安倍総理の中国への謝罪要求
2月8日、安倍総理は、BSフジの番組で、中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への火器管制レーダー照射について「中国は認め、謝罪して、再発防止に努めてほしい」と、謝罪を要求した。
これは、中国が火器管制レーダーの照射を認めるどころか、完全否定し、さらに、日本の捏造だと言い出した為。2月7日、中国国防省は、在北京日本大使館の駐在武官に対し、「警戒・監視用のレーダーは使用しているが、射撃管制用レーダーは使用していない。…日本が対外公表した内容は事実に合致しない」と回答し、8日には、中国外務省の華春瑩副報道局長が記者会見で「日本の捏造」と反論した。
更に、同日、中国国防省は、公式サイトで「近年、日本の艦艇、航空機が中国側の艦艇を長時間、近距離で追跡監視していることが安全問題の根源だ。…中国側に事実を確認せずに一方的にメディアに虚偽の状況を発表した」と、日本側を批判までする始末。そんなことを言うのなら、中国が事実を日本側に確認してからメディアに発表したことがあるのかと逆に聞きたい。
2月9日、この中国の白々しい反論に対して、小野寺防衛相は「通常レーダーはくるくる回って警戒監視するが、火器管制用レーダーはずっと追い掛ける形で照射する。わが方の船を一定期間、追い掛けていた証拠がある。…特殊な電波なので、それも記録している。…「証拠として確信できる内容だ」と発言し、証拠データの一部開示を検討する方針を表明している。但し、開示する場合は「日本の安全保障の機密にも関わる。どこまで表に出していいかを政府内で検討している」と説明していて、そこそこに納得できる程度のレベルになると思われる。
火器管制レーダーは、大砲やミサイルを撃つ前に電波を標的に当て、跳ね返ってきた電波を捉えて、相手の位置や方位を正確に測定するもの。当然、相手もじっとしている訳がないから、動き回っても追跡するようになっている。そして一端、発射された弾は、レーダーのデータを基に相手の動きを予測して進路を調整する。
その射程範囲は結構広く、海自護衛艦では、水上の船舶なら約20キロ、上空の目標なら60キロ以上届くとされる。
勿論、レーダー照射される側もただ黙って照射されている訳じゃない。自分にレーダー波を照射されるということは、自分自身に探知装置を搭載してしまえば、少なくとも、自分に向けて何某かの電波が来ていることは分かる。だけど、それが火器管制レーダーによるものかどうかについては、どの周波数のどんな電波が、火器管制レーダーに使われているかを知っていなければ、そうだと判断することができない。ここが肝の部分。
今回日本が、中国から火器管制レーダーを照射されたと発表したということは、中国の火器管制レーダーについての情報を持っているということであり、事実、小野寺防衛相は「私どもは相手の船のどのレーダーが火器管制レーダーか分かっている」と述べている。
ただし、火器管制レーダーの照射を受けたと発表することは、自分の探知能力を公表することでもあり、自分も無傷ではいられない。さしずめ、暗号を解読したぞと発表するようなものでもあり、発表したその瞬間から、相手は火器管制レーダーの周波数や仕様の変更を検討し始める。
ただ、それでも、今回の「ロックオン」発表と、安倍総理の謝罪要求は、少なからず、中国にとってはショックだったようだ。
「ロックオン」発表後、中国は、これまで再三再四に渡って、尖閣の領海及び領空を侵犯する挑発行為をぴたりとやめている。また、安倍総理の謝罪要求も国内では報道していない。
これは、中国政府が軍に対して、挑発を自粛するよう指示したものと見られていて、その意味では、自身の探知能力をバラしてしまうリスクを覚悟しての、「ロックオン」発表は、効を奏したといえる。
今回のように、中国にシラを切らせてから、証拠を突きつけるというやり方は、世界に向けて発信するという意味では大きい。中国がシラを切れば切るほど、自身の発言に説得力がなくなってくる。これは、南京虐殺であるとか、従軍慰安婦であるとか、過去の出来事で、段々白黒つけるのが難しくなっているものと比べると、ずっと容易い。
中国は、過去の日本を悪し様に言い、日本は今の中国の危険性を指摘する。過去ではなく、今現実の脅威を発信することで、世界を味方につけるのが得策。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
チェルノブィリだが, 「歴史通」3月号によれば,
現在は町としては復活しているらしい.
あれほどの放射能も現在は問題にならない
様にできていると言う. もっとも,
広島・長崎のデータを見れば信ずるに値する
事実ではある.
放射能は決して悪魔の魔法ではなく,
考えれば対処できるものだ. 外挿による
線形仮説を錦のみ旗として, 放射能を
百年殺しの魔術と同一視している今を見れば
どこで日本は道を踏み違えたのかと思う.
ウクライナにできて日本にできないのは
恥ずかしいではないか.
深月
中国側をチクチク突付いて長期間イライラさせるのもよし、タイミングを見て短期決戦で片付けるのもよし、という感じでしょうか…、いずれにせよ、流血抜きで上手く片付いて欲しいと思います。
almanos
sdi
私は「現場の暴走」や「党が自民解放軍へのコントロール喪失」の分析に反対です。現に「尖閣の領海及び領空を侵犯する挑発行為をぴたりとやめている。」ということは、軍に対する共産党党中央のコンロールが有効であることの表れです。中国共産党党中央が人民解放軍へのコントロールを失うということは「中国人民解放軍の政治委員が解放軍軍人へのコントロールを喪失」
「中国共産党党中央が解放軍だけでなく政治委員へのコンロールも喪失」
ということになります。
私は、海軍側の提出した作戦計画について「承認しないし命令書も出さないけど黙認する」あたりなんじゃないかと思います。