天地人が逆流する中国

 
今日は、この話題です。

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1.反日暴動被告に実刑判決

中国広東省珠海市香洲区の裁判所は、去年の反日暴動で、日本車計12台を破壊するなどした中国人の3被告に対し、騒動挑発罪で懲役7~11ヶ月の有罪判決を言い渡したと、中国メディアが7日までに伝えた。

被告らは、昨年の9月16日深夜から翌17日未明にかけて、酒を飲みながらテレビを見ていた際、全国で反日デモが起こっていることを知り、酔った勢いで2台のバイクに乗り、路上に停車していた日本車に石を投げて窓ガラスを割ったり、車体を傷つけたりするなど破壊行為を繰り返した。3被告は罪を認め「国家の法律に触れるとは思っていなかった。…車を破壊することが所有者の合法的な財産を損なうことであり、愛国感情は理性的に伝えなければならないと分かった」と述べたという。

実刑判決を受けて初めて、そんなことに気づくなんて、一体どんな教育をしているのかと思うのだけれど、有罪判決が出た事例はこれが初めてじゃない。

今年1月16日、江蘇省無錫市江陰市の2人の若者が、愛国という名のもとに他人の日本車を破壊した罪で有罪判決を受けている。

彼らは、2012年9月18日夜、愛国だから捕まっても大したことにならないと、落ちていた竹で、止めてあった日本車を打ち、脚で蹴るなど、人民警察が現場に到着する迄に計13台の日本車を壊した。

被害額は、約4万元(約64万円)で、江陰市人民法院は、器物損壊罪で、一人を懲役3年9カ月、もう一人を懲役3年の実刑判決をそれぞれ下している。

これら2つの判決を見る限り、"愛国無罪"ではないということになるのだけれど、同じ様に日本車を破壊しているにも関わらず、片方は一年足らずの懲役で、もう一方は懲役3年超とかなり差がある。尤も、罪状が、騒動挑発罪に器物損壊罪とそれぞれ違うから、懲役も違うといえばそれまでなのだけれど、どこにその基準が置かれているかよく分からない。

だけど、あれだけの反日暴動と破壊があったのだから、有罪に相当する被告がこれだけとは思えない。
今後もぽろぽろ出てくるのではないかと思うし、それ以前に、単に日本のマスコミがたまたまこれを伝えただけかもしれない。

ただ、ひとつ気になることがあるとすると、何故、反日暴動の被告の実刑判決を、日本のメディアがこのタイミングで報道したのかということ。




2.日本と関係改善したい中国

まぁ、これは多分に穿った見方かもしれないけれど、これらの2つの実刑判決が報道されたタイミングは、何故か、日中両国の会談時期と非常に近い。

例えば、1月16日の実刑判決の10日後に当たる、1月26日には、公明党の山口代表と習近平総書記と会談しているし、4月7日の実刑判決当日には、中国海南省のボアオで行われている「博鰲アジアフォーラム(Boao Forum for Asia)」を訪れている福田康夫元首相が習近平国家主席と会談している。

そんなの単なる偶然にしか過ぎないと言われればそれまでだけど、これも見方によっては、中国からの関係改善の為の雰囲気づくり、あるいはサインだと見えなくもない。

福田・習会談では双方とも、日中関係への言及はなかったと報道されている。だけど、会談は福田氏・習氏の一対一ではなくて、日米欧などの財界トップ約30人との会談で、博鰲アジアフォーラムの理事長である福田氏が同席する形だったようだ。そんな場では、日中関係といった個別の問題を口にはしないのが普通だろう。

ただ、その一方で、会談当日に、反日暴動の被告に対して実刑判決を出している事実がある。だから、たとえ会談では日中関係に対する言及がなかったとしても、中国が実刑判決という形で、日中関係に言及したと受け取ることも出来るといえばできる。

福田元総理は会談後、記者団に、日中関係について「なんとかしなくてはいけないという気持ちは、双方、持っているのではないか。…首脳同士の信頼関係をどうやって高めていくかだ。専門家に任すべきだ」と述べているけれど、あるいは、何らかの形で、中国側から関係改善したいサインを受け取ったのかもしれない。

この辺りについて、日本の各マスコミ記事の見出しをみると面白い。次にいくつか並べてみる。
琉球新報「習・福田会談 関係改善の努力加速を」(社説)
共同通信「福田元首相、習主席と会談 日中関係改善へ前進」
朝日新聞「福田元首相、習主席と会談 日中関係には触れず」
MSN産経 「福田元首相が習氏と会談、日中関係へ言及なし」
読売新聞「福田元首相、習主席と会談…日中関係直接触れず」
日経新聞「習主席と福田元首相会談 日中関係に直接触れず」
時事通信「福田元首相と習主席が会談=日中関係は話題に出ず」
毎日新聞「福田元首相:習近平主席と会談 日中関係で意見交換なし」
殆どのマスコミが、会談の事実と、日中関係へ言及しなかったことを伝える中、琉球新報と共同通信は「関係改善」という表現を使っている。

まぁ、琉球新報の記事については社説だから、琉球新報の"願望"が出ただけだとは思うけれど、共同通信は、見出しで「日中関係改善へ前進」としている。だけど、その共同通信の記事の中身は、単に会談したことをもって"前進したといえる"、としただけで、何か特別な情報を報道しているわけじゃない。だから、その意味では、ミスリードとは言わないまでも、多少"願望"が混じった「見出し」だと言える。

