未熟なままだった民主党
2月8日、政府が衆参両院の議院運営委員会理事会に提出した公正取引委員会の委員長などの国会同意人事について、民主党が受け取りを拒否する事態が起きた。
受け取り拒否の理由は、事前に公取委員長の候補者名が報道されたためで、民主党は事前報道された経緯について「聞いた上で手続きに入る」と政府に対して再調査を要求している。
政府が今回提示した候補者は14機関の計41人。このうち公取委員長の候補として、元財務次官の杉本和行みずほ総合研究所理事長が選出されたのだけれど、これが事前報道されていた。
「日銀総裁人事を巡る思惑」のエントリーで触れたことがあるけれど、国会同意人事において、候補者名が事前に報道された場合には、提示を認めないとする与野党間の申し合わせがある。通称「西岡ルール」。
だけど、この西岡ルールには、民主党自身が、苦しんだ経験がある。まだ民主党政権だった2012年7月20日、原子力規制委員会の人事案が読売新聞などで事前に報道されたことがある。その時、政府は一度、国会への提示は見送ったのだけれど、結局、「ベストの陣容だ」ということで、原案通りの人事案を提出した。
いったん国会への提示を見送ったにもかかわらず、その後、原案通りの人事案を提示した。人選を主導したのは当時原発相だった細野幹事長で、細野氏は人事案を提示した理由について、「ベストの陣容だ」と明言していた。その後8月になって、民主党はこの事前報道ルールについて廃止を含む見直しを提案している。当時、衆院議院運営委員長を務めていた民主党の小平忠正氏は、「いろいろと問題が多く、国会が停滞することもある。見直しが必要という考えで諮った」と述べている。
それなのに、民主党は、このルールを盾に反対する。しかも、今回反対している、公正取引委員会の委員長に杉本氏を起用する案は、民主党政権時代に内定していた案。自分で案を作っておいたものを自分で否定する。全く訳が分からない。
民主党は、一度与党になって、国政を預かる大変さを経験した筈なのに、野党になった途端、自分で作った案でさえも反対に回る。これでは、「反対の為の反対」としか解釈できないし、3年半もの間、与党を経験させたことが、全く生かされていない。政権与党の資格があるなんて、いくら連呼されても誰も信じない。
自民党の鴨下一郎国会対策委員長は、人事案について、「国益にかなうか、適材適所かどうかということで民主党が配置した人事で、事前報道を理由に反対することは国民から理解されないだろう」と批判している。また、日本維新の会の橋下共同代表も「何でこんなばかげたことをやっているのか、さっぱり分からない。ナンセンスだ。…国会で山のように取材陣がいる中で人事案を隠し通すなんて無理。報道で漏れることなんで全然いい。何も問題ない」 と痛烈に批判しているけれど、全く持ってそのとおり。
2月8日、民主党は、自身の与党時代の政権運営や衆院選の総括を盛り込んだ「党改革創生案」の素案をまとめ、党改革創生本部総会で所属議員に示しているのだけれど、そこでは、「政権運営戦略が稚拙・未熟で、まとまりがなかった」、「政治主導をはき違え、官僚主導に回帰した」、「普天間、政治とカネ、消費税発言、衆院解散時期の見定めでトップの失敗の連鎖が続いた」となどと自己批判している。
その自己批判するのと同じ口で、事前報道を理由に、元々自分達が作った人事案に反対する。これが、「稚拙・未熟でない国会戦略」なのか。
はっきりいって、民主党は、国会の足を引っ張っている存在になっている。先の衆院選で民主党は大敗し、自民、民主、維新、みんなの党の議席比率は1:0.2:0.2:0.06くらいになっている。最早、民主党は、2大政党の一角といえるだけの議席はない。あとは、与党を経験したことがあるという「強み」を生かすべきなのに、今回の同意人事でそれさえもあっさりと投げ捨てた。
野党第一党の座は、遠からずして、民主党から維新の会に移ることになるだろう。
この記事へのコメント
almanos
sdi
前原執行部時代に「対案主義」を打ち出したこともありましたが上手く行っていたとは言えません。しかも、永田メール事件で前原執行部そのものがなくなってしまいました。では、当時の民主党のシンパの方々が小沢執行部の「反対主義復活」を批判したかというと、そんなことはなく「徹底的に自民党の政策の問題点を洗い出すという野党の役割に回帰した」という肯定的評価のほうが多かったように記憶しています。この「反対主義」が民主党の党勢を上げ調子にして参議院戦の大勝にひいては政権交代に繋がった、と彼ら自身が考えているのではないでしょうか?
「党改革創生案」にしても政権交代以後の民主党の体たらくを「自己批判」していますが、政権交代するまでの民主党のあり方や政治手法には触れていません。恐らく、彼らは「あの頃の民主党のやり方は正しいかった。だから政権交代ができたのだ」と考えているのでないでしょうか?
そして民主党とそのシンパの方々が、民主党政権時代にやたらと口にした「健全な野党」がどんなものか
初めまして
「輿石、何やってんだよ、支持率が落ちるじゃないか」
「衆院選では、残った人、小沢に付いた人は軒並み落選で、維新に潜り込んだ人だけが助かったなあ、タイミングを見て離党するかな」
自民党
「財務省さん、維新が増えてみんなと一緒になったら公務員改革の声が大きくなるね、天下りポストもどんどん減るね」
「景気対策が遅れると消費税は上げられないよね」
「あと、報復人事はいけないと思っているよ、ただ、汗をかいた人が報われる社会を目指すと総理も言っているよ」
財務省
「お抱えのマスコミを使って世論工作します。」
「国税を使って色々調べますし、それと前政権時のネタで・・・」
自民党
「ちょっとちょっと、財務省さん、独立性は大切でしょ、手段はお任せします。結果をよろしくね」
同意人事の展開についてはこんな感じかなあと思っていますが、どうでしょうか