2月22日、日米首脳会談が行われ、安倍総理は、ホワイトハウスでオバマ大統領と会談した。安倍総理は日米同盟を日本外交の基軸として重視していく考えを伝達し、両首脳は日米同盟の一層の強化で一致した。
1.日米首脳会談の成果
安倍総理によれば、緊密な日米同盟が完全に復活をしたと自信を持って宣言したいと手応えを掴んだようだ。
会談の内容については、会談後の安倍総理の記者会見である程度のことが明らかにされているけれど、それを見る限り、かなり広範囲に渡っての話し合いが行われたようだ。安倍総理の記者会見の内容は次のとおり。
○安倍総理の発言とまぁ、こういう内容だったのだけれど、エネルギー分野について、安倍総理は、2030年代の原発稼働ゼロを目指す民主党政権時代の方針に関して「ゼロベースで見直す」と伝え、米国産のシェールガスの対日輸出についても要請したようだ。
・日米同盟について
オバマ大統領と同盟強化の方向性について率直に議論し、意見の一致をみた。この3年間で著しく損なわれた日米の絆と信頼を取り戻し、緊密な日米同盟が完全に復活をしたと自信を持って宣言したい。
・安全保障について
集団的自衛権、防衛費増額、防衛大綱見直しなどわが国の取り組みを話した。米軍再編については普天間飛行場の移設と嘉手納以南の土地の返還計画を早期に進めることで一致した。
・北朝鮮について
核実験を強行した北朝鮮に対し、日米韓の3カ国で連携し、国連安全保障理事会で追加制裁決議の採択を目指すことで一致。実効性が高いとされる金融制裁についても協議した。北朝鮮のミサイル開発を受け、米軍の早期警戒レーダー(Xバンドレーダー)の日本追加配備を含め、ミサイル防衛(MD)での協力を進めることでも合意した。拉致問題の解決に向け強い意志を伝え、改めて大統領の理解と支持を得た。邦人が犠牲となったアルジェリアのテロ事件もあり、テロ対策について近く日米テロ協議を行うことで合意した。
・経済再生について
「金融政策」「財政政策」「成長戦略」という日本経済再生のための「3本の矢」を説明し、歓迎してもらった。オバマ大統領から『強いリーダーシップを期待している』という話があり、日本経済の復活が、日米両国、世界にとって有意義であるという認識で一致した
・TPPについて
両国ともにセンシティビティー(関税撤廃の例外にしたい品目)が存在し、最終的な結果は交渉の中で決まる。TPP交渉参加においては、一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められるものではないことを明示的に確認した。私は、選挙を通じて、聖域なき関税撤廃を前提とするTPP交渉には参加しないと国民に約束し、今回の会談でTPPは聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった。また、これ以外にも私達が示してきた5つの判断基準についても言及した。
・その他
環境エネルギー分野、宇宙、サイバー分野での協力についても議論した。
○質疑
ー今後、TPP交渉参加の国内手続きをどう進めるか。
日米首脳会談の結果を25日の自民党役員会で説明し、公明党にも説明する。交渉参加するかどうかは政府の専権事項として、政府への一任をお願いしたい。時期については、なるべく早い段階で決断したい。
#NAME?
日米首脳会談の結果を25日の自民党役員会で説明し、公明党にも説明する。交渉参加するかどうかは政府の専権事項として、政府への一任をお願いしたい。時期については、なるべく早い段階で決断したい。
#NAME?
戦略的互恵関係の原則に中国は立ち戻ってもらいたい。対話のドアは常に開かれている。習近平総書記は年齢的に私と変わらず、同じ国の指導者として13億の民を統治していくことが大変なことは十分認識している。同世代の指導者として、いろんなことを話し合う機会があればいい。
#NAME?
