昨日のエントリーのつづきです。
1.首脳会談を拒否する中国
4月22日、自民党の高村副総裁は日中友好議員連盟会長として5月1~3日に予定していた北京訪問を中止すると発表した。
高村氏は、訪中で、習主席、李克強首相、李源潮国家副主席のいずれかとの会談を要請していたのだけれど、中国側は先週までに習主席と李首相について「難しい」と回答し、李副主席についても「地方出張で北京にいない」と連絡してきたことで、会談実現の見込みが無くなったことがその理由。
確かに、尖閣問題このかた、日中関係は良くないけれど、それだけの理由で会談もしないのは、大人気ないと思うのだけれど、中国の専門家によると、尖閣についての領土問題又は、「棚上げ論」の存在を認めるといった"成果"が得られない会談に、最高指導者を出すことはできないということらしい。
だけど、その割には、中国外務省の華報道官は、今回の日中友好議員連盟の訪中延期について、「その代表団の受け入れ先は外務省ではない」と無関係を装うあたり、自分の都合で不義理をしているという体面は取りたくないらしい。
23日、中国は8隻もの海洋監視船を領海侵犯させ、日本の保守系政治団体メンバーらを乗せた漁船を激しく追跡して挑発したけれど、海保の巡視船は見事な操舵でこれを阻止している。
中国としても、尖閣に五星紅旗を立てられない今のまま、ホイホイと日本との首脳会談に応じてしまうと、それを認めることになるとでも考えているのだろう。
以前、「天地人が逆流する中国」のエントリーで、中国は、天地人が逆流し、離れていっていると述べたけれど、この天地人で日中関係をみると、日本がやるべき方策が見えてくる。
2.日中関係の天地人
まず、日中関係における「天」とは何かというと、これはもう説明の必要がないくらい明らか。
中国では、先般も起きた四川の大地震や、PM2.5などの大気汚染や鳥インフルエンザの発生が起きているのに対して、日本は四川地震の救援支援や大気汚染対策の申し出をしている。これは、「天」が中国に対して「日本と和解して協力を仰げ」と命を発しているように思える。だけど、中国は、この「天の声」を一切聞かずに拒否している。
次に「地」とは何かというと、軍事および経済的優位の確立。軍事面では、中国は軍備を拡張し、周辺国にどんどん圧力をかけている。軍事費は拡大の一途。中国の2013年度予算案では、国防費が前年度実績比10.7%増となっている。
3月7日、自衛隊制服組トップの岩崎茂統合幕僚長は「過去20年以上増加させており、かなりの巨額を使って軍の増強や近代化、活動エリアの拡大を図っている。自衛隊はしっかりと軍事費の伸びを注視していかなければならない」と述べているけれど、日本はというと、国防費は減少を続け、2013年度予算案でほんの少し戻しただけ。法整備でも憲法9条以前に、96条を改正するかしないかで揉めているようなお寒い状況。今日本が侵略されないのは、アメリカと同盟を結んでいるからで、薄氷の上の安全であるのが現実。
経済面では、中国がバブル崩壊過程に入り、外資がどんどん逃げ出している状態に対して、日本は「アベノミクス」で復活を図る。こちらは日本が中国を追い上げている状況。
そして「人」は、同盟国や周辺国を自分の味方につけようとする外交ということになるのだけれど、日本にとっては、中国包囲網形成になるし、中国は中国で包囲網を作らせず、周辺国を自身の影響かにおく動きに相当する。
この部分については、安倍総理が就任直後からASEAN、アメリカ等活発に外遊して、中国がモタモタしている隙に、包囲網を形成する足がかりを作っていった。これは見事。
これに対して中国は、無論、包囲網に穴を開けようとしている。そのひとつとして、日本は右傾化している、包囲網は無意味だ、というプロパガンダをやっているけれど、昨今もうひとつの動きが出てきたように思う。それは北朝鮮を出汁に使っての日米同盟の離反。
3.北朝鮮を鉄砲玉にする中国
軍事挑発を続ける北朝鮮に対して、アメリカのオバマ政権は、軍事制裁ではなく、対話での解決を志向している。それはそれで解決するのであれば、血を流すことがなくなるのでよいのだけれど、両者の主張の隔たりが大きく、直接対話を行うことは難しい。
