一昨日のエントリーから始まった、「配慮は必要か」シリーズ3部作も取りあえず今日で最後になります(笑)
1.安倍総理の「強制排除」発言
4月23日、参院予算委員会で安倍総理は、尖閣諸島に中国の漁民らが上陸した場合の対応について、「領海に入って上陸するといういかなる試みにも、断固たる対処をすると当局に指示している。…万が一、上陸するとなれば、強制排除するのは当然のことだ。…強制的な排除はしないかもしれないという姿勢は、結果として上陸を招いてしまい、両国間の紛争はエスカレートしていく。絶対に上陸させない強い決意で物理的に対応していくことが正しい」と発言した。
これは、自民党の丸山和也議員に対する答弁だったのだけれど、一昔前であれば、こんな発言をしようものなら、マスコミから袋叩きにあっていただろう。
だけど、安倍総理から、こういう発言が出てきた裏には、何らかの伏線があったのではないかと思っている。
先日、産経新聞は、今年2月、海自艦への中国がレーダー照射を行ったことは、中国政府の指示だったことが4月23日に分かったと報道した。
関係筋の情報によると、1月14日、中国共産党中央は軍事委員会に対して「日本を威嚇する方法はないか。…日本の出方を試す必要もある」と海自への威嚇について検討するよう指示を出した。これを受けて軍事委員会は、「海上であれば艦艇が日本の艦艇に射撃管制用レーダーを照射するか、火砲の砲身を向けることが考えられる」と回答、党中央はこれを認め、実施時期と場所、手順については艦艇の「艦長判断」に委ねる方針を示したという。
この決定は、党中央から軍事委、そして軍四総部の流れで決まっていったことから、関係筋は「照射も通常の指揮系統で決定された」と指摘している。要するに、中国が明確に敵対(威嚇)の意思を明らかにしていたということ。
産経新聞によると、これが明らかになったのが23日で、安倍総理の「強制排除」発言があったのも23日。おそらく、安倍総理も事前にこの情報を得ていたと思われるし、であるが故の「強制排除」発言だったではないかと思う。
つまり、安倍総理の発言は国内のみならず、対外的なメッセージの意味合いもあるだろうということ。
言うまでもないことだけれど、国家首脳の発言は非常に重い。それは国家意思の代弁でもあるのだから当然のこと。とりわけ、関係が悪化している関係であれば、尚のこと相手国首脳の言動には注意を払ってる。例えば、中国などは、先日の麻生副総理の靖国参拝について、自国の四川地震の特番を中断してまで放送したというから、どれほど、日本の動向を監視しているか分かろうというもの。
安倍総理の「強制排除」発言の意味はもちろん、中国も理解している筈。「そちらが武力を行使するのであれば、日本は"強い決意で物理的に対応する"」というメッセージとして受け取ったものと思われる。
だから、安倍総理は、中国政府の指示でレーダー照射を行ったという報道をバックに、中国にメッセージを発すると同時に、国民に対しても、現実を自覚せよと促しているように見える。
2.レーダー照射は中国政府の指示だった
レーダー照射の事実が発表された当時、その原因について、マスコミもあれこれコメンテーターなどに語らせていたけれど、「軍部の暴走説」も結構幅をきかせていたように記憶している。
だけど、産経新聞の報道が正しければ、その「軍部の暴走説」は否定されたことになる。
当時は情報も少なく、原因について、あれこれ憶測で報道することも致し方ないとは思うけれど、一端は、「軍部の暴走説」が公に報道されたことは事実であり、その部分ではマスコミは大衆を「ミスリード」してしまったことになる。
まぁ、些細な事件でのミスリードであればいざ知らず、一歩間違えば戦争になったかもしれない重大事件でのミスリードは、致命傷になることだってある。
レーダー照射が軍部の暴走ではなくて、中国政府がやらせたのなら、中国が明確に日本攻撃の意志を持っていることになる。この違いは天地ほども違う筈なのに、なぜ他のマスコミはこれを大々的に報道しないのか。
