尖閣3月有事に備えよ
国難が続く日本ですけれども、内閣では危機感が高まっているようです。
1.尖閣測量隊
3月16日、自民党本部での会合で、小野寺防衛相は、「日本の領海・領空が侵犯され、様々な圧力がかかってくる。東西冷戦のどこかの陣営の手伝いではなく、直接紛争の当事国になるかもしれない。そういう危機感の中で安全保障体制を作っていかなければいけない。」と述べ、中国の対応についても、「政権が代わり、日本のスタンスが少し変わった期間が一時あった。中国が『日本の状況は少し付け入ることができるかな』と、様々なことを仕掛けてきた」との見方を示した。
全く持って、そのとおり。憲法9条を隠れ蓑にして、高みの見物をしていられる時代は終わった。憲法9条があってもなくても、それを無視する国が相手である限り、何の意味もない。
京大名誉教授で哲学者の田中美知太郎は、かつて憲法9条について「いわゆる平和憲法だけで平和が保障されるなら、ついでに台風の襲来も、憲法で禁止しておいた方がよかったかも知れない」と述べたことがある。正に、今、この言葉が証明されようとしている。
3月12日、中国の全国政協委員を務める李朋徳・国家測量地理情報局副局長は、去年、中国が尖閣に無人機を派遣して航空撮影した写真について、「釣魚島はカシューナッツに似た形をしているが、この『カシューナッツ』には起伏があるのか、洞窟があるのか。地表はどんな様子なのかを知るには、どんなに精密な航空撮影でもお手上げだ。このためわが国はできるだけ早く、適切な時期に、測量隊員を派遣して釣魚島に上陸し、実施測量を行う。…これまで実地測量は行われておらず、基準の精度に達していない。最終的にはより直接的な方法によって、より精確な測量をしなければならない。情勢が比較的良い時に、測量隊員の身の安全を確保できる状況下で行いたい」と述べた。
また、「わが国の国土であれば必ず測量しなければならない。これは国家の版図の測量者、防衛者として必ず尽くさなければならない義務だ」とも付け加えた。
中国は、国家測絵地理情報局を先頭に、国家海洋局や海軍などが参加する国家島嶼測量・製図プロジェクトを2009年から開始しており、第2期計画として、尖閣諸島全海域を網羅した測量を実施する予定だという。
これに対し、3月13日、菅義偉官房長官は記者会見で、「事実なら全く受け入れられない。…尖閣諸島は紛れもなく日本の領土だということに基づいて対応していく」とし、仮に中国側が上陸を強行した場合は日本の国内法に基づき対処する方針を示した。
去年の8月、香港の活動家が尖閣に不法上陸し、入管難民法違反の疑いで逮捕され、強制退去になったことがあったけれど、今度は民間ではなくて、国の測量隊となるから、事態がもっと深刻になる。
それどころか、測量だといって上陸した"測量隊"の名のる者達が、便衣兵宜しく重火器で武装しているなんてことだって十分有り得る。それに、"測量隊"が4~5人程度であればともかく、50人、100人単位で上陸してきたら、こちらもそれ以上に人数を用意しない限り、その場で追い返すことは難しいだろう。
一番気になるのは、そうやって一旦上陸されて、直ぐに追い返すことができずに、睨みあいや、もみあいになった時に、中国の"便衣"測量隊が、自作自演で自分達に発砲して、日本側がやった、と難癖をつけて、中国海軍が測量隊保護を名目に乗り出してくること。
海の上であれば、海保と中国船は綺麗に色分けされていて、船の形も構造も違うから、便衣兵のような自作自演はちょっと難しいのだけれど、陸にあがるとそうではなくなる。どさくさまぎれに何でもできる。だから、絶対に上陸させてはいけないし、万が一上陸させるようなことに備えて、尖閣のありとあらゆるところに、監視カメラ、暗視カメラ、上空偵察機を飛ばして、彼らの動向を逐一記録しておくべきだと思う。
筆者には、今までのような海上警備に重点を置いた警備体制は、もう限界に近づいているのではないかという懸念が拭えない。
2.国境警備隊と気球型レーダー
