4Kテレビと放送改革
総務省は2014年7月から4Kテレビ放送をスタートさせる方針を固めた。まず、衛星放送のCSで始め、BS、地上波に広げる計画のようだ。
当初の計画では本放送は2016年から始めることを目指していたそうなのだけれど、2014年7月にブラジルで開催されるサッカーワールドカップ(W杯)決勝トーナメントに合わせるという。
これは、総務省が、ワールドカップを次世代放送を立ち上げる格好の機会と判断した為で、技術開発や推進母体の設立に向け、12年度補正予算で31億円を計上している。
但し、4K放送のデータ量は大きく、現在の地上デジタル放送の電波帯域では抱えきれないため、大容量のデータを送れる衛星放送のCSから始め、スカパーJSATが管理するCS放送用衛星の空き電波帯域を使って映像を送る考えのようだ。
4Kテレビとは、表示パネルの画素数が、現行のフルハイビジョンの4倍ある超高画質テレビ。現在主流のフルハイビジョンテレビの画素数は、水平画素1920×垂直画素1080で、縦横合計で207万3600あるのだけれど、4Kテレビは、水平画素3840×垂直画素2160の合計829万4400画素。水平画素が3840でおよそ4000あることから4Kテレビと呼ばれる。
4Kテレビは50インチ程度のテレビを想定しているのだけれど、2011年に東芝が55型の4Kテレビの発売を開始。2012年にはソニーが84型の4Kテレビを販売している。
更に、ソニーは今年1月にラスベガスで開催された、国際家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」に先駆けたプレスカンファレンス世界初の4K対応有機ELテレビを発表した。
これは、まだ開発段階の製品ではあるけれど、コントラストがとても高くて色域も広く、更に高精細という超高画質で中々評判を集めたようだ。
ソニーは2013年夏にも、アメリカで4Kコンテンツの配信を開始することを計画しており、まず配信とダウンロードという形で始める模様。
このように家電メーカーは4K対応テレビの開発を着々と進め、4Kへの期待も高まっているようなのだけれど、放送する側は専用カメラなどへの投資負担から、今の所、4Kにはあまり乗り気ではない。
1月28日、日本テレビの大久保好男社長は、記者会見で「次世代放送の撮影技術の蓄積は進めるが、受像機の普及度合いなど、ビジネスとして成り立つかを注視していかないといけない」と語っている。
また、今の地上波デジタルの整備も完全に終わっていない。NHKと在京民放は今年5月を目標に首都圏の地上デジタル放送の電波塔を東京タワーから東京スカイツリーへ移すための試験を重ねている。だから、4K技術がぱっと出てきても、対応は後回しになる。
それ以上に深刻なのは、若者のテレビ離れ。まぁ、若者のテレビ離れという言葉は、ここ2、3年よく耳にするようになったけれど、2012年12月25日から2013年1月3日に掛けて、ジャストシステムが20代のビジネスパーソンを対象に、テレビ視聴についてのネット調査を行っている。
それによると、1年前と比べテレビの視聴時間に変化はあったかという質問に対して、「増えた(大幅にを含む)」と答えたのは14.5%であるのに対し、「減った(大幅にを含む)」は36.3%、変わらないが49.2%という結果になった。
更に、 減ったと答えた人に、その理由を聞いたところ「仕事などで忙しいため、見る時間が減ったから」(59.0%)が最も多く、次いで「見たいと思える番組が減ったから」(44.6%)、「インターネットなど、テレビを見る以外の時間が増えたから」(42.8%)と続いた。
まぁ、昨今の生活の多様化やメディア媒体の進化を考えると当たり前といえば当たり前だと思う。また、1月31日から2月10日までの期間で、ヤフーニュースが、リアルタイムでのテレビ視聴と録画でのテレビ視聴の時間のどちらが多いかのアンケートを取っているのだけれど、2月5日現在で、およそ6割の人が「録画での視聴の方が多い」と回答している。
録画で視聴すると言う人のコメントをみると、「放送時間にしばられずに行動できるから」とか「だってCMがうっとーしいんだもん」とか、中には、「リアルタイムで見る価値のある番組が無い。報道は嘘ばかり、バラエティは同じ人物がどの局でも同じ事しかしていない。」と手厳しいものまである。
これは、もう放送の中身というコンテンツで駄目だしされていると言っていいと思う。これを考えると、4Kとか有機ELだとか、どんなに高解像度のテレビを作ったところで、それだけで売り上げを上げるというのは少々厳しいのではないか。
であるならば、いっそのこと、家電メーカーがコンテンツごとテレビを販売することだって考えてもいい。例えば、家電メーカーがどこかの下請け番組制作会社を子会社化して、自社専用の番組を作らせるとか。
放送の間のCMが敬遠されているのなら、サッカー中継の様に、最初と最後に纏めてCMを流すとか、番組内に自社製品を出して番組をCM化させるとか。サッカーの試合後の選手インタビューだって、スポンサーのロゴが並んだプレートをバックにやっている。サザエさんの磯野家にでてくる家電はみんなスポンサーの東芝製だなんて、周知の事実。
昨今は、企業のコンプライアンスが重視され、偏向報道には、放送局ではなくてスポンサーにクレームが入る時代になってきている。であれば、スポンサーが自分で監督して納得のいく番組を作らせて、魅力的なコンテンツと一緒に販売したほうが良いのではないか。
家電メーカー専用の番組は、そのメーカーのテレビでしかみれないようにしておけば、その番組が魅力的であればあるほど、番組見たさにそのメーカーのテレビが売れる。その昔、ゲームのドラクエが大人気だったときなんかは、ドラクエがやりたいから、ファミコンを買ったという人が沢山いた。ソフトがハードを引っ張っていた。今なら、さしづめマリオで遊びたいからWiiを買うようなもの。そういう商売の仕方もある。
昨今のメディアに対する国民の目が厳しくなってきたからこそ、ちゃんとした番組はきちんと評価されるし、人気も集まる。
まぁ、放送法や規制の絡みがあるから、簡単にはいかないとは思うけれど、コンテンツの貧弱さが業界の衰退を招いていることは自覚すべきだし、そうであるがゆえに改革を進めていくべき領域だと思う。
この記事へのコメント
クマのプータロー
制作会社自体は大手中小零細関わらずさほど企業体力がないのであまり多くの人は抱えられず、テレビ局に食い込める元請け制作会社から下請け孫請けと流れます。ピンハネどころじゃなかったですね、元の制作費から半額以下で作られているなんてテリー伊藤も言ってましたし。
白なまず
almanos