月曜日(25日)から進める。その週には候補者本人、与党の自民、公明両党の了解を得て、各野党に(協力を)働き掛けたい。
それにしても、安倍総理が、TPPについて、聖域がないわけではないことを確認し、その言質を取ったことには驚いた。民主党政権時でのアメリカの態度からみて、もう交渉の余地などないだろうと思っていたのだけれど、アメリカにも脛に傷がない訳ではなく、全ては交渉で決まるというところにまで持ってきたのはとても大きい。民主党政権とは、明らかに交渉力のレベルが違う。
しかも、もっと大事なことは、先の衆院選で自民党がTPP参加可否の判断をするための6条件について、安倍総理がオバマ大統領にきちんと伝えていること。その6条件とは次のとおり。
(1)政府が「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対する。とまぁ、これが全て認められるのであれば、最早TPPとはいえないのではないかというくらいの条件。特にTPP反対派が懸念する国民皆保険制度やISD条項についてきちんと触れている。これをオバマ大統領に伝えた意味は大きい。日本としてのいうべきことは言ったということ。
(2)自由貿易の理念に反する自動車などの工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうような投資家・国家訴訟(ISD)条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービスなどは、わが国の特性を踏まえる。
これについては、安倍総理の訪米前の19日に、自民党の議員連盟「環太平洋連携協定(TPP)参加の即時撤回を求める会」が、この6条件を堅持するよう求める文書を決議し、安倍総理に申し入れをしていたそうだから、その意味でも党内意見をきちんと汲み上げた上で会談に臨んだことが分かる。
2.内政は外交に影響する
マスコミは、相も変わらず「安倍総理がTPP参加を決めた」などと、飛ばし記事を書いて、世論誘導したそうにしているけれど、現時点では、単に、「TPPにも聖域はあり、どれが聖域になるかは交渉次第」ということしか確認されていない。だから、後は、今回の日米首脳会談を受けて、党内および国内意見をどう集約していくかが重要で、TPP参加はそれ次第ということ。
だから、現状は、やっとTPP云々についてどうするか判断するスタートラインに立ったという段階であり、民主党政権のツケを払ったというだけとみるべきだろう。
まぁ、それでも、自民のTPP参加6条件のうちの一つである、「聖域なき関税撤廃」であれば参加しない、というのがクリアされたのは大きく、これが、安倍政権の実力が齎したものなのであれば、その交渉力は評価に値するし、残りの5条件についても、何らかの進展が期待される。
それ以外にも、安倍総理は、その場でのTPP参加表明をしないくせに、ちゃっかりとシェールガスの対日輸出についても要請してみたり、アメリカに対して相当強気というか、言うべきことを率直に話し、実にしたたかな外交をしたのではないかという印象を受けている。
アーミテージ元国務副長官は、日米首脳会談についてのFNNの取材に対して、「彼(安倍首相)は分別のある、非常に現実主義な人だと思います。…オバマ大統領は、非常にビジネスライクな人です。また安倍首相は、世間話があまり好きではありません。ですから、両者はお互いを尊重し合い、一緒に仕事ができると思います。…現在、TPPに参加している11カ国は、日本を警戒しているように見えます。それは、日本が交渉において、手ごわいからです。それでもTPPについては、一般的なこと以上の話し合いをするのは、若干、時期尚早だと思います」と述べている。
他国も、日本の"まともな政権"の交渉力には一目おいている。その意味では、今回の首脳会談で、オバマ大統領から、TPPにも聖域があるという言質を取ったことについて、やはり「手ごわい日本」が戻ってきたと認識したのではないか。
更に付け加えるのなら、今回の日米首脳会談においては、安倍政権の国内環境もいい影響を与えていると思われる。安倍政権になってから、アベノミクス効果で経済に明るさが見え始めていることと、国内の高い支持率が、安倍総理の交渉力を後押ししている部分も否定できない。