3月7日、自民党の石破幹事長は、宮古島で行われた、日本商工会議所青年部会の第32回全国大会おきなわ那覇大会・宮古島特別分科会で、講演を行い、その中で、「例えば、尖閣諸島に中国の民間人が上陸し、その保護のために中国の軍隊が出てきた場合、日本側から警察ではなく自衛隊が出動すれば、『先に軍事行動を仕掛けたのは日本だ』と言われてしまう。警察では手に負えないが、自衛隊が出れば事が大きくなるケースがありえる。…そういうケースに備えて、多くの国が、警察と軍隊の中間のような国境警備隊を持っている。日本もどうやって対応するのか考えなければならない」と述べ、国境警備隊の創設を検討すべきだという考えを示しているけれど、妥当な提案だと思う。
また、いつ起こるかわからない有事に備え、監視体制の更なる強化も求められる。「中国包囲網を成功させる条件」のエントリーでも述べたけれど、中国は、孫子の兵法に則り、尖閣への度重なる領海侵犯、領空侵犯をやって、海保、空自などを疲れさせる戦術に出ている。実際、海保の中には、「全国の海保から応援をもらいルーティンを組むが、過去にない激務で現場の疲労は極限まで達している。」という声まであるようだ。
それに答えてのことなのか、政府は、尖閣諸島などの警戒監視のため「気球型レーダーシステム」を導入できないか検討を始めた。これは、現在の空自による早期警戒機(E2C)や空中警戒管制機(AWACSA)で警戒する体制では、隊員の疲労や燃料費の増加といった問題があり、負担を軽減するために、浮上した案。
なんでも、気球型レーダーはヘリウムを詰めた風船の下部にレーダー装置を取り付け、ロープで地上とつないで数キロ上空に浮上させる仕組みで、アメリカ空軍はメキシコ国境などで小型航空機による麻薬密輸・密入国の防止に使っているという。既に2013年度予算案に調査費を計上している。
筆者は2009年に「無人哨戒システム」、「与那国島にOTECプラントを」というエントリーで、丁度これと同じく、気球を浮かべて、常時監視体制をとるようにしたらどうかと述べたことがあるけれど、こんなことを正式に国が検討しなければならない時代になってしまった。
尤も、一部には、近々に尖閣を巡って、中国の中国解放軍が動くのであれば、軍関係の予算がもっと増えているはずで、今の所、そうなっていないから、軍事衝突までには行かない筈だ、という指摘もある。だけど、中国の軍事予算ほど、透明でないものはないのだから、単純にそれを信じ込んでしまうのは危険。
果たして、中国がどこまで本気で、尖閣への測量隊派遣をやろうとしているかは分からないけれど、備えは必要。早急な対処を望む。
この記事へのコメント
opera
>「…東西冷戦のどこかの陣営の手伝いではなく、直接紛争の当事国になるかもしれない。そういう危機感の中で安全保障体制を作っていかなければいけない。」
という小野寺防衛相の発言。
やはり「多くの日本人(とくに戦後世代)は、冷戦に対して切迫した当事者意識を持っていなかったのだなぁ。」ということが如実に分かる発言です。
一種の失言でしょう。
日本は自ら主体的に形成したものではないとしても、冷戦においてまぎれもなく直接の当事者でしたよ。しかも最前線に位置する。
戦前・戦中派の指導者層や現場の人間は違うでしょうが、日本人の「平和ボケ」もこうした点から糾していかなければならないとすると、2・3日前のエントリーにあった核武装の問題などは、気の遠くなるような話だという気がしますね。
とおる
・「チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車」 著作: 遠藤誉
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4023311650.html
中国は1943年の「カイロ密談」で尖閣領有権を自ら放棄していた。
この機密情報を中国共産党新聞と中国政府通信・新華網が暴露した。
アメリカ公文書館でカイロ密談議事録を発見。