朝鮮半島に押し寄せる黒い雲
3月5日、朝鮮中央通信社は、朝鮮人民軍最高司令部報道官の発言として、米韓合同軍事演習などを非難した上で、「合同軍事演習を継続するなら、今月11日以降、韓国と1953年に締結した休戦協定を白紙にする」と宣言するとともに、「追加の対抗措置を連続して取る」と表明した。
更には「米帝が核兵器まで振り回し盾突き、傀儡が先制攻撃まで云々している以上、多様化された我々式精密核攻撃手段で応える。押せば発射され、浴びれば火の海になる。休戦協定の拘束を外れ、任意の時期、任意の対象に対して制限なく、思うままに精密攻撃を加え、祖国統一の大業を前倒しする」と挑発し、北朝鮮軍の板門店代表部の活動を中止し、米朝間の軍事電話も遮断すると通告した。
韓国と北朝鮮の休戦協定は、2010年11月、北朝鮮が黄海の南北境界水域に近い韓国の延坪島を砲撃したりしたことからも分かるように、事実上死文化しているのだけれど、今回のように、「全面白紙化」と宣言するのは初めてとみられている。
だけど、米韓両軍は、毎年定例で合同軍事演習を行っている。今回の演習もその一つ。既に、3月1日から4月末までの日程で、合同機動演習「フォール・イーグル」は開始されており、11日からは、別の合同演習「キー・リゾルブ」も始まることになっている。
「フォール・イーグル」は、朝鮮半島有事を想定した訓練で、陸海空の約20の訓練で構成され、期間中に韓国軍約20万人と米軍約1万人が参加する見込み。今回は兵力1万人規模の米韓合同上陸訓練も行われる予定なのだけれど、米原子力空母やF22、B52戦略爆撃機が加わる可能性があるようだ。
また、11日から21日にかけて行われる「キー・リゾルブ」も、毎年2月~3月にかけて実施されている軍事演習で、朝鮮半島内で実施される。これは、朝鮮半島有事の際の韓国防衛を目的とした指揮訓練で、北朝鮮との全面戦争のほか、工作員侵入などによる局地戦も想定しているという。したがって、実際の兵力の移動は伴わないとされる。
これに対して、北朝鮮も大規模な軍事訓練を準備しているという話がある。2月28日、韓国国防部のキム・ミンソク報道官は定例会見で、北朝鮮が来月初旬に大規模な国家級訓練を実施する可能性があるとみて、北朝鮮の軍事動向を監視していると明らかにしている。
国家級訓練とは、陸・海・空軍と特殊戦部隊が同時に行う全国レベルの訓練を指し、報道官は北朝鮮が今年の冬季訓練で砲兵訓練や特殊戦訓練、航空機の対地攻撃などを例年より強化したと伝えている。
そして、3月4日には、予測通り、韓国国防省が、北朝鮮が冬季の軍事訓練を国家レベルに格上げして、従来より大規模な訓練を準備しているとの見方を明らかにした。
また、北朝鮮専門サイト「デイリーNK」が北朝鮮軍の消息筋の話として、スカッドミサイルを改良した射程300キロから700キロとされる「ファソンミサイル」を搭載した車両が、北朝鮮東部のウォンサンに移動したと伝えている。
これまで北朝鮮は、韓国に新政権が発足すると、軍事挑発を仕掛けてきた。
例えば、金大中政権が発足した1998年に、弾道ミサイル「テポドン」を発射しているし、2008年に李明博政権が誕生するち、北朝鮮は長距離ミサイルを発射し、その後核実験を強行している。そして今は、丁度、朴政権が誕生したばかり。
また、北朝鮮軍は兵士に対し、「米韓の訓練終了の時期に合わせ、陣地占領と砲撃総合訓練を進める」との指示を出しているという噂まである。
韓国国防省によると、今の北朝鮮軍は訓練を活発化させているようだとし、警戒を強めている。
筆者は、これまでいくつか北朝鮮についてのエントリーをしたことがあるけれど、その中で、金正恩は人の裏をかく癖があるのではないか、と何度か述べたことがある。
先般、ミサイル発射の折にも、ミサイルの解体を始めてみせ、発射は中止か、と見せかけてから、 直ぐに発射したし、2月の核実験のときも、核実験の構えを見せていた豊渓里の核実験場から、人と装備がなくなり、片づけたのかと思いきや、ミサイルを発射している。
だから、こうした行動パタンから考えてみると、北朝鮮が何日と宣言した日はただのダミーであり、実際はその裏をかいてくるのではないか、と。
たとえば、北朝鮮は「今月11日以降、韓国と1953年に締結した休戦協定を白紙にする」と宣言しているけれど回りが、4月11日に何か仕掛けてくるのか、と38度線に注意を向けさせておいて、その直前の10日に、いきなり4度目の核実験と、ミサイル発射を同時にやるとか。或いは、韓国国内で何かの建物を爆破するテロを起こすとか。
特に、テロについていえば、「フォール・イーグル」といった、大規模軍事演習期間中に、ソウル市内の建物を爆破されたりしようものなら、韓国国内の防衛・警備体制が穴だらけであることを証明することになるし、また、同時に、アメリカが、北朝鮮の核施設やミサイルを空爆などで、先制攻撃する際には、北朝鮮のテロによる韓国国内の被害を考慮せざるを得なくなるから、多少なりとも、その決断を鈍らせる、又は作戦を変更させる効果も期待できる。
まぁ、現実に、いきなり"ドンパチ"なんて可能性は低いとは思うけれど、一応、何らかの動きはあると警戒はしたほうが良いかもしれない。
この記事へのコメント
白なまず
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130309/amr13030900030000-n1.htm
日比野
>良い読みしていると思います。インスピレーションによると、4月12日(旧暦3月3日)が要注意だと観ます。
御指摘いただいて、3月11日と書いた積りが4月11日になっていたことに気づきました。お詫びして訂正いたします。いずれにして3月11日という北朝鮮の指定は裏をかくための偽情報だと思いますので、仕掛けるのであれば、3月11日は外してくるとみます。
白なまずさんの見立てでは4月12日ですか。情勢次第では何があってもおかしくありませんよね。韓国の政権交代直後のこの時期は、やはりちょっと危ない感じを受けています。