内政は外交に影響する。
国内で絶大な支持を集めている政権トップの発言は、民主国家である限り、そのまま相手国の意思を代弁する。それゆえ、他国の首脳も安易にそれを否定することはできなくなる。下手をすると、相手国そのものを否定することにもなりかねない。それが、同盟国であれば尚の事。
では、安倍・オバマの首脳会談がギクシャクしていたのかというと、そうでもないようだ。
3.安倍総理はマスコミがいうほど冷遇もされてはいない
今回の会談は、昼食会を含めて約1時間45分行われたのだけれど、これは当初予定時間を約40分もオーバーするもので、ホワイトハウス側も「非常に建設的な会談だった」と評価している。民主党時代の3人の首相との会談がそれぞれ30分にも満たないものであったことと比べると、その違いは明らか。
安倍総理は、アメリカ大統領賓客施設「ブレアハウス」で、帰国前に、記者団に、オバマ大統領について「同盟国として一緒に仕事をしていくという意味においては、大変ケミストリー(相性)が合ったような気がした」と述べているし、アーミテージ氏がいうように、オバマ大統領が、非常にビジネスライクな人物なのであれば、無駄な会話に時間を割く筈がないから、やはりそれなりに「中身のある」会談であったのだろうと思われる。
安倍総理を嫌いな一部のマスコミなどは、今回の首脳会談について、晩餐会もなく、共同記者会見もなかったことから、アメリカに冷遇されたとかなんとか言っているようだけれど、今回は公式訪問ではないから、普通は晩餐会なんてやらないし、オバマ大統領の記者会見嫌いはつとに有名。
オバマ大統領は、就任以来これまで行った記者会見はわずか35回。歴代の多くの大統領と異なり、ホワイトハウス内を歩いている際などに記者が投げかける質問に答えることも殆どなく、先日行われたアメリカとイタリアの首脳会談の際に、記者が新国防長官の議会承認が遅れている件についての質問も無視するなど、1ヶ月以上も質問に応じていないのだそうだ。
だけど、安倍総理との昼食会では、アメリカは、デザートにアイスクリームを出し、その味付けに抹茶を使い、 皿には抹茶の粉で「富士山のような絵」が描かれていたというから、日本に対する友好の度合をきちんと表現している。
ホワイトハウスの晩餐会で饗されるデザートには、「カチカチのメロンシャーベット」「やや固いグレープ風味のアイスクリーム」、「メチャクチャ柔らかいバームクーヘン」のおおむね三種類あり、それらの「デザートの固さ」が「アメリカとの友好度」を表してると言われている。
今回のアイスがカチカチだったのか、それとも、溶ける寸前の柔らかい状態で出されたのか、どれくらいの固さだったのかは分からないけれど、抹茶を使って、富士山を描いている配慮を見せた以上、それなりの親密度はあるとみていいように思われる。少なくとも、晩餐会で、日本料理を出されてしまった、韓国の李大統領よりは、遥かに上等にもてなされたとみていいだろう。
また、日本側もゴルフ好きなオバマ大統領(毎週末にラウンドするらしい)に、PGAプロも使用するという、山形市の「山田パター工房」が製造したパターを進呈している。
安倍総理は、祖父の岸信介元首相が1957年の首脳会談後にアイゼンハワー大統領とゴルフを楽しんだ経緯を、オバマ大統領に紹介したそうなのだけれど、その時同席したバイデン副大統領から「どちらのスコアが良かったのか」と質問されると、すかさず「国家機密だ」と返して、席上は笑いに包まれたという。
だから、筆者は、マスコミがいうほど安倍総理は冷遇もされていないし、ギクシャクした会談ではなかっただろうと思っている。
ともあれ、今回の会談は安倍総理にとって、まずまずの成功を収めたと思うけれど、そうであるがゆえに、今後の政権運営や公約についてより重い責任がのしかかる。注目していきたい。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
今回の外交の成功の原因の一つには
安倍晋三の家系の持つ高い品格があると思う.
幾ら米国大統領であるといっても,
オバマ氏の家系に誇れるものはない.
これが近年の米国外交のつま付きの原因である
のではなかろうか.
幾らお金があっても地位が高くとも,
品格は作れない.
その意味で, 日本は世界で最高の品格を持つ国
であると言える.