環境汚染で自壊する中国

 
昨日のエントリーの続きです。

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1.日本の協力を拒む中国

2月27日、下村文部科学大臣は、中国の「環球報」の取材を受け、「東京都は北京市に大気汚染対策での協力意向を示している。日本政府も中国に力を貸す用意がある。日本には、大気質改善の経験と技術がある。四日市には大気汚染対策協議会があり、 これらの技術を中国に提供できる。これは日中両国にとって『ウィン・ウィン』だ。大気汚染は中国ばかりか、日本にとっても害だ。中国の大気汚染は3月末から4月初めにかけて日本に最大の被害をもたらすことが予想されており、中国とこの方面で早急に合意に達する必要がある」中国都市部の大気汚染対策への協力意向を示し、「これは日中にとっての『ウィン・ウィン』だ」と語った。

反日意識を煽り、日本に戦争を仕掛けてこようとしている国に対する環境技術の提供なんて、「敵に塩を送る」ようなことだとは思うけれど、日本も中国も空は繋がっているし、仕切りを作る訳にもいかない。現に日本がとばっちりを受ける形で、西日本を中心に環境基準を上回る汚染がちらほら見られるまでになった以上、ある程度の協力は仕方ないところ。

だけど、中国は日本の協力の申し出を拒んでいる。

3月2日、石原伸晃環境相は、徳島市での講演の中で、「環境問題が沖縄県・尖閣諸島でぎくしゃくしている日中関係を取り戻す『てこ』になると思ったが、良い返事がない。…欧米には研究者を派遣して先進国の経験を聞くと言うが、残念ながら腰が引けていて、日本に行くとは言ってくれなかった…正確なデータを中国がなかなか出さない。日本の安全基準の20~30倍の状態ではないか」と、中国が日本からの技術協力に難色を示していると明らかにした。

中国のこの態度は、面子に拘っているだけなのか、それとも、環境分野で協力関係を結ぶことで、折角、自分で国内を対日戦争に煽りに煽った効果が薄れることを恐れたのか、本当のところは分からない。




2.四日市の公害対策の歴史

下村文科相は、環球報の取材に対して、四日市の例を挙げていたけれど、四日市は公害ともう50年以上も闘った歴史がある。こちらに四日市のコンビナートの形成から公害の発生までの年表があるけれど、公害発生当初は、異臭魚が獲れたり、喘息患者が出たりしている。

公害が酷かったのは昭和30~40年代が中心だけれど、年表を見ていると、まるで今の中国を見ているかのよう。その意味では、公害に関する限り、中国は日本から40年以上は遅れている。

下村文科相は日本の技術と経験を提供できるというけれど、折角のその技術や経験とて、提供される側がそれを受け取るだけの力がないと意味がない。それは具体的に何かというと、金と法整備と人々の意識。

四日市は公害を防止するために、昭和46年から平成22年までの間に8回の公害防止計画を策定し、実施している。その概要は次のとおり。
1.第1期公害防止計画(昭和46年度一昭和52年度)
公害対策基本法第19条の規定に基づく四日市地域公害防止計画(四日市市、楠町、朝日町、川越町)は、昭和45年12月第1次地域として計画が策定され、昭和46年度から昭和52年度(昭和49年度に計画の見直しが行われた)まで、総額1500億円を越える事業費を費やし、各種公害防止事業を実施。

2.第2期公害防止計画(昭和53年度~昭和57年度)
第1期公害防止計画に引き続き、なお、光化学オキシダント、水質汚濁等について今後も公害防止対策を講ずる必要があるとして、昭和53年度から昭和57年度までの5カ年にわたる第2期公害防止計画により事業を実施。第2期公害防止計画事業費は、486億円と第1期公害防止計画事業費に比べ大幅に減少したものの、これは緊急的な公害防止対策が第1期に集中して実施されたことによる。

3.第3期公害防止計画(昭和58年度~昭和62年度)
第1期・第2期に引き続き、総合的な公害防止対策を講ずる必要があるとして、昭和58年度から昭和62年度までの5カ年計画を策定・推進。第3期公害防止計画事業は、産業公害防止対策の一層の推進を図るとともに、都市化の発展に伴い新たに起ってきた都市生活型公害の対策も含め、総額469億円を投入。

4.第4期公害防止計画(昭和63年度~平成2年度)
第4期公害防止計画は、引き続き残された課題に対処するため、昭和63年度~平成2年度を計画期間とし策定され、伊勢湾の水質汚濁対策、道路交通公害対策、地盤沈下対策等に総額812億円を投入した。

5.第5期公害防止計画(平成3年度~平成7年度)
第5期公害防止計画は、当地域の環境が改善の傾向にあるものの、なお道路交通公害対策、伊勢湾の水質汚濁対策等の課題が残されているとして、平成3年度から平成7年度までの5ケ年を計画策定期間として策定され、伊勢湾の水質汚濁対策、道路交通公害対策等に総額1984億円を投資。

6.第6期公害防止計画(平成8年度~平成12年度)
第6期公害防止計画は、公害の未然防止の徹底、生活環境の保全に努める必要のあることから、平成8年度から平成12年度までを計画期間として策定され、伊勢湾の水質汚濁対策、道路交通公害対策、ダイオキシン対策等に総額2063億円を投資。

