南鳥島と沖ノ鳥島を開発せよ
昨日のエントリーのつづきです。
海洋資源はメタンハイドレートだけじゃない。3月21日、海洋研究開発機構と東京大学の研究チームは、小笠原諸島・南鳥島沖の海底の泥に含まれるレアアースが、海底から浅い場所に超高濃度で存在することが分かったと発表した。
これは、今年1月21日から31日にかけて、深海調査研究船「かいれい」が、南鳥島周辺の水深5600m~5800mの海底数地点を、ピストンコアラーで、海底堆積物のコア試料の採取したものを解析した結果判明した。
中でも、PC05と呼ばれる地点のコア試料の鉛直方向のレアアース濃度分布は、海底下3m付近に総レアアース濃度が6500ppmを超える超高濃度のレアアース泥が存在することが確認された。この濃度は、タヒチ沖に分布するレアアース泥の濃度(1000~1500 ppm)の4~6倍、ハワイ周辺海域の濃度(600ppm)の10倍にも及ぶ。
これまで、レアアース泥は、その上にレアアースを含まない表層泥が10m以上堆積していると予測されていたのだけれど、今回の調査で、表層堆積物は予測よりはるかに薄く、高濃度のレアアース泥が比較的浅い深度に存在し、複数の地点で海底下10m以内の浅い深度からレアアース泥が出現することが分かった。
更に、5000ppmを超えるような超高濃度のレアアース泥は、レアアース泥層の上部1~2mの位置に出現することも明らかになった。
経済産業省は来年度から南鳥島沖の調査を本格化し、3年間で約40カ所を試掘する予定で、政府は商用化に向けた技術開発も急ぐという。メタンハイドレートもそうだけれど、こういった海底資源は採掘コストがネックになるものだけれど、高濃度のレアアース泥が海底の浅い場所に埋まっているとなれば、採掘コストも安くなる。それにレアアース泥は、採取した泥をそのまま海面まで持って行っても、メタンハイドレートのように、途中でメタン化して回収できなくなるという心配もない。どの深さまでのレアアース泥を採掘するとさえ決めれば、後は泥を掬っていくだけでいい。
海底資源の採取技術については、色んな方法が検討・開発されているけれど、単純に海底にある資源を拾ってくるというものであれば、1960年代から先進各国で研究が進められてきた。
その中の一つに、流体ドレッジ方式という採掘技術がある。これは元々、水深5000mの大洋底に分布するマンガン団塊を採取するために開発されてきた方法で、マンガン団塊と海水を懸濁状態(スラリー、泥漿)にして、輸送管(揚鉱管)を利用して深海底より海面上の採鉱船まで輸送する方式。
まぁ、ぶっちゃけていうと、巨大な掃除機で、海底資源を海水ごと吸い込んで回収するようなもので、シンプルといえばシンプル。高濃度のレアアース泥が海底の浅い場所に埋まっているのであれば、或いは、この流体ドレッジ方式で、表層のレアアース泥は採掘できるかもしれない。
また、レアアース泥だけではなく、マンガン団塊の一種で、堅い岩盤の上に分布するマンガンクラストの開発も進める計画がある。
国土交通省は、平成22年度から、沖ノ鳥島での港湾整備に向けた現地調査を行っており、今年になって、港湾建設に着手している。これは、2016年度末までにサンゴ礁を水深8メートルまで掘って、全長130メートルの大型海底調査船が停泊できるための、長さ160メートルの岸壁を造る計画で、総工費は750億円。沖ノ鳥島に港を造ることで、輸送や補給の活動拠点となり、より効率的な活動が可能になることは間違いない。
国土交通省によれば、沖ノ鳥島周辺の海底には、ニッケルやコバルト、白金などの金属を含んだアスファルト状のマンガンクラストが広く積もっており、島周辺のEEZの海底から資源を発掘すれば1160億円の利益が出るとしている。
確かに、沖ノ鳥島は海山が海面近くまで成長してできた島だし、付近には冥王星海山など多数の兄弟海山があるから、それなりのマンガンクラストがあると思われる。
ただ、どれくらいの質のマンガンクラストがどれくらいの量あるかは、これからの調査を待たねばならず、経産省などは、沖ノ鳥島の開発については、あまり興味がないようだ。
それでも、政府が採算性を度外視してでも、沖ノ鳥島に港を建設するのは、資源開発もさることながら、領土保全及びEEZの確保という狙いがあるのではないかとも言われている。確かにそれはそうだろう。
それに、沖ノ鳥島に港ができれば、そこを拠点にして、漁場としての開発が進む可能性もある。
東京都は、平成19年に沖ノ鳥島周辺の3カ所、水深1700~2800mに浮き魚礁を設置して、水産資源の調査を行っているのだけれど、漁礁には、カツオや小型マグロが多数集まり、礁内にはシャコガイの一種であるシラナミガイが高い密度で生息していることが分かっている。
筆者は、2011年10月のエントリー「スタンダード・ブルー」で、安全保障的な側面から沖ノ鳥島を整備してはどうかと述べたことがあるけれど、今回の港建設を足掛かりにして、海底資源のみならず、水産資源の拠点としても整備拡充されることを期待している。
この記事へのコメント
洗足池
官僚が新規の巨額の事業を始めるため、有りもしない危機を煽り、僅かな資源を針小棒大に語る手口は昔から繰り返されて来た。1970年代の東シナ海、日韓石油開発もその例だが、成功したのは一つもない。
日比野
逆にあの海域が日本のEEZであれば、EEZであることを名目にして巡視船を派遣するなりなんなり、自由に出来るわけです。
ですから、沖ノ鳥島に観測隊の常駐でも、漁業でもいいのですけれども、そうした実績を作ることで、EEZを持つ根拠が補強されることはバカになりません。
その意味では、おっしゃるとおり"予算分捕りの為の屁理屈"なのかもしれませんけれども、屁理屈だろうがなんだろうが、それでEEZが確保されるなら安いものだと考えます。
水と安全はタダではないのは勿論のことですけれども、領土・領海とて何もしなければ失うのが現実なのです。
あと、レアアースについてですけれども、海底レアアース泥を調査している東京大学の加藤教授は。「膨大な量のレアアース泥の発見は“存在する”ということが判明しただけでも、レアアース市場を独占している中国を強く牽制する効果がある」といっています。私もこの見解に賛成で、現段階では、外交カードの意味合いが強いと見ています。
また、レアアース危機は、煽ったのか、本当に危機を感じたのかは分かりませんけれども、結果としてレアアースをつかわない技術も開発が進み、中
ちび・むぎ・みみ・はな
> 水深5600m~5800mの海底数地点を、
同様な話は JAMSTEC が二年ほど前に発表していたが,
「東大が」と言うところに JAMSTEC がおかれた
予算配分上の苦しみがあり, 一般報道が今のタイミングで
なされている理由がある. 実質的には JAMSTEC が
中心となって技術開発を行なっているのであるが,
一つの部所の技術者は10人もいないのが現状である.
はっきり言って, 東大と言うだけで予算が重点配分
される科学政策は日本の技術の発展を阻害している.
それに, 深海の海底開発はケーブルを降ろことは
物理的にできないのであり, 作業主体を海底におき,
作業は自律的な作業ロボットに依らざるを得ない.
その際の海洋汚染をどうするかが大きな問題となる.
汚染を少なくするためには海水ごと吸い込むが,
その水をどうするか. 重金属が含まれた水にたいする
国内の環境基準を当てはめるならまず不可能な作業になる.
既に10年も前から問題になっていることだ.
その点で, 日本海側の開発は非常に有望なのだ.
何と言っても「浅い」のが一番