勿論、マスコミも人間の組織である以上、間違いを犯すことがあるのは仕方がない。だけど、だからといって、それで責任がなくなるわけじゃない。
特に、戦争に繋がりかねない事象の報道ともなれば、尚の事。もしかしたら、「あれは、コメンテーターが勝手にしゃべったことだから」なんて言い訳するかもしれないけれど、そんなコメンテーターを起用し、喋らせた編集責任はマスコミにもある。だから、あのときの発言は間違いだったと分かりました、となぜ修正報道しないのか。
中国に日本侵略の意思がある、と国民が知っているのと知らないのとでは、その対応に大きな差が出てくるはずなのに、その責任の重さを自覚しているのか。
マスコミのミスリードについては、経済評論家の渡邉哲也氏がロケットニュースに「壊れ行くメディア / ソースロンダリングと2つの矛盾」というコラムでその実例をいくつか挙げているけれど、マスコミは自らの過ちに対してもっと真摯になるべきではないかと思う。
国民に対する影響力を考えた場合、やはりマスコミはそれなりの大きな責任を負う。「表現の自由・報道の自由」を謳うのであれば、猶更それを自覚していなくちゃいけない。
もしも、マスコミが、そんな大きな責任なんて、背負えないというのであれば、その責任を、視聴する国民自身が負えるように、マスコミそのものを、リスクヘッジがかかるような体制にしておかなくちゃいけない。
例えば、マスコミ自ら、自分の報道スタンスは、「中国様を応援する立場です」とか「韓国の意向を汲んでます」とか、"報道の自由"を行使する基準を視聴者に示した上で報道するとか、全く別の見解を持つ識者らを一同に集めて討論させるとか、報道そのものに色分けをしっかりとして、互いに牽制させるような仕組みにするなどが考えられる。
色んな考える材料があり、また、色んな見解が並べられて初めて、視聴者は自分の責任において、判断することが可能になる。何処のチャンネルに合わせても、いつも同じ情報と同じ意見ばかりでは、視聴者は判断も何もあったものじゃない。いつぞや「番組が嫌な見なければいい」なんて嘯いた芸能人がいたように思うけれど、どの番組も同じことしか報道しないのであれば、見れる番組が無くなってしまう。
要するに、横並びの報道では、情報のリスクヘッジを利かせることが極めて難しくなるということ。
3.自らを聖域に置くマスコミ
仮に、マスコミの横並び体質を変えようとする場合、一番手っ取り早いのは、全く別の新しい血を入れること。規制緩和して外国メディアに放送権を与え、彼らの視点で自由に放送させれば、マスコミ界も相当変わるだろうと思われる。
今現在、それに近いものがあるとすれば、ニコ動なんかのネットメディアがそれにあたるのかもしれない。彼らはネットの特性を生かして、一切「編集カット」しないストリーミング放送や、ユーザーのコメントを吸い上げて、出演者にぶつけるといった双方向的なメディアとして、既存マスコミとは一線を画している部分がある。
例えば、TPPで、メディア規制が廃止され、外国メディアがバンバン入ってくるようになれば、これまでの横並び放送なんて、あっと言う間に瓦解する。国内メディアの報道や見解は、その他大勢の一つとなって、相対的影響力は小さくなる。ある程度以下にまで影響力が小さくなれば、例え、重大事件で「ミスリード」したとしても、被害は軽くすむだろう。
マスコミが自身の報道に責任を負えないというのであれば、マスコミそのものにリスクヘッジがかかるようにする他ない。
だけど、マスコミは、政治家や、国民に対して改革、改革と叫ぶくせに、自分に対しては、そうした改革はやろうとしない。それは、TPPにおいてもそう。彼らは、自分の業界をTPPの「聖域」にしている。
自民党は、TPP交渉参加に際して、6条件を掲げているけれど、その中の6番目に「政府調達・金融サービスなどは、わが国の特性を踏まえる」というのがある。これだけだと、金融サービスの話しかないのか、と思ってしまいがちなのだけれど、よく読むと、金融サービス"など"となっていて、実は金融サービス以外にもある。
