昨日のエントリーのつづきです。
4.日米首脳会談に対するアメリカメディアの注目度
昨日のエントリーで、先の日米首脳会談は、日本側からみて成功だったと述べたけれど、今日は、逆にアメリカ側からみたら成功だったのかについて、考えてみたい。
日本のメディアはやれTPP参加決定だとか、世論誘導紛いの騒ぎ方をしているけれど、アメリカ側のメディアの関心は、正直言って、それほど高かったとはいえない。
日米首脳会談については、僅かに、ワシントンポストが「Obama, Japanese prime minister pledge to seek strong action against North Korea」と題した記事を掲載しているけれど、その主な内容を箇条書きで記すと次のとおり。
・オバマ大統領と日本の新しい首相は、北朝鮮の最近の核挑発が許容できないとして、北朝鮮に対するより厳しい国連安保理事会制裁を要求することに同意した。とまぁ、北朝鮮に対する対応で一致したこと。日中対立について、安倍総理は事態をエスカレーションさせる積りはないと述べたこと。TPPでは成果はなかったものの話し合いは続けるということ。といったあたりをさらりと述べている。
・会議の背景には、アジアの他の地域の緊張、特に日本人が管理する尖閣諸島での日中の論争があった。
・東京が9月に島のいくつかを国有化したあと、双方の論争は燃え上がり、対立懸念が高まった。
・東京は先月、中国が火器管制レーダーでロックしたと中国を非難し、北京は、中国を汚すために報告書を作り上げたと東京を非難した。
・アメリカには、日中が対立した場合、日本を助ける条約義務がある。安倍は、日本が穏やかな方法で中国に対処し続けると誓った。
・金曜日の首脳会議は米国にとって、TPP交渉への東京(日本)の参加意志を探るのに良い機会となった。 安倍は、自民党の大半と、小さいが政治力の強い農業団体から反対を受けているため、少なくとも7月の重要な参議院選挙の後までは、立場を明確にしないと分かった。
・会談後の共同声明において、2人はTPP参加に関する日本の"可能性のある意志"について話し合いを続けることで合意した。しかし、双方に懸念があることも確認した。特に自動車、保険の部門において。
・新しく選ばれた日本のリーダーはナショナリストで、ワシントンとのより強い関係の熱心な主張者だ。彼は、東京のためにより多くの重要な課題を背負っている。それは、彼らの間で資源の豊富な、人の住んでいない島のコントロールについて、ここ数か月、中国と衝突していた。
・12月の選挙の勝利が、安倍を政権に復帰させた時から、彼は首脳会談を望んでいた。彼は2007年に健康上の理由で辞任している。
・日本へのアメリカの協力は、ワシントンのアジア政策の基礎の一つであるが、リーダー同士の間で個人の関係を樹立することは難しかった。
・日本経済を刺激する、安倍の市場を喜ばせる動き(アベノミクスと呼ばれている)は、回復の可能性を刺激しており、彼がホワイトハウスでの昼食の後の金曜日に、ワシントン・シンクタンクですることになっていた施政方針演説においてフィーチャーされると思われていた。
会談後の記者会見でも、両首脳が会談内容について説明した後のアメリカメディアのオバマ大統領に対する質問でも、日本とは関係ないアメリカ政府支出の強制削減について聞くといった有様で、オバマ大統領は、質問に答えた後「これは米国内向けの質問だから、次の質問は安倍首相に」と促される始末。それでも、アメリカの記者からは、会談に関する質問が出なかったというから、その関心の低さが分かろうというもの。
また、オバマ大統領自身も、日本の記者からの「尖閣問題についての考えを説明してください」という問いかけには答えず、会談後の共同声明も、TPPだけについてのもので、会談全体の意義については触れていない。
こうしたことから、中国のサーチナは、日米首脳会談について、「米政府は安倍首相の活動に冷ややかで、首脳会談と言えどもまるで「日帰り旅行」のようだった。また、公的活動も22日正午の会談と昼食だけで、記者会見も小規模なものだった。さらに重要な点は、会見でオバマ大統領は「日米同盟は重要」と簡単に言及しただけで、その後に話題を経済に切り替え、釣魚島と日米安全保障条約には全く触れなかったことである。また、安倍首相の訪米を取り上げる米国メディアは非常に少なく、CNNなどの主流メディアの公式サイトも特集を組まなかった。」と指摘している。
