わずに屈服させられれば一番楽だからね。尖閣問題が起こってから日本の対中投資が減っているし、中国から日本への観光客も減っている。もう半分くらいは、経済戦争みたいなものが起こっているんだ。戦争になったら、相手国に投資した資産は没収されるのは普通のことだけども、最悪の場合は、対中投資した設備や資産が没収されるところまでは想定しておかなくちゃいけない。だけど、資産だけじゃなくて、駐在している邦人も一緒に人質に取られる可能性もある。こちらのほうがずっと厄介だよ。確か、菅が首相やってたときに、尖閣で海保の船に衝突したことがあったけれど、あのときフジタの社員が拘束されたことがあったよね。同じことが起こらない保証はないな。
日比野 すると、中国に進出している日本企業は、撤退するべきということですか。
K氏 でもね、撤退しろと口でいうのは簡単なんだけれど、現実には撤退できない人だっているんだよ。日本にだって、中国人と結婚している人だっているし、向こうに生活基盤をおいている人もいる。それをいきなり、何もかも投げ出せと言ったってできない人もいるんだ、現実問題としてね。万が一、日本と中国が戦争して、国交断絶ということになったら、拉致被害家族のように、離れ離れになったまま、二度と会えない家族もでてくるんだよ。政治家はそうしたことも頭の片隅に入れておかなくちゃいけない。だから簡単じゃないんだ。
日比野 現実には戦争はできないのですね。
K氏 ただ、中国は中国で今、バブルが弾けてきている。そんな中で、周辺国との関係を拗らせるのは、たとえ政治的にはプラスでも、経済的にはマイナスになる。だから、これから中国は、政治と経済のどちらを優先するのかという綱引きが始まる。習近平を見ていると、どうやら政治優先で、経済は後回しで良いという方針でいるようだけども、それはそれで、景気低迷という形で、経済から報復を受けることになるよ。もし、中国がその報復に負ければ、中国の政治体制は揺らぐ。自由主義体制へのシフト圧力になるし、中国の分裂要因にもなるだろうね。逆に、経済の報復を政治がねじ伏せてしまえば、これは拡張主義になる。経済の落ち込みを他国の資源や富を奪って穴埋めすればいいだけだからね。
日比野 内部崩壊か外部への侵略かということですか。
K氏 どちらにしても最初の原因は経済なんだよ。中国はGDPの総額では日本を抜いたかもしれないけれど、一人当たりでは日本の十分の一くらいしかない。それでいて、富裕層との経済格差は物凄くある。平均年収何十万くらいなのに、富裕層は何百億もの資産を持っている。政治体制では平等を謳っているくせに、その共産党幹部が大金持ちだったりするんだから、政治と経済に矛盾があるんだ。去年も温家宝の一族の資産が2000億円あるとか、習近平一族の資産が400億円あるとかバラされたことがあったけども、中国経済が落ち込めば落ち込むほど、矛盾の部分は民衆の不満に変わる。その不満が内に向かうか、外に逸らすかという違いなんだね。
日比野 そんなので侵略されたら堪りませんよ。内部で勝手に自滅して欲しいですね。
K氏 さっきも言ったように、習近平は経済よりも政治を優先する気があるから、内部の矛盾は外に向かって逸らそうとするだろう。尖閣なり台湾なり、どこかを攻め落として占領することができれば、国内の不満を逸らすには一番いいだろうけども、そうそう簡単にできるものじゃない。だから、次善の策として、既成事実を積み重ねて、外交的な勝利をまず目指してくるだろうね。尖閣にしても、領土問題があると認めさせて、共同管理させるとこまで持って行ければ、外交的勝利になるからね。
日比野 ならば、安倍さんの国防重視路線は必須ですね。
K氏 ただ、その安倍路線がまた中国をもっと強硬にさせたりするんだよ。近頃、日本は中国の脅威を叫んだりしてるけども、中国は中国で、日本が軍国主義の道を歩き始めたと宣伝してる。そして、それを口実に更に軍拡を進める。軍拡も国威発揚のひとつだからね。だから、安倍は中国国内の不満を逸らせるための餌といってはアレだけど、利用されているところもあるんだよ。
日比野 年末のテレビで、池上彰さんが2013年は2012年よりは落ち着くのではないかとか言ってましたけれども、Kさんの話を聞くと、とてもそんな感じではなさそうですね。
K氏 そうだね。安倍政権になったからといって、全部上手くいくとは限らない。のらりくらりと時間稼ぎが出来る野田とは違って、安倍ははっきりものをいう方だから、その分の反作用はある。経済でもどこまで円安路線でいけるかわからないし、国債増発していれば、どこかの時点で財政規律が問題視されてくる。だから、今年は弾を撃ち合う戦争こそないにしても、通貨戦争、経済戦争、外交戦争といった形の戦争が起こる可能性はとても高い。その中で、日本は、失敗のできない一発勝負の内閣を組んだ。だから"賭け"なんだよ。
日比野 厳しいですね。ともあれ、国民は安倍自民を選んだのですから、それに賭けるしかなさそうです。とりあえずは参院選までの半年が一つの節目になりそうだと感じました。Kさんありがとうございました。今年もよろしくお願いします。
K氏 はい。ありがとう。
この記事へのコメント
almanos
ちび・むぎ・みみ・はな
中共政権であっても, 即衝突はやらない.
ならば, 尖閣に自衛隊配備できればそこまで.
対して, 中共政府の方針は, 自分達の準備をしつつ
日本国内の勢力に政府を牽制させることになる.
しかし, 国内が(思想戦の)戦場となるとは,
売国的と分かるのに, メディアに釘を刺せないとは,
愛国心と言うのがはばかられるとは,
何ともおかしな話しだ.
洗足池
日本で一番ガソリン代が高いのは長崎県。何故なら島の数が日本一多く輸送費が掛るから。離島のガソリン代だけでなく、長崎市内のガソリン代が日本一で市民はぼやいている。尖閣の防衛費にいくら税金がかかるのだ。頭を冷やせ。尖閣などノシ付けて中国に進呈しろ。
八目山人
日本の政治家や経済人や中国に住んでいる人や中国人と結婚している人で、架け橋になろうとしている人は中国に対して「反日をやめなさい。尖閣で言いがかりをつけるのをやめなさい。そうしないとあなたは損をしますよ!」と言える人はいないのですか?
sdi
その意図はあったのかもしれませんが野田政権の打つ手が時間稼ぎ、正確には中国側の攻勢の軟化に成功しているかというと、私の見解では「NO!」ですね。「国有化宣言して石原都知事の画策を封じ込める」手も北京の態度を軟化させるどころか逆になっています。まあ、評価はひとそれぞれですけどね。
私は逆に、野田政権の対米外交の成果を方が評価高いです。それに比べれば対中外交は低い点数です。
クマのプータロー
危機管理上の参考と言うことで、もう少し推移を見守りたいところです。
あ
それ本気??笑
他人を経済音痴などと罵る前に先を見る力を付けてくださいね。
とりあえず排他的経済水域って言葉とその意味を知ってますか??
島だけが領土ではないですよ笑
後、他国に領土を譲る・明け渡すという事が外交的にどのような意味を持つのかを考える必要がありますよ。もう少し、いや大分しっかりと勉強してからこういう公共の場で発言しましょうね笑
貴方の馬鹿げた発言はAKBがどうとか寒流がどうとかの発言と領土問題を同じ重さで喋ってるみたいで日本国民として苛立ちしか感じないですよ。