先日、アメリカ議会調査局は、日米関係に関する報告書で、尖閣での日中対立について「アメリカが軍事衝突に直接巻き込まれる可能性もある」という見解を発表した。
報告書では、日本政府による尖閣国有化以降、中国は周辺海域に公船を派遣するなど挑発的行為を続け、中国海軍による海上自衛隊の護衛艦への射撃管制用レーダー照射は、事態をエスカレートさせたと指摘した。ただし「照射が最高レベルの指示によるものか、司令官の指示か、兵士の判断によるのかは不明だ」としている。
また、尖閣での中国の行動は日本の安全保障上の脅威となっており、日本政府にとって自衛隊増強の必要性が高まっているとし、南西諸島方面での防衛力向上が必要と報告している。
この、アメリカが日中紛争に巻き込まれるかもしれないという懸念は、アメリカのマスコミも抱いているようだ。1月26日、ワシントン・ポストは社説で同様にアメリカが軍事衝突に巻き込まれる可能性を指摘している。以下にその全文を引用する。
一層悪化した尖閣島問題の日本と中国の政治の状況とまぁ、このように、中国の無法ぶりを批判する一方で、尖閣を棚上げしろ、と主張しているのだけれど、読み方によっては「本当は、こんなちっぽけな無人島なんかほおっておけばいいのに、オバマ大統領が尖閣は日米安保条約の適用対象と公言したものだから、戦争に巻き込まれる可能性が高まったのだ」という具合に、まるでオバマ大統領の判断ミスであるかと言わんばかり。
オバマ大統領の最大の関心事は "戦争の十年"を終わらせることだが、米国が日本と中国の双方が領有権を主張する小さな、無人島問題で、軍事衝突に引き込まれると信じるのは難しい。おそらく、それはないだろう。しかし、これらの国々とオバマ氏自身の公約で、それをが発生する可能性が高まっている。
尖閣諸島、中国は釣魚と呼ばれ、1895年以来日本の政権下にあった、何十年もの間、中国はないがしろにし、日本のその主張を認めて放置したきた。 しかし、小島の3島を、日本が9月に国有化して以来 、中国の国粋主義の政治家がそれを阻止し領有権を主張し、民衆を扇動し、中国の軍事力と共産党指導力を動員させた。
ここ数週間で、北京の挑発行為は、日本の戦闘機をスクランブル発進させたり、監視船を派遣する状態にエスカレートしている。中国の国営メディアの1社は、軍の戦いは、 "より高い可能性"であり、国は最悪に備えるべきと主張し、戦争熱を煽り立てている。 不安なことには、この挑発的で危険なキャンペーンに対し、それを管理できるはずの習近平の下の新しい共産党指導部に、看過されていることだ。
東京の政治情勢は、一層、懸念の原因となっている。新首相、安倍晋三は、日本の防衛支出を強化し、中国に立ち向かう考えで、政府は彼の考えを共有するナショナリストの政治家達だ。日本は議論するものが何もないことを宣言し、島々を巡る交渉を拒否している。
オバマ政権は "頭を冷やす"ため、先週東京に国務省の高官を派遣し、紛争を打開しようとしてきた。しかし、国務長官ヒラリー・クリントンは、2年前に明らかにした立場を改めて表明した。つまり攻撃から日本を守るための安全保障条約は、尖閣諸島にも適用されることだ。その建前は、危機が勃発後中国を抑止するために意図されたが、それはまた、ワシントンの影響力を拡大させた。中国が領土を掌握しようとする場合、オバマ氏は、外交政策の中心に置いている "アジアへのピボット"を弱体化させる道を選ぶか、日本をバックアップする軍事的対決かの選択をする必要が生ずる可能性がある。
幸いにも、今週にクーリングオフの兆候があった。安倍氏は習近平氏への書簡を使者に託し北京に派遣した。来月のオバマ氏との会談のためにワシントンに招待されている日本の指導者は、中国政府の好戦性に応じることなく、緊張を緩和する方法を模索しなければならない。米国の助けを借りて、尖閣諸島がどこに属するかの問題を後回し(棚上げ)することは可能なことだ。ワシントン・ポスト紙 社説全文 (2013年1月26日)
