2月22日に日米首脳会談が行われることが決まった。
これは、15日に菅官房長官が記者会見で明らかにしたもので、日米関係の強化に加え、北朝鮮問題を含むアジア太平洋地域の情勢について意見を交わし、TPPや普天間移設問題についても話し合われる見込み。また、安倍総理の訪米には岸田外相も同行し、日米外相会談を行う方向で調整を進めているという。
筆者は、1月8日のエントリー「向かい風の日米首脳会談」の中で、日米首脳会談を行うに際して、日本側には4つの宿題があるのではないかと指摘していた。それは次の4つ。
1)普天間移設これは、2011年9月に野田元首相が、オバマ大統領との初会談に先だって行われた日米外相会談の中でアメリカが日本に対して要求した項目なのだけれど、現時点では3と4については、目途がたっている。
2)環太平洋連携協定(TPP)参加
3)ハーグ条約
4)米国産牛肉輸入問題
3のハーグ条約については、2月14日、自民、公明両党はハーグ条約の承認案と関連法案を、それぞれ19日に了承する方針を固めていて、今回の日米首脳会談で、「ハーグ条約」加盟を表明する予定。また、4の米国産牛肉輸入問題についても、2月1日に、これまで生後20カ月以下に限っていた輸入対象を30カ月以下にまで広げる輸入規制の緩和を行っている。
つまり、4つの宿題のうち2つはクリアして持っていく形。残りの2つについては、首脳会談の議題となっていることから分かるとおり、話し合うのだろう。
一応、普天間移設については、安倍総理を始め既に閣僚クラスが沖縄入りして、進めようとしているけれど、まずは、県側との信頼関係を構築し、今春を軸に埋め立て申請を出す方向で考えているようだ。
ただ、あと、気になることがあるとすれば、やはりTPP。
これは、単なる筆者の印象にしか過ぎないかもしれないけれど、当初、TPPに不参加の方針を示していた安倍自民がほんの少~しだけ参加へ色気を出しつつあるようにも見える。
1月29日、安倍総理は、TPPについて、「選挙の前に基本的に示すべき方向性は示していきたいと思う。…今までの事前交渉について検証し、どういう影響が出るか各省庁に分析させている。…その結果を見ながら判断したい」と、完全反対とも決めていない発言をしている。尤も、直ぐにこの発言について、党の意向を尊重しながら対応する考えだと修正することになったけれど。
今の所、自民の中では、TPP反対派が大勢を占めているから、党の意向を尊重するのであれば、TPP参加は見送りという結論にはなる筈なのだけれど、ただ、それには、聖域なき関税撤廃という枕詞がついているから、これが外れるかどうかが唯一、TPPに参加するかどうかのカギを握る。
これが、まだ例外品目を認めるFTAであれば、まだ可能性はあると思われるのだけれど、TPPでそんなことができるかどうかは無論分からない。
また、TPPと関連する動きとして、アメリカとEU間でのFTAについても注意を祓う必要がある。
先日、オバマ大統領は、一般教書演説で、「環大西洋の包括的な貿易・投資協定についてEUと協議を開始する。米欧間の公正で自由な貿易は、アメリカに多くの高賃金の雇用を生み出す」と発言し、EUとFTA締結に向けた交渉を始めると発表している。
これに呼応して、欧州各国も先週、ブリュッセルで開かれたEU首脳会議でFTA協議の開始に合意。双方とも6月末までに交渉をスタートさせ、2年以内に完了させたいと考えているという。
尤も、EUとアメリカの間のFTAについては、過去20年も議論が交わされている。2007年にはドイツのメルケル首相が当時のブッシュ大統領に提案したものの断られた経緯もあるから、そうそう簡単に事が運ぶとは限らない。
だけど、アメリカが太平洋諸国との間でTPPを進め、EUとの間でFTAを結ぶことは将来的には、世界単一市場が出来上がる可能性を意味してる。
現在、日本は、EUとの間でFTAに関する事前協議を進めているのだけれど、アメリカとEUがFTAを結ぶという動きもあるとなると、どちらも同じルールでした方がよいという圧力も出てくることが予想される。畢竟、EUとのFTAであっても、蓋を開けてみれば、極めてTPPに近い形のルールで落ち着いてしまう可能性だって捨てきれない。
その意味では、日本も交渉の段階から、TPPに一枚かんで、少しでも有利な条件を引き出しておくという考えもできなくはないけれど、この辺りの判断は難しい。やはり、TPPでも聖域が持てるのかどうか、または持てなかったとしても、10年なり20年なりは持てるとか時限措置などあるのかといった、具体的な情報を精査した上での判断になるだろう。
だけど、やはり、最終的には、10年後、20年後の日本の姿、ビジョンを政府が描き切れるかに掛かっているように思う。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
1.聖域なき関税撤廃反対
2.貿易の数値目標反対
3.国民皆保険制度を守る
4.食の基準を守る
5.ISD条項反対
6.政府調達・金融サービスの独自性を守る
TPPは関税問題というよりは「自主権」の問題.
農業でさえ, 水に苦しむ米国には, 日本を席巻
するほどの米生産余力はないのだから, 関税が
全てを決定する主要な問題ではない. むしろ,
国独自の農業への投資に足枷がはめられる
ことが問題.
EUと米国がFTAを結ぶことはまずあり得ない.
農業国の仏国に対し(主に)工業の独とでは
立場が異なるからだ. そもそも, ユーロ問題で
EUはFTAどころではあるまい. 交渉しているという
ポーズが目的だろう.
二期目のオバマ大統領, 国内の雇用対策がうまく
進まねば, 1, 2年内にはレームダック化する.
TPPは米国国民向けの政策というより, オバマ大統領
の支持基盤であるグローバル資本のためのもので
あるから, TPPをうやむやにしても米国議会には
何の影響もない.
問題は税金のために悪魔に心を売った売国メディア
であろう.