ただ、それに呼応してかどうかは分からないけれど、今月中旬からゴールデンウイークにかけて、自民党のOBや大物議員が訪中する計画があることはある。

河野洋平元衆院議長は今月14日から20日の日程で、日本国際貿易促進協会の会長として中国各地を訪問。15、16日には、北京で習氏ら政府首脳との会談を実現するよう要請している。また、今月28~29日には、二階俊博総務会長代行が北京を訪問する。

そして、来月、5月上旬には、自民党の高村副総裁が、日中友好議員連盟による訪中団の一員として北京を訪問し、習近平国家主席と会談する方向で調整しているというから、形の上では、"関係改善"方向に動いているように思われる。

ただ、それが首脳会談にまで漕ぎ着けるかどうかについては、もう少し時間がかかるかもしれない。これまで、毎年春には、日中韓首脳会談が開かれているのだけれど、日本政府はその機会に日中首脳会談が実現できないか模索しているという。

だけど、外務省によると、中国側は局次長級の実務者協議には応じる返事をしただけで、首脳会談についてはいつまでも返事をしない状態なのだそうだ。

筆者はこれまで何度も述べているけれど、日本としては、対話の扉を開けているポーズだけを取っていればよく、中国が反応しないならしないで、その間にせっせと中国包囲網を固めていけばいい。

日本から議員が訪中するという事実は、日本が対話の扉を開けているポーズとして十分。あとは中国次第。





3.逆流する天地人

昨日のエントリー「日本復活の条件」では、日本は復活のための天地人が揃いつつあると述べたけれど、中国は逆に、その天地人が逆流し、離れていっているように見える。

まず中国の「天の時」を見ると、絶賛バブル崩壊中。昨年11月には上海総合指数は一時2000を割り込み、今は少し回復したとはいえ、2013年4月現在は2200そこそこ。2007年秋には、6000を超えていたことを考えると見る影もない。

事実、先の「博鰲アジアフォーラム」で講演した習近平主席自身が「われわれは超高度経済成長を持続させるのは不可能だと考えているし、それを望んでもいない」と述べている。
※但し「比較的高度の成長を持続することは可能だ。…中国経済は良好」との発言もしている。

それどころか、これから更なる崩壊が危惧されている。

スタンダードチャータードの昨年11月のリポートによれば、2003年3月にはGDP比150%だった政府や企業、消費者の債務は206%に達しているそうで、スタンダードチャータードのスティーブン・グリーン氏らエコノミストは、中国の借り手が一部の新規融資を「不良債権を隠す」ために活用し、地下銀行などのいわゆる影の金融が大きくなり過ぎたと指摘していて、不良債権比率12%で銀行業界の資本7兆5000億元(約105兆円)が消失すると試算している。

また、国際通貨基金(IMF)は昨年10月発表の金融安定化報告で、中国信託会社の融資の相当部分が地方政府の資金調達を担う機関や銀行融資にアクセスできない不動産会社など、リスクの高い組織に集中していると警告している。

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更に、アメリカの格付け大手フィッチ・レーティングスは、中国国内で昨年販売された資産管理商品は、その投資対象について殆ど説明されていないにも関わらず、前年比48%増と大幅に伸び13兆元に達したと伝えているのだけれど、中国銀行の肖鋼会長は、英字紙チャイナデーリーの論評で、こうした商品について「基本的にはねずみ講。…地下銀行による資産管理商品は質や透明性で特に懸念すべき材料であり、今後数年間、地下銀行はシステミックリスクの潜在的脅威」と指摘している。

正に、「天の時」は中国の経済的苦境を告げている。

次に「地の利」についてだけれど、元々、中国の「地の利」とは、人口の多さと人件費の安さに尽きる。それが故に、世界の工場として、世界中から投資を呼び込むことができた。だけど、近年の中国における人件費の高騰で、その海外投資が細り、周辺のASEAN諸国にシフトしている現状がある。そして、昨年の反日暴動で、最後まで投資を拡大してくれていた日本さえも逃げ出すようになってしまった。

最近では、それに追い打ちを掛けるように、重度の大気汚染に、水質汚染、更に鳥インフルエンザと、もう逃げ出せと言わんばかり。中国は自らの手で、その「地の利」を失おうとしている。

そして、「人の和」も悪化の一途。昨今の覇権拡張主義は、対日関係はもとより、周辺国との関係を悪化させた。国内は暴動が頻発。一説には、1日平均500件、年間に18万件の暴動が起きているとも言われている。とても、「人の和」があるとは思えない。

つまり、中国は「天地人」すべてにおいて、それを得るどころか、逆流し、それを手放しつつあると言える。

中国には古来より「天は己に成り代わって王朝に地上を治めさせるが、徳を失った現在の王朝に天が見切りをつけたとき、天命を革める」という考えがある。これは、孟子らの儒教に基づく五行思想などから王朝の交代を説明した理論で、王朝交代の際には王室の姓が変わることから「易姓革命」と呼ばれている。

今の中国の状況を見ると、もう、天は中国に見切りをつけ始めているように思えてならない。




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この記事へのコメント

  • sdi

    追記
    どっかで見たことあるようなことがここに書いてある。
    其の点、笑えるね。

    人民網日本語版:日本政府の円安政策 中韓は傍観すべきではない (2)
    http://j.people.com.cn/94476/206575/8194317.html
    2015年08月10日 15:23

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