補正予算成立と野党の二極分化

 
2月26日、緊急経済対策を含む総額13兆1054億円の2012年度補正予算案が参院本会議で、与党と一部野党の賛成多数で可決、成立した。

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採決では、野党各党の賛否が割れ、日本維新の会、国民新党、新党改革が与党に加え賛成し、みどりの風も1人を除き賛成。民主、みんな、生活、社民の4党及び共産党は反対に回り、賛成117票、反対116票の僅か一票差で成立。

安倍総理は「薄氷を踏む思いの採決だったが、決められない政治から決められる政治への一歩だ」と述べた。

確かに、一票差でも可決と否決では大違い。予算案は衆院での議決が優先されるから、参院で否決されても成立させることが出来るけれど、そうしてしまうと今度は逆に、参院での野党の存在感が増すことになり、だんだん法案を通すことが難しくなってくる。

それ以前に、2009年以前のねじれ国会では、野党民主党が度重なる審議拒否を繰り返し、衆院再議決をしないと絶対法案が通らない嫌がらせを延々と続けていた。それから比べると、衆院でも参院でもきちんと議論して、採決するという"当たり前"のプロセスを踏んで、そして法案を成立させたことは王道のスタイルといえる。

因みに、民主党は、与党時代には、自身で法案を提出せず、与党の審議拒否という無茶苦茶をやった前科が度々ある。たまに法案を出したかと思えば、期末直前に出して審議もせずに強行採決。郵政改革修正法案の審議時間は、たったの6時間。およそ議論しようという姿勢が見られない。よくもまぁ、こんなのが政権を持っていたものだと呆れかえる。

とはいえ、今回の補正予算可決は本当にギリギリだったのは事実。参院定員242のうち、議長と欠員6議席を引くと、過半数は118議席になるのだけれど、自民(85)、公明(19)そして維新(6)を足しても110議席。それに対して、2月21日までは、民主(87)、みんな(11+1)、生活(8)、社民(4)、共産(6)を合わせると117議席あった。

だから、可決は残りの国民新党(2)や新党改革(2)、みどりの風(5)および会派に属さない議員の動向が可決を左右し、維新を除く野党が117議席と過半数に1足りないだけであることから、当初、補正予算については、僅差で否決されるのではと見られていた。

ところが、その状況を覆したのが、2月22日に民主党を離党した、植松恵美子参院議員と川崎稔参院議員の二人。両議院は、民主党の方針に反して、2012年度補正予算案に賛成したいとして離党した。この2名の離党によって、民主、みんな、生活、社民、共産の5党で115議席となり、自民はこの両議院の2票と国民新党と新党改革の票を積み上げ、みどりの風の一部の協力を得て成立に漕ぎ着けた形。だから、民主から植松、川崎両参院議員が離党せず反対に回っていれば、本当に否決されていた可能性がある。

その意味では、今回の補正予算を参院で可決できた意味は大きい。安倍総理はかねてから、夏の参院選までは、法律、案件ごとにパーシャル連合をやっていくと述べていたけれど、それを実現した。実績を作った。



それにしても、今回の補正予算で賛成した野党と反対した野党を見ると、単に野党と一括りにするのではなくて、「与党に近い野党」と「かつての野党のまんまの野党」、そして、「独自路線をアピールしたい、みんなの党」という3極に分かれているように筆者には見える。

だけど、最早、何でも反対しておけばいいという、"昔の野党"の態度では、もう国民の指示を繋ぎとめることはできない。なぜなら、反対のための反対は、与党として政権運営能力があることを保証するものではないと国民が知ってしまったから。民主党がそれを証明した。

その民主党が唯一存在感を示せる可能性があったはずの参院でさえ、今回の補正予算成立で崩れ去ろうとしている。

野党に転落してからの民主の凋落は著しい。参院選までもつかどうか。

民主党の大臣経験者の秘書の中には「わが党はもうオシマイ」だとして、「おそらく民主党は労組系、松下政経塾系、それ以外に3分裂します。労組系は、存続の危機同士で社民党と一緒になるかもしれない。政経塾系の前原・野田グループは、右寄りの政策を前面に出して自民や維新と連携しようと考えている。その他の議員は維新やみんなの党に移ろうと画策したり、市長選や知事選などへの転身を考えるんじゃないですか」と民主党の分裂まで予言するものもいるそうだ。

それほどの危機にあるのに、野田氏を解散時期を間違えたと批判し、菅氏を2010年の参院選で敗因をつくった戦犯だと息巻く民主党議員がいる。

また、先日の日米首脳会談でのTPPに聖域があるという件についても、民主党の経済連携プロジェクトチームの総会で、「その程度は民主党政権でも既に確認していた」 、「何が新しいのか。当たり前ではないか」と吠えている。確認していたのなら、なぜその時公表しなかったのか。TPP参加は待ったなしというばかりで、そんな話なんて一言もなかった。

更には「アベノミクスを生む根源を理解できない民主党」のエントリーでも触れたように、アベノミクスによる金融緩和は民主党もやっていた、と滔々と主張してみたり、自分達が何故敗北したのかを真摯に振り返ることなく、ただ、自民のやることは、民主もやっていたと高飛車に構えてる。

一方、衆院で圧倒的多数を握る自公は、衆院で大勝しても低姿勢で国会に臨んでいる。自民は、与党という「名」を捨て、法案成立という「実」を取り、民主は前与党という「名」に拘って、党再生の為の「実」を投げ捨てているようにしか見えない。

だけど、二度の政権交代を得て、国民の野党を見る目は確実に変わっている。国難の今だからこそ、与野党関係なく、国の為、国民の為という姿勢を見るようになった。

だから、おそらくは、今後、国民の目から見た野党は、「責任野党」と「反対野党」との2つに色分けされていくのではないかと思う。そして、反対の為の野党は、やがてその存在理由をゆっくりと失っていくだろう。




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