動き出す日露首脳会談
2月5日、参院本会議で、安倍総理の施政方針演説などに対する代表質問が行われた。
1.ロシアへの公式訪問を明言
民主党の輿石氏が質問にたち、「ロシアのプーチン大統領は北方領土問題への取り組みに意欲を示し、日ロ両国が問題の解決に向けた構図を描くべき時期が、今まさに到来していると思うが、どのように考えているのか」と質したのだけれど、安倍総理は、「北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結できるよう、ロシアとの交渉を粘り強く行っていく。本年のしかるべき時期に、日本の総理大臣として、10年ぶりに、ロシアを公式訪問する予定で、日ロ関係の発展に、新たな弾みを与えるものとしたい」と答弁した。
北方四島の帰属確認と"平和条約の締結"というキーワードが2つも出てくるあたり、何やら水面下での交渉が進んでいることを匂わせる。
一説には、安倍総理の訪露は4月末から5月の大型連休頃ではないかとも言われているのだけれど、そうだとすると、ロシアとの調整も大詰めを迎えているかもしれない。
勿論、安倍政権とて、対露外交にむけての地ならしはしていた。安倍総理は今年2月に森元総理をロシアに派遣している。森氏は、プーチン大統領と会談したのだけれど、森氏とプーチン大統領との会談は10年振りで、今回で16回目を数える。会談時間は1時間13分で、これは現職の国家元首の実務訪問並の時間だそうで、ロシア側もきちんと森氏を遇したことが伺える。
会談は、日露首脳会談に向けての環境整備が目的だったのだけれど、会談に同席した、ウシャコフ大統領補佐官が、会談終了後、日本側同席者の上月豊久外務省欧州局長を追いかけ、「とても内容の濃い、意味ある意見交換だった」と述べたというから、相当突っ込んだ話がなされたようだ。
また、森氏も「信頼関係の土台を築く意味で貢献はできたのかなと思う」と振り返る一方で、「実はいい迷惑だった。今まで会ったときは大袈裟な話にならなかった」と漏らしている。これは裏を返せば、それだけ、「大袈裟な話」だったということであり、大きな動きがあるかも知れないことを暗示している。
その大きな動きの一つとして、北方領土問題があるのだけれど、プーチン大統領は去年3月に大統領再選のおり、一部の外国メディアと会見し、日ロ関係について経済など関係全体を発展させる中で、領土問題を最終的に解決したいと強い意欲を示した。プーチン大統領はその中で「我々は勝利を得ようとしてはならない。受け入れ可能な妥協策を探るべきだ。それは引き分けのようなものだ」と述べている。
この「引き分け」発言の意味を巡って、その後、日本国内でも議論が交わされたけれど、森氏は、今回の会談で、真意を探るという目的も持っていた。
2.「引き分け」の真意
会談で森氏はまず、北方領土問題で、歯舞・色丹の2島の引き渡しを明記した日ソ共同宣言の有効性を確認したのだけれど、「イルクーツク声明」が重要との認識で双方が一致している。
イルクーツク声明とは、2001年3月にイルクーツクで当時の森喜朗総理とプーチン大統領が会談した後に署名した文書のことで、1956年に調印された日ソ共同宣言が平和条約交渉の基本となる法的文書であることを確認し、1993年の東京宣言に基づいて、北方四島の帰属問題の解決に向けた交渉を促進することに両首脳が合意したことが明記されている。
つまり、イルクーツク声明を再確認できたことは、そのまま日ソ共同宣言の有効性の確認であり、北方四島の帰属問題の解決に向けた交渉を行なうという相応のスタートラインが確認できたということ。
森氏は、「領土問題の最終解決には日ロ両首脳の決断が必要だ」と語りかけ、プーチン大統領は「平和条約がないのは異常な事態だ」と答えた。
更に、森氏が「引き分け」の真意を問うたところ、プーチン大統領は「引き分けとは勝ち負けなしの解決。双方が受け入れ可能な解決の意味だ」と答え、自らペンをとって、紙に四角い柔道場の形を描いて「日本とロシアが場外に出そうな端のほうにいては、なかなか進まない。真ん中に戻さなければいけない」と答えている。
そこで森氏は、「引き分け」決着の具体策を、安倍総理とプーチン大統領が双方の外務省に検討するよう指示すべきだと主張し、「できれば1年以内か今年中にやったらどうか」と提案。プーチン大統領も「そうだな」と答えたという。
更に、プーチン大統領が極東地域の開発に意欲を示したことを受け、森氏は「日ロの政界、官界、学者みんな入れて極東地域を発展させる仕組みを委員会で考えてはどうか」と提案。プーチン大統領は「それはいい案だ。考える」とし、森氏に、日露首脳会談の際に結論を出すよう求めたという。
3.最後は政治決断
こうしたことから考えると、北方領土の返還と引き換えの、ロシア極東地域の開発のための経済技術協力又は何らかの条約の締結が視野に入っているのではないかと思われる。
というのも、会談後の森氏は、記者会見や会談翌日のモスクワ国際関係大学での講演でも、自身の言動に相当気を配り、同行した外務省の上月豊久欧州局長らに「これでいいか?」「これは言っちゃあいかんのか?」と常にお伺いを立てていたのだという。
そんな中、モスクワ国際関係大学での講演の質疑において、領土問題の具体的な解決策を尋ねられると、森氏は「政治はお互いに譲り合うことが大事だ。国境なんてだんだん低くなってくる。だから、あまりこだわることはない」と答えたそうだから、やはり、何らかの合意の下準備が出来ているのではないかと思う。
森氏は1月9日のBSフジの番組で、北方領土問題について「簡単に返すとは思わない。現実的なことを考えた方がいい」とし、択捉島と国後島の間に国境線を引く、つまり択捉島を除く3島返還で解決を図るべきという考えを述べている。
これが政府の考えと同じとは言わないけれど、1月10日に菅官房長官が記者会見で、「4島の帰属が確認されれば、実際の返還の時期は柔軟に対応していくのが政府の従来方針だ」と述べているから、森氏の意向というかアイデアはある程度政府も認識しているのだろう。
勿論、最終的にどうなるかは、安倍総理とプーチン大統領の両首脳の政治決断に掛かっているのだけれど、もしも、安倍総理の訪露によって、何らかの妥協があるにせよ、北方領土の返還を含んだ決着がなされるのなら、世界は、安倍政権は「話し合いが出来る政権」であると見るだろう。
今後の成り行きに注目したい。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
安倍晋三が4島返還以外で決着する筈はないので,
かつ, ロシアではそれに応じる状況ではないので,
領土問題で具体的な決着が付くことはないと思う.
安倍政権にとっての最重要問題は支那封じ込め.
森元首相の言うことは気にしない方が良い.
白なまず
【若き愛国ヒロイン我那覇真子 沖縄マスコミの実態 】
http://www.youtube.com/watch?v=MejRmMRb_Ig
sdi
択捉島と国後島の間の国後水道は水深が400m以上あり、アメリカのSSNも潜航したまま出入りが可能です。間宮海峡、宗谷海峡ともに最深部でも100mに足らないため潜航したままの潜水艦の侵入には不向きです。不可能ではありませんがかなり危ないですね。
北方4島をロシアが本気で返すかどうかは、この問題の処理方法をロシア側がどう提案してくるかが目安の一つかと思います。