7.第7期公害防止計画(平成13年度~平成17年度)
対象地域をこれまでの一市三町(四日市市、川越町、朝日町、旧楠町)から一市二町(四日市市、川越町、旧楠町)とし、平成13年度から平成17年度までを計画期間とした第7期公害防止計画を策定。都市地域の大気汚染の防止、主要幹線道路沿道の大気汚染と騒音の防止、伊勢湾水質汚濁対策、事業者及び住民参加による廃棄物・リサイクル対策に総額990億円を投入。

8.第8期公害防止計画(平成18年度~平成22年度)
対象地域をこれまでの一市二町から、四日市市のみとし、平成18年度から平成22年度までを計画期間とした第8期公害防止計画が策定。都市地域の大気汚染の防止、主要幹線道路沿道の大気汚染と騒音の防止、伊勢湾水質汚濁対策に総額1009億円を投入。
とまぁ、四日市は延々と公害防止計画を進め、10年程前から、公害対策対象地域が減り始め、5年前にようやく対象地域が四日市だけとなったという状況。公害防止計画がスタートした昭和46年といえば今から42年も昔。それほど昔から取組はじめて、ようやく対策地域が四日市市だけになった。ひとくちに公害対策をするといっても簡単な道のりじゃない。




3.タダでは環境は戻らない

対策は金もいれば、環境基準の決定から法案や条例の制定とその徹底、更に住民の協力なくして環境改善は進まない。

中国の環境部は、公害対策として、今年3月から19の省を重点的に「大気汚染防止地区」に指定し、ここに立地する火力発電所、鉄鋼業、石油化学工業、セメント業、金属加工業、化学工業といった「六大汚染産業」に対し制限値を設ける政策を進めようとしている。

とはいえ、いくら規制だけしてもそれで上手くいく保証はない。少なくとも、規制値を守るためには、その為の投資が要る。これまで安い人件費で世界の工場として我が物顔出来た企業とて、エコ投資は負担になっているという

勿論、中国政府或いは地方政府がその肩代わりをして環境対策費用を出すという手はある。だけど、折角環境対策設備を作ったとしても、企業がその稼働コストを嫌って、使わなければ意味がないし、政府役人への賄賂でお目こぼしして貰えるのなら、そっちが安くつくのであれば、そうしてしまうことだって有り得る。

それに投資といっても、今や絶賛バブル崩壊中の中国で、今後も環境対策に大規模投資できるのかは分からない。日本は、高度経済成長の時期とバブルの時期に、環境対策を進められたという好運があった。環境に出せる金があったし、個人も協力できる余裕があった。それで環境に対する意識改革も進んだ。

最近、中国のテレビ番組はしきりに「環境問題、責任の一端は個人にある」と言い出しているのだという。確かに、環境対策に、政府が金を出さない、企業もやる気がない、となると後は個人に責任を押し付けるしかない。

だけど、自分が都合が悪くなると、その原因を人のせいにする態度は、根本の解決とはならない。第一、中国人民がゴミを出さないような生活を始めたとしても、工場その他からの汚染物質そのものの排出も減らさないといけない。

北京では、2月9日から15日にかけての旧正月の連休中は、大気は比較的良好だったのに、連休が明け、企業が生産活動を徐々に再開させるに伴い、自動車の利用者が増え、有害物質を含んだ濃霧が再び広範囲に発生している。

だから、中国政府が汚染の責任を人民に押し付けるのであれば、人民は、自動車を止めて、昔のように自転車に乗り、汚染を垂れ流す工場で働くことは止めて、野菜でもつくってくらす生活を推奨しなければならなくなる。だけど、そんなことはもう不可能。

中国では、日本製の空気清浄器が爆発的に売れているという。人民レベルでは、国内製の空気清浄器より、日本製の方が空気を綺麗にしてくれると思っている。人民がそう思っているのに、中国政府が日本が差し伸べた手を払いのける。

ここまで大気汚染が酷くなると、今のままでいること自身が人民を苦しめる。政府が何もしないことが圧政と殆どイコールになってしまってる。だから、中国が人の棲めない大地になればなるほど、この矛盾を解消しなければならなくなる。何もしなければ、中国は自身の毒大気によって自壊していくことになる。




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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    グローバリズム支那には環境対策は不可能.
    何故なら, グローバル資本が逃げるから.

    日本が環境対策に成功したのは
    世界がローカリズムの時代だったから.
    グローバリズムの時代に民間が自ら
    環境対策をする訳がない.
    国内法が整備されてビジネスとなる.
    しかし, NAFTAを見れば分かるように,
    米国を含むFTAでは環境保全法案を
    企業に対するバリアと見る傾向がある.

    同様に, TPPに参加してしまうと
    環境整備法案を制定するのは不可能となる.
    新自由主義こそ地球環境を破壊する悪魔の思想.
    2015年08月10日 15:23
  • クマのプータロー

    環境技術は、ハードではなく、ソフトの面なら無償提供できますよね。
    ハードの技術を販売してもソフトがあってハードを維持運用し続けて初めて可能になる環境「改善」ですから、その前提にゆうに一世代分の「教育」の時間がかかることを教えてあげるのです。「根本」解決はミレニアムの問題です。
    簡単なことです。産業廃棄物の規制とその取り締まり、ゴミの分別等生活排水・廃棄物の取り扱いに関する徹底した教育、水を通じた生物のサイクルに関する知識の涵養、等々現在位置の中国の環境に関する問題を大見出しにして中国に提供すると称してメディアで配信することです。
    現在中国にいる日本人の駐在員やその家族がどんな仕打ちを受けるか解らないので躊躇はしますけどね。
    2015年08月10日 15:23

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