ボストン爆弾テロ続報

 
ボストン爆弾事件の続報エントリーです。

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4月19日、ボストンの警察当局は、ボストン・マラソン爆弾事件で容疑者2人の居場所を特定し、ボストン郊外のウォータータウン地区で銃撃戦の末、1人を拘束し、1人が逃走したことを明らかにした。

容疑者については、18日に、FBIが「公開捜査に入る」として、防犯カメラなどに残された複数の写真・ビデオを分析した結果、2人組の容疑者を割り出し、その画像および映像を公開していた。

公開された映像での2人の容疑者のうち一人は、黒い帽子、黒いパー カーに黒っぽいリュックを背負っていて、もう一人は白い帽子を後ろ前にかぶって右肩に白いリュックを掛けていた。また、公開されていない映像だけど、白い帽子の男が、2回目の爆発があったレストランの前にリュックを置いたところが確認されているそうだ。

FBIらは、容疑者らがリュックサックなどに爆発物を入れて現場に運んだとみていて、通話記録の解析から身元を特定していたようだ。

CNNの報道によると、容疑者はロシアのコーカサス地方出身で、26歳のタメルラン・ツァルナエフ容疑者と19歳のジョハール・ツァルナエフ容疑者の兄弟。カザフスタンに移った後、数年前にアメリカに渡ったとし、兄のタメルラン容疑者は、インターネットに、「アメリカに友人は一人もいない。彼らのことは理解できない」などと、アメリカ社会に溶け込めない様子を書き込んでいたと報じている。

ただ、容疑者兄弟については、中央アジアのキルギス共和国出身のチェチェン人との報道もあり、情報は依然錯綜している。また、ネット上のロシア交流サイトでは、弟のジョハールものとみられるアカウントがあり、「人生で大切なこと」の欄に、「キャリアと金」、「世界観」はイスラム教とも記載されていて、また、英語とロシア語、チェチェン語を話し、ロシア南部ダゲスタン共和国の首都マハチカラの学校に通っていたと記されているという。

今回の銃撃戦で死亡したのは、兄のタメルラン容疑者の方で、2人は、警察官1人を射殺したあと、乗用車を強奪し逃走を試みた際に、弟が乗り遅れた兄を謝って轢いてしまい、その後の警官隊との銃撃戦で、兄は、身体に巻き付けていた爆薬に弾丸が当たり負傷、拘束された。負傷の兄は、病院に搬送されたのだけれど、病院で死亡している。

弟の容疑者の爆発物を投げるなどして、そのまま逃走。警察は、ボストン一帯の公共交通機関の運行を停止させるとともに、住民に対して屋内にとどまるよう呼びかけている。

このように、ボストンが非常事態体制に入り、容疑者まで特定されている段階では、逃亡したとされる弟の容疑者の方も遠からず拘束されると思う。

一部には、ボストン郊外のウォータータウン地区の住宅街で、警察が白い住宅を包囲しているとの報道もあり、或いは容疑者は住宅内で籠城しているかもしれない。



捜査当局は容疑者の背景について、国際テロ組織との関連も含めて捜査しているようなのだけれど、防犯カメラに顔を晒していたり、携帯を使って、足がついたりしているところなんかをみると、あまりプロっぽくない。

作家の佐藤優氏は、今回の事件について、チェチェンの独立や民族運動の方向でみると合理的な説明がつかないことから、ネットをみているうちに目覚めてしまった、いわゆる自然発生的に出てきた「小規模テロリスト」の可能性があると指摘している。

だから、今回の事件は、単なる素人の単独犯で片づけられる可能性が出て来たし、仮に、背後に黒幕なんかがいたとしても、"鉄砲玉"といってはアレだけれど、いい塩梅に操られてしまったケースになるのではないかと思う。つまり、黒幕まで暴くのは難しいのではないかということ。まぁ、背後関係を適当に"捏造"すれば別だけれど…。

ただ、この事件に関しては、今後、これを上手く利用したいと動き出す、勢力なり国なりが出てくる可能性はある。例えば、中国などがそう。

17日、環球時報は「オバマ政権は2011年のビン・ラディン射殺によって対テロ戦争は大きな成果を得たとして、アジア回帰を優先させてきた。米国はテロに対する警戒を解いてはいないが、国民の警戒心は薄れていた。…今回のテロ事件は国家の安全に対する米国民の見方を一瞬で変えてしまった。米国の国家戦略に新たな調整が見られるかどうか、世界が注目している」とし、また、解放軍報も、社説で「大きな原因として、米国が対テロ戦略を休止し、ビン・ラディンの肉体的消滅を勝利の証としたことが、国際的な反テロ協力を弱体化させた」と報じている。

更には、上海社会科学院国際関係研究所の李開盛氏は「爆破テロによって、テロリズムこそが米国の戦略と安全に対する最大の敵であることが改めて明らかになった。…アジア回帰戦略は中国を主要なライバルとみなすものであり、爆破事件はオバマ大統領の政策を直接的に否定するものとなった」と評し、評論家の蔡堅氏は、「オバマ大統領は中国封じ込めにやっきになり、テロ対策の手を緩めた結果、テロリストにつけこまれてしまった。後悔先に立たずで、ある程度は反省しているはず。多少なりともアジア戦略の実施が性急すぎたのではないかと疑っているだろう」と語っている。

こうも矢継ぎ早やに、アメリカの軍事力の東アジアシフトが問題であるというところをみると、中国は、アメリカに封じ込めされることを、相当嫌がっているようだ。故に、この事件さえも、自身のA2/AD戦略に利用してくるかもしれない。

また、組織ではないけれど、ユーチューブには、連続爆破事件を「祝福する」と語る不謹慎な動画がアップされ、一部で騒ぎになっているけれど、アップ主の過去の言動等から、「韓国人によるなりすまし」説が飛び出しているようだ。

更に、ここ数日、大人しかった北朝鮮も、18日、朝鮮中央通信を通じて、朝鮮半島情勢の緊張は「米帝の狂気じみた核戦争演習騒動」が原因とし、「敵のすべてを一気に灰塵につくってしまう無慈悲な戦争になるであろう」とする、"無慈悲"恫喝シリーズをまた言い始めているけれど、オバマ政権の対話提案路線と、容疑者特定報道によって、自分達が攻撃される恐れが無くなったと見たのかもしれない。

こうしてみると、ひとつの爆破事件であっても、それに対するアメリカ政府の反応や、その一挙手一投足に、世界が敏感に感応しているように見える。

だから、今後の展開を考えると、これを単なる"テロ事件"として片づけたとしても、これを切っ掛けとして、世界は大きく変化してしまっているかもしれない。




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