では、その"など"の中に何があるのかというと、2月27日に自民党の外交・経済連携調査会が採択した「TPP交渉参加に関する決議」の文の中にそれが記載されている。その決議文の全文は次のとおり。
○TPPに関する自民調査会決議と、「政府調達・金融サービス業など」の中に、しっかりと「メディア」が記載され、「放送事業における外資規制、新聞・雑誌・書籍の再販制度や宅配についてはわが国の特性を踏まえること」とある。外資規制、再販制度、宅配について我が国の特性を踏まえるということは、要するに、今のままで変えるな、マスコミに"配慮"しろ、ということ。
1、先の日米首脳会談を受けて、依然としてTPP交渉参加に対して慎重な意見が党内に多く上がっている。
2、政府は、交渉参加をするかどうか判断するに当たり、自民党における議論をしっかり受け止めるべきである。
3、その際、守り抜くべき国益を認知し、その上で仮に交渉参加の判断を行う場合は、それらの国益をどう守っていくのか、明確な方針を示すべきである。
4、守り抜くべき国益は別紙(TPPに関して守り抜きべき国益)の通り確認する。
◇TPPに関して守り抜くべき国益
▼政権公約に記された6項目関連
(1)農林水産品における関税=コメ、麦、牛肉、乳製品、砂糖等の農林水産物の重要品目が、引き続き再生産可能となるよう除外または再協議の対象となること
(2)自動車等の安全基準、環境基準、数値目標等=自動車における排ガス規制、安全基準認証、税制、軽自動車優遇等のわが国固有の安全基準、環境基準等を損なわないこと、および自由貿易の理念に反する工業製品の数値目標は受け入れないこと
(3)国民皆保険、公的薬価制度=公的な医療給付範囲を維持すること。医療機関経営への営利企業参入、混合診療の全面解禁を許さないこと。公的薬価算定の仕組みを改悪しないこと
(4)食の安全安心の基準=残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組み換え食品の表示義務、輸入原材料の原産地表示、BSE(牛海綿状脳症)基準等において、食の安全安心が損なわれないこと
(5)ISD(投資者・国家訴訟制度)条項=国の主権を損なうISD条項は合意しないこと
(6)政府調達・金融サービス業=政府調達および、かんぽ、郵貯、共済等の金融サービス等の在り方についてはわが国の特性を踏まえること
▼医薬品の特許権、著作権等=薬事政策の阻害につながる医薬品の特許権の保護強化や国際収支の悪化につながる著作権の保護強化等については合意しないこと
▼事務所開設規制、資格相互承認等=弁護士の事務所開設規制、医師・看護師・介護福祉士・エンジニア・建築家・公認会計士・税理士等の資格制度についてわが国の特性を踏まえること
▼漁業補助金等=漁業補助金等における国の政策決定権を維持すること
▼メディア=放送事業における外資規制、新聞・雑誌・書籍の再販制度や宅配についてはわが国の特性を踏まえること
▼公営企業等と民間企業との競争条件=公営企業等と民間企業との競争条件については、JT・NTT・NHK・JRをはじめ、わが国の特性を踏まえること
マスコミは自身を聖域という安全地帯に置いている。
そうであるならば、やはり、マスコミは自身の報道について、しっかりと責任を持たなくちゃいけない。「ミスリード」をしたならば、それ相応の責任を取らなくちゃいけない。
もしも、彼らがそのような責を負うことを良しとしないのであれば、マスコミに配慮なんて必要ない。
この記事へのコメント
白なまず
出直せる大人が居ることに期待を込めて次の曲を贈ろう。
ONE OK ROCK - アンサイズニア
http://www.youtube.com/watch?v=51RQhjYzI1o
アンサイズニア和訳~(女子中学生訳だそうだ)
http://ameblo.jp/r-cirno/entry-11126868409.html
とおる
こんなマスコミに配慮は不要。