昨日のエントリーのつづきです。
2月21日、中国が尖閣諸島の周辺海域に「海上ブイ」を設置したことが明らかになった。設置場所は、排他的経済水域（ＥＥＺ）の境界線である「日中中間線」から中国側に３００メートルの位置で、今月17日に、海上保安庁の巡視船が確認した。
中国が設置したブイはアンテナが非常に多く、日本政府は、政府は通信機器も多数搭載していると分析していて、これによって、海中の音波から潜水艦の固有のエンジン・スクリュー音を記録・監視することで、尖閣周辺での海自潜水艦の動きを追跡される懸念がある。
22日、菅官房長官は、記者会見でこの問題について、設置場所が「日中中間線」から中国側であることから、「国際法上は特に問題ない」とした上で、「常識的には気象観測などを行うものと推測されるが、外交ルートを通じてブイがどういうものか説明を求めている」と述べた。また、小野寺防衛相も会見で 、「設置前からさまざまな情報収集をしていた。設置場所は日中中間線の中国側であり、日本の排他的経済水域内ではない」としている。
※報道機関によっては、日中中間線から日本側とするものもある。
果たしてこれが、軍事用のものなのか、気象観測用のものなのか、確たることは分からないけれど、おそらく中国は気象観測用のものだと主張すると思われる。
中国は昨年6月1日に、「海洋観測予報管理条例」という中国国内法を制定・施行している。中国の説明によると、これは、海洋観測予報活動の管理に関する中国初の管理規定で、海洋観測ネットワークの統一的な計画と設置、海洋観測資料の纏めと共有、そして、海洋予報警報情報の発表などを定めたもので、中国の海洋観測予報体制をさらに規範化させる為、としている。
これにより、中国は、海洋観測ステーションやブイを設置して５３の漁場で潮流や海水の塩分濃度など海洋情報を観測するという。
更に、この条例では、「国際組織、外国の組織及び個人が中国の管轄海域で海洋観測活動を行う場合は、必ず中国の関連規定に基づくものとし、如何なる団体および個人も無断で中国の国家機密に属する海洋観測資料や結果を対外的に提供してはならない」と定め、中国が設置した観測点や設備の損壊や移動、海洋観測を妨げる電磁波装置の設置や埋め立て、爆破、廃棄物遺棄などを禁止し、違反行為には、罰則が設けられているようだ。
中国国家海洋局の王峰・海洋予報減災司長はこの条例について「黄岩島（スカボロ礁）、釣島魚などの島やその付近の海洋環境予報業務は中国の責務だ」と、同法がこれら海域に適用されるとコメントしている。
つまり、これは、尖閣周辺の日本領海や接続水域に中国がブイを浮かべた場合、これを撤去すれば「違法」だと中国が自分の国内法で定めたということでもあるし、尖閣含め南シナ海から他国の船を締め出すことで、これら海域を"北京の湖"として、聖域化を狙ったものでもあると言える。また、これは同時に、中国のＡ２／ＡＤ戦略とも連動していると見ていいだろう。
「ＥＥＺと海洋覇権を狙う中国」のエントリーでも指摘したけれど、中国は国際法を自分の都合のよいように解釈したり、自国の国内法を他国に強要するきらいがある。
2月21日付のワシントン・ポストのインタビューで、安倍総理は、中国の海洋進出に関して「威圧や脅しによってルールを変え、他国の領海や領土を奪うことは出来ないと認識させることが重要だ」と、至極当たり前の指摘をしているけれど、中国は、たとえ脅しによって、ルールを変えることができなくても、勝手に"俺様ルール"を作って、平気でごり押しすることがある。だから、この安倍総理発言とて、中国に逆手に取られかねないことにも注意しておく必要がある。
更に、もう一点気になる点がある。それは、今後、日本やその他諸国の漁船等の民間船が、これら"北京の湖"に近づいただけで、中国に拿捕される危険があるということ。
なにせ、中国は海洋観測予報管理条例という"俺様ルール"を決め、ＥＥＺ境界線にブイを浮かべた。だから、接近する他国の船舶があったら、難癖をつけて拿捕することだって出来る。特に武装していない民間船であれば尚のこと。
実際、2月18日には、中国の海洋監視船「海監」３隻が、尖閣の領海内にいた日本の第11善幸丸（9トン）を１時間半にわたって執拗に追跡、一時は、50～60メートルまで接近する事件が起きている。
幸い、海保の巡視船２隻が第11善幸丸を終始護衛して、事なきを得たのだけれど、第11善幸丸の名嘉全正船長は「巡視船がいなかったら、拿捕されていたかも知れない。…そこまでやるのかという感じだ。」と証言している。
だから、今後、中国が自分の"俺様ルール"を振り回しては、周辺国の民間船を次々と拿捕して、人質にとってくる可能性も考えておかなくちゃいけない。やはり、この海域の防衛力の強化、少なくとも海保の大幅増強は必要かつ早急に対処すべきだと思う。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
ところで, ブイがあるから問題なのかも
知れないが, 存在が明確なら, 日本側に
jamming ブイを設置すれば問題解決.
軍艦マーチでも大音響で流し続ければ
良いのではなかろうか. 勿論, その中に
潜水艦のスクリュー音らしきものを
混ぜておけば弱い頭の体操になろう.
一番の問題は, このブイが中継ブイかも
知れないことだろう. その場合には,
日本側に密かにセンサーブイが沈められて
いる可能性が無視できない.