勿論、他国のゴタゴタに巻き込まれるのは、勘弁してくれというのは心情として理解できなくもない。だけど、少なくとも、今のところ、この考えがアメリカ政府の見解にはなっていない。だから、これをもってアメリカが尖閣を棚上げするように日本に圧力をかけてくるとは思わないけれど、ワシントン・ポストのみならず、連邦議会調査局まで巻き込まれる可能性を示唆した以上、客観的にみてその可能性があるとアメリカが認識していることには留意する必要がある。
日本は中国の挑発にのることはないということと、先日のレーダー照射事案のように中国の無法ぶりをきちんと記録し、かつ対外的にいつでも説明できる体制を整えておく必要があるだろう。
実際、アメリカ軍は、これら中国の無法については十分理解している。2月5日、オーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルド紙は、アメリカ海軍は、中国が「弱者いじめ」をしているという発言を掲載している。
それによると、アメリカ海軍太平洋艦隊情報作戦局のジェームズ・ファネル副参謀長は、アメリカ海軍会議上で、「中国は相手をあなどりいじめることで「侵略性」を示している」とし、中国が現在奪おうとしている海域は「過去5000年間一度も中国の管轄下に置かれたことがない」とした上で、「中国の"捏造"の歴史が証明するように、東シナ海と南シナ海の島嶼部の主権を要求している」と述べている。
また、中国海軍の増強については「主な目的はアメリカ太平洋艦隊への対抗だ。…中国は自分のものは自分のもの。あなたたちとは、あなたたちのものが何か話し合うという態度であり、中国は隣国の海洋資源を強奪している」と批判した。更に、中国の海洋監視船についても「他国を騒がせるだけで、ほかの任務は何もない。私から見れば、他国の海洋権益を故意に侵害しているだけ」と語ったという。
このように現場レベルでは中国の悪辣ぶりは知られている。問題はそれが、多くの一般国民にまで知られているかどうか。
昨年10月17日に行われた自民党領土部会で外務省が用意した資料によると、当時、中国側の独自の主張展開に対して、日本側が総理および閣僚による外信インタビューや各国政府、在外公館、報道関係者に説明や資料を送付し、IT広報にも努めることで、当初、中国の主張に言及する報道があったのが、欧米メディアを中心に、国際法上、日本の主張に分があり、中国の対応は各国共通の懸念になっているとの論調が目立つようになってきたのだそうだ。
だけど、中国の宣伝戦は止まることを知らず、レーダー照射にしてもサイバー攻撃にしても、彼らは自分の非を認めることは決してない。ゆえに、このような対立は、もう半永久的に続くものと腹をくくって、広報を強化すると共に、実質的な防衛力増強を図るしかないだろうと思う。
この記事へのコメント
白なまず
尖閣諸島の守りの要は海上自衛隊なのは間違いない。
軍備がいくら充実しても、避けられない不運は付き物である。
従って、海神を祀り天運を賜るのも大事。是非とも海神の乙姫さまをお祀りして頂きたい。
式年遷宮にあわせて出雲大社で乙姫さまをお祀りしてください。
伊勢神宮の式年遷宮に合わせて幽国人どもが三種神器を略奪を画策している様だが、
上手くいかない事は預言されている。追い詰められるまで認めぬ愚か者。
ちび・むぎ・みみ・はな
これしか当面の危機を防ぐ方法はないだろう.
つまり, 自国民が居住している領土を守るのは,
米国ノリベラル新聞でも認めざるを得ない,
世界共通の正義だからだ.
勿論, 配備自衛隊員には大きな生命の危険が伴う.
自衛隊員の戦闘行動における殉死に対する国民の
コンセンサスが必要. 靖國神社で良いと思うが.
sdi
護衛艦と対潜ヘリへのレーダーロックオン事件の発生位置や先日のブイ設置を考えると、中国側は尖閣云々より東シナ海の聖域化のほうに目標をシフトしたのかもしれない。簡単にいうと「東シナ海から日本の軍艦と公船はでていけ」ということ。これが達成できれば尖閣諸島の日本の領有権も形骸化され、中国は尖閣諸島も含む東シナ海を実効支配できる。
南西諸島に展開する海保と海自の戦力の早急な強化とそれをバックアップする空自と陸自の体制強化が必要になる。