4月22日、アメリカ国務省は、中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表が訪米して、北朝鮮の核問題について意見を交換すると発表し、アメリカ国務省のバーンズ副長官も24日から25日にかけて訪中する予定だそうだけれど、アメリカは中国に仲介を頼んで、対話のテーブルを構築しようとしているように見える。
この時、中国がアメリカに対して、北朝鮮を対話のテーブルに着かせる見返りに、尖閣を棚上げ、または日本との共同統治にするように、バーター取引を持ちかけたとしたらどうするのか。或いは、アメリカ軍は沖縄や東アジアから出ていくようにと、もっと吹っかける可能性だってある。
アメリカのケリー国務長官が北京訪問した数日後、中国国防省が、アメリカのアジア・太平洋地域での軍事駐留の強化により、緊張が拡大しているとしてアメリカを非難しているし、A2/AD戦略をみても分かるとおり、中国は、本音ではアメリカを東アジアから叩き出したいと思っている。
そして、北朝鮮の関係筋は、今月中旬の時点で、北朝鮮が中国との対話を受け入れる考えを示していたことを明らかにしているから、水面下ではそれなりに話が進んでいるものと思われる。
だから、ある日突然、アメリカが「尖閣の"領土問題"には介入しない」だとか「尖閣の日中共同管理」なんかを提案してきたら、非常にヤバい。裏で取引が成立している可能性も考えなくちゃいけない。
その意味では、日本にとっての「人の和」、とりわけ、アメリカとの信頼関係および連携がとても大事になる。
これも、元はといえば、日本の国防体制がなってないというのが根本にあり、極端な話、北朝鮮がアメリカに向けてミサイルを発射しようとしても、片っ端から撃ち落とせるか、又はミサイル基地を全部空爆・破壊できるだけの軍事力をもっていれば、アメリカが北朝鮮に妥協する必要なんてはなくなってしまう。
まぁ、日本がアメリカ並みに軍事力を持つなんてのは非現実的な話ではあるけれど、根本的には、日本の憲法の制約を含めた国防力の弱さが、今の危機を呼び込んでいることは知っておくべきだろう。
このように、天地人で、日中関係をみると、日本が味方につけているのは「天」だけで、「地」と「人」については、まだまだ不十分であることが分かる。
だけど「天」は、何時までも味方してくれるかどうか分からないし、「地」も今日明日で体制が整うわけでもない。比較的短期間で構築できそうなのは、残る「人」しかない。今は、日米同盟を基軸にして周辺国をがっちり固めつつ「地」を整備していくしかない。
中国が、日本の四川地震の救援支援や大気汚染対策の申し出を断り、首脳会談も拒否している以上、最早、日本が配慮を云々できる段階ではなくなっている。
だけど、たとえ中国に配慮は必要でなかったとしても、周辺国や同盟国への配慮は十二分にしておく必要がある。残された時間は非常に少ない。
この記事へのコメント
opera
http://blog.livedoor.jp/zzcj/archives/51820388.html
また、日本の国防体制がなっていないのは確かですが、日本クラスの国家が急激に国防力を強化する場合、仮に正しくとも国際的評価に充分配慮しなければなりませんが、中国・北朝鮮が挑発行為を繰り返す現在の状況は、その絶好の機会を提供しているとみることもできます。
>ある日突然、アメリカが「尖閣の"領土問題"には介入しない」だとか「尖閣の日中共同管理」なんかを提案してきたら、…
たぶん、これは無いと思います。なぜなら、現在の尖閣領有(もともとの領有宣言は別)の直接的な根拠は、沖縄返還協定にあるからです。この意味で、アメリカは第三者ではなく当事者そのものですから、上記のような発言をしたら、その途端にアメリカの威信は地に落ちてしまうでしょう。
ただ、アメリカはかつての六カ国会議
白なまず
【安倍外交GJ】 日本とかいう要塞不沈空母www新たに大国とシーレーン防衛で安全保障対話!!
http://crx7601.com/archives/27135971.html
とおる
中国側から「習近平と会談したいなら、手土産を出すように」と言われたので、出すべき手土産(尖閣諸島には領土問題が存在する)を出せないので、日本側が中止を決定したという話があります。
・〔動画追加〕青山繁晴さんの解説をどうぞ『中韓との対立は靖国参拝の影響ではない』 (130424)
http://blog.goo.ne.jp/moja_gd/e/8b13b32ab3d0dd1d94a6a1bdc896d4c0