戦時体制に戻る半島

 
北朝鮮が韓国との休戦協定を白紙にすると宣言した3月11日からまる1日経過した。

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今の所何も起こってはいないけれど、北朝鮮の口での挑発は続き、緊張が高まっている。3月10日には、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞が「最後の全面対決戦に入ったわが軍は、突撃命令だけを待っている。…核打撃の手段も戦闘動員態勢にある」と警告した。

対する韓国も黙っていない。3月8日、韓国国防部のキム・ミンソク報道官は、「北朝鮮の核攻撃は私たち大韓民国国民に対する一種の脅迫であるとし、核兵器が過去2回、使用されたことはあるが、これは戦争の勝敗を決するために使用されたことだ。大韓民国の社会のように韓国人が幸せに暮らしている社会を核兵器で攻撃するならば、それは人類が許さないだろう」と述べた。

まぁ、口だけで反論する分には、いいかもしれないけれど、キム・ミンソク報道官のコメントのロジックは、勝敗を決する為であれば、核攻撃をしても構わない、というふうにも受け取れなくもない。であれば、北朝鮮が、休戦協定を白紙にする、と宣言した以上、北朝鮮からみれば、韓国の事情に関わらず、既に戦争が再開した扱いになる。であれば、北朝鮮が朝鮮戦争の"勝敗を決する為に"、韓国に核を落としてもよいことになる。

だから、この発言は、返って北朝鮮に核攻撃させる口実を与えてしまったかもしれない。

ただ、そんな強気な反論ができるのも、アメリカが後ろに控えていればこそであることは、改めて指摘するまでもないだろうけれど、果たしてアメリカは、韓国をバックアップする発言をしている。

3月11日、アメリカの安全保障を担当する、ドニロン大統領補佐官は「北朝鮮を核保有国として容認しない。…アメリカの政策は明確だ。我々はアメリカや同盟国に対する、北朝鮮の威嚇から防衛し対応するため、あらゆる能力を用いるだろう」と警告。北朝鮮が大量破壊兵器を使用もしくは、核兵器や核物質の移転を行った場合には、武力行使の検討に入ることを示唆した。

正に今は、米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」の待っただ中。武力行使もやろうとすれば容易にできる状況にある。だから、こんな時を選んで態々、北朝鮮が攻撃をしかけてくるとは考えにくい。

やはり、万が一、北朝鮮が攻撃を仕掛けるとすれば、「キー・リゾルブ」が終了する3月21日以降、或いは、「フォール・イーグル」が終わる4月末以降になると思われる。特に「フォール・イーグル」は、朝鮮半島有事を想定した訓練を行うもので、韓国軍約20万人と米軍約1万人が参加するとされるものだから、常識的には、終わるまで待つのが得策。



ただ、これまで何度も述べているように、金正恩は相手の裏をかいてくる癖があると筆者は見ているから、誰もがよもやと思うタイミングで仕掛けてくる可能性は捨てきれない。まぁ、それでも、例えば、4月末に「フォール・イーグル」が終了して、アメリカが撤退しても、北朝鮮は何もせずじっとしていて、皆が、「なんだ、いつもの口だけか」と油断したタイミングで仕掛けてくるのが一番高い可能性だとは思う。

その意味において、韓国は何よりもまず、アメリカとの関係を強化する必要がある。だけど、朴新政権はまだ満足に組閣すら出来ていない。

朴大統領は、韓国の次期国防相に金秉寛氏を指名しているのだけれど、金秉寛氏が韓国国会の指名承認公聴会で、北朝鮮からの砲撃には北朝鮮の政権を崩壊させることで対応する、と発言している。

金秉寛氏は、盧武鉉政権時に、米韓連合司令部副司令官を務めた退役軍人で、米韓の軍事関係に精通した人物とされる。

金秉寛氏は、ソウル大学化学工学科を中退後、陸軍士官学校に進学。首席で入学、卒業している。米韓連合司令部副司令官時代は、良好ではなかった米韓関係にもかかわらず、バーウェル・B・ベル韓米連合司令官(当時)との信頼関係を構築し、両国間の懸案に対処したとの評価を受けているようだ。

だけど、金秉寛氏は過去に軍需企業のロビイストを務めた経歴や脱税などの問題が指摘されていて、韓国野党は猛反発。正式承認には至っていない。

まぁ、金秉寛氏以外に、アメリカとの軍事連携をちゃんと取れる代わりの人がいれば、まだいいかもしれないけれど、そうでないのであれば、暫定でも何でもいいから、国防相に据えた方がいいだろう。政府窓口となる国防相が不在のままでは、先制攻撃を含めた政治判断にも支障がでる恐れがある。

半島での戦争は日本にとっても他人事ではない。在韓邦人の救出や、大量に出るであろう難民の扱い、物資の補給など、備えるべきことは沢山ある。安倍総理が、韓国との関係修復を急ぐのも、この辺りも関係しているのではないかと見る。

であるにも関わらず、韓国は反日ブーストをかまして、独走する。先日も国連で従軍慰安婦問題で、日本と応酬する一幕もあったようだけれど、まさか、イザ有事となったら、アメリカからの圧力で日本がいう事を聞かざるを得なくなるだろうと見越して、今のうちに強気にでておこう、なんて、阿漕な考えをしているとは言わないけれど、北朝鮮から攻撃されたら、金正恩政権を崩壊させると本気で思っているのであれば、それなりの外交はやってしかるべき。それがまた、北朝鮮への牽制にもなるのに、この期に及んで、韓国の態度は理解に苦しむ。




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この記事へのコメント

  • sdi

    当事者たる米韓両国はともかく、国際社会が今回の北朝鮮の「休戦破棄」をどの程度真
    剣に受け止めているか(まともに取り扱っているか)の目安のひとつが損保業界の動向ですね。釜山着もしくは釜山寄港の航路の船舶に対する保険の掛け金の動向(平時だけど
    掛け金増、戦地扱いなど)は、ひそかに世界中の注目の的になっているかもしれません。
    2015年08月10日 15:23

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