これは、見方によれば、アメリカが中国を刺激したくないから、わざと尖閣について触れなかったとみることもできるし、「尖閣有事と長期戦」のエントリーで触れたように、アメリカが、尖閣有事に巻き込まれることを懸念して、それを嫌がっていると見ることもできる。
5.アメリカは尖閣有事に巻き込まれることを嫌がっているか
この尖閣有事に巻き込まれることをアメリカが本当に嫌がっているかどうかについては、確たることは分からないけれど、所々にそれを匂わせるフシがあることはある。それは安倍総理の発言からも垣間見える。
安倍総理は日米首脳会談で、日中関係をエスカレートさせる積りはなく、対話をしていくとオバマ大統領に説明している。また安倍総理は、会談後にワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)での演説しているのだけれど、そこで尖閣について、次のように述べている。
尖閣諸島が日本の主権下にある領土だということは、歴史的にも、法的にも明らかです。煎じ詰めたところ、1895年から1971年までの間、日本の主権に対する挑戦など、誰からも出てきておりません。いまも、未来も、なんであれ挑戦を容認することなどできません。この点、わが国の決意に関し、どの国も判断ミスをすべきではありません。日米同盟の堅牢ぶりについて、誰も疑いを抱くべきではないということであります。と、ここでも日中対立をエスカレートさせる積りはないと、オバマ大統領に伝えたのと同じ事を述べている。だけど、安倍総理がここまで、強調するということは、逆にアメリカが巻き込まれたくないという懸念を持っているとも解釈できるわけで、その辺りが本当の所はどうなのか気になるところではある。
同時にわたくしは、エスカレートさせようとは露ほども思っておりません。それどころか、わたくしの政府は、日本と中国の人的交流のため、いままで以上の資金を投じようとしています。
わたくしの見るところ、日中関係は日本がもつ最も重要な間柄のひとつです。かつてわたしが命名した「戦略的互恵関係」の追求において、わたくしは、手を休めたことのない者であります。わたくしの側のドアは、中国指導者のため、常に開いているのです。
更に、安倍総理は、CSISでの演説後の質疑で、尖閣について「私たちは自身の力によって、しっかりと日本固有の領土を守っていく。…米国に尖閣についてこれをやってくれ、あれをやってくれと言うつもりはない。」とも述べている。これは結構重要な発言で、捉え方によっては、尖閣について、アメリカの介入は必要ないという宣言にも聞こえなくもない。
もしも、尖閣については、アメリカは見守るだけで、介入しないとなれば、中国はチャンスだとばかり、本当に尖閣侵攻に出る可能性が出てくるから、この安倍総理のアメリカに頼らない発言は、かなり重要な意味を持つと思う。
ただ、その一方で、岸田外相とケリー国務長官との外相会談では、尖閣について、日米安保条約の適用範囲にあるとの揺るぎない立場をあらためて確認する、など日中関係で踏み込んだ話をしているフシもある。
だから、アメリカが尖閣有事に巻き込まれたくないという本音を持っているというのが本筋だとして、或いは、アメリカは、表向きは尖閣に介入しない"フリ"をして、中国の暴挙を誘い出してから、反撃にでるという"罠"を張っている、いわゆる「驕兵の計」を仕掛けているというのは少々穿ちすぎか。
何れにしても、安倍総理が尖閣でアメリカに頼らない発言をした以上、日本独自の防衛力強化は必須であり、自衛隊法改正は勿論のこと、憲法改正、核武装まで視野にいれた動きをしていくことを考えていく必要があるだろう。
この記事へのコメント
通りすがり
するわけないでしょ!
日本から金を巻き上げたらおしまい!
それにしてもよっぽど脅しがきつかったのか
あっさりと「TPP参加表明」ですねぇ
選挙時の公約「反TPP、ぶれません」
ってのを掲げたポスターが笑いものの種のようですよ
自民党議員さんは選挙民に対して今後どうするんでしょうかね?
いやいや
>あっさりと「TPP参加表明」ですねぇ
そんなこと誰も言ってませんよ。ミスリードはやめましょ。