新春特別対談2013 前編

 
今日、明日と新春特別企画をお送りします。

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2011年1月2日から4日に掛けて、筆者の知人(K氏)との世相について対話の一部をエントリーしたことがありましたけれども、新年、またK氏と対話する機会がありましたので、その一部を今日、明日に分けてご紹介いたします。


日比野 明けましておめでとうございます。

K氏 明けましておめでとう。

日比野 昨年末に政権交代して自公政権に戻りましたけど、如何ですか。

K氏 やっぱり、失望感だろうね。政治改革してくれるかと期待して任せてみたはいいけれど、予想以上に何もしなかったと思われたんだね。

日比野 自公で325議席と大勝しました。

K氏 選挙制度的な問題もあるんだろうけども、前回民主党にいれた人の動きが鈍かった。聞くところによると、労組の動きも悪かったようだね。

日比野 安倍さんの返り咲きは戦後では吉田茂以来のことですけど、Kさんからみて、安倍さんはどうですか

K氏 民主党政権の3年で、日本が多少保守にシフトしたのは間違いないよ。それが安倍を呼んだ面があることはそうなんだろうけども、ちょっと期待を一身に集めすぎているところがあるな。だから、それに応えようとすればするほど、逆に脆くなるところがあると思うよ。

日比野 安倍さんは「危機突破内閣」といって、分厚い組閣をしたように思いますけど。

K氏 その重厚な内閣がだね、裏目にでることだってあるんだ。実力者ばかり固めた内閣は、一見よさそうにみえるんだけども、あんまり集めすぎると、それ以外が弱くなってしまう。安倍内閣がいつまで続くか分からんけども、内閣以外にも人材を育てておかないと、安倍の次が困ることになるよ。民主党だって、人材がいなくて叩かれたんだろう。自公だって同じにならないとは限らないんだよ。人材はそう簡単に育つものではないから、1年や2年ではどうにもならない。だから、今度の安倍内閣は結構"賭け"なんだよ。これで失敗したら次はない。政治主導はできなくなって、官僚主導型の政治に戻ってしまうだろうね。

日比野 内閣に実力者を集めたが故の弊害ですか。

K氏 うん。まぁ、唯一、石破が党に残っているのがアレだけども、石原も林も谷垣も麻生も閣内にいれちゃったもんだから、次に出せる人材がいなくなってしまってる。安倍政権が倒れたら、閣僚も一回休みになるのが普通だからね。だから、安倍としては長期政権でないといけない状況なんだよ。一回限りの勝負で、ある程度の結果をださないといけない。これは結構キツイよ。

日比野 アベノミクス政策が上手くいけば、そうなりませんか。

K氏 アベノミクスといってもね。まだ何もやってはいないんだよ。麻生も言ってたと思うけども、金融緩和しただけじゃ、銀行に金が溜まるばかりで景気は回復しない。だから政府が公共事業をやって実需を作るといってるんだけども、トンネル修復や橋の修理なんかの公共事業だけではね、これまで出来ていた流通を維持するだけのことにしかならない。衰退を食い止めることはできても、発展にまで持っていくには物足りないよ。直近では景気浮揚効果があったとしても、長期間となるとどんどん苦しくなってくる。やっぱり成長戦略がないといけないよ。

日比野 安倍さんは、今年の6月に成長戦略を纏めるといってます。年頭所感では、民間投資を喚起する成長戦略とも言ってますね。

K氏 ただ、その時にはね、成長が見込める分野と民間が投資できる分野とのマッチングができるかどうかも考えないといけないんだよ。いくら成長できる分野があったとしても、その分野の産業がなかったら、民間投資なんてないんだからね。例えば、軍事産業なんかは成長産業だなんて言われることもあるけども、日本には軍事産業と呼べるものは殆どないんだ。産業規模でいえば、自動車の5%くらいだったかな。それくらいしかないんだな。それに本気で軍事産業を興そうと思ったら、軍と企業ががっちりとタッグを組んで、基本設計から一緒に検討するくらいでないとマトモなのは造れない。確か海自の「ひゅうが」は、IHIが受注したかと思うけども、あれだって赤字だったと聞いているよ。護衛艦には鋼板の厚さから何から民間船とは桁違いの精度の技術が要求されるから、そこらの規格品と同じというわけにはいかないし、それだけコストも余計にかかる。そんな高度なものは造り続けないと技術が保てないんだけども、護衛艦なんか毎年注文があるわけじゃないからね。それでも、護衛艦の建造技術は継承しなくちゃいけないから、技術者は簡単に配置転換できないし、手の空いたときに民間船を作ったって、技術の継承には役立たない。結構難しいんだ。それこそ、軍産複合体を作るくらいでないといけないんだよ。

日比野 なるほど。では環境分野とかはどうですか。

K氏 これは、まだマッチングが取りやすい分野だと思うけども、採算が取れるようなところにいくまでは、まだちょっと時間がかかると思うね。一番近いのは燃料電池の分野だと思うけども、確かこの間、トヨタが燃料電池車を市販すると言ってたよね。あれだって2015年の話だから、普及するのはもっと先だわな。だけど、もっと大事なのは、政府が一度決めた成長戦略は簡単に反故にしないことだよ。民主党政権はコンクリートから人へと言って、ダム建設とか凍結してたけども、あんな風に政権交代の度に、国が投資する分野をころころ代えられてしまったら、民間は怖くて思い切った投資が出来なくなる。今は研究開発に何年もかかるから、その間政治が安定していないと困るんだな。政権交代が悪いとはいわないけども、何十年単位で策定するような大きな成長戦略は極端にブレることのないようにお願いしたいとこだな。

明日に続きます。




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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    K氏は「官僚政治に逆戻り」と警告しているが,
    官僚政治とは何か. 政治思想の研究家でもある
    中野剛史(「官僚の反逆」)によれば, 規制緩和の
    行き着いた先が官僚社会であるらしい.
    また, 過去の自民党政治は現在より遥かに政治主導
    であったとの指摘もある. 我々は官僚が表に出ると
    官僚主義と言うが, 官僚は政治家が支えるから
    表に出られると言う事実を忘れてはならない.
    一番恐い官僚主義とは?誰も指示をしないが,
    我々にできることが全て「決まっている」社会だ.

    貴方達の回りにもいないか?
    ルールを決めておけば労力を省けると言う人達が?
    彼らの言う通りにするとどこへ行くか?

    官僚から「政治を取り戻した」積もりが官僚社会となり,
    小さな政府を目指した先に大きな政府が必要となる.
    中野は世の中の根底にある事実を勉強せよと迫る.

    新自由主義一辺倒の筈の経済産業省で「成長なき時代の
    『国家』を構想する」(中野剛史篇)が作られていた.
    黒は本当に黒なのか?白は本当に白いのか?
    貴方の「常識」は常識なのか?

    自分達の生活がかからないなら面白いのだが.
    2015年08月10日 15:23

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