自爆する中国
強気の中国ですけれども、果たして…
1.増大するチャイナリスク
フジサンケイビジネスアイは昨年11月下旬から12月上旬にかけて、主要企業123社に対し、今後の有望市場に関するアンケートを行った。
アンケートでは、市場や生産拠点として、今後3年間で有望視している国を複数回答で聞いたところ、中国とインドネシアがそれぞれ最多の53社。そして、タイが52社とほぼ同水準。続いて、ベトナムの48社、ミャンマーの32社という結果となった。
2011年末に実施した同じ調査では、中国が65社で最多となったのに対し、ASEAN諸国はインドネシアが41社、ベトナム37社、フィリピンが11社であったことを考えると、たった一年で、中国からASEAN各国に注目する企業が急増しているという変化が伺える。
勿論、これには、昨年夏の中国本土での反日暴動が影響している。
今回のアンケートでも、日中関係の悪化が業績に影響しているかを質問しているのだけれど、業務・業績に「マイナスの影響があった」とする回答の割合は計47%となり、「影響なし」とした割合を8ポイント上回っている。特に、中国事業を拡大してきた自動車や電機では「大きなマイナスの影響があった」との回答が多かったとしている。
そして、中国リスクへの対応策については、中国以外での事業強化をあげた企業が30社にも上り、それ以外にも、「中国での投資をより慎重に判断」とか、「旅客減少を見据えた機材のダウンサイジング」など、収益減を前提とした動きも出ているようだ。
実際、今年1から2月の日本の対中投資は前年同期比で6.7%減少し、日本の中小企業は、中国国内の人件費高騰とも相まって、工場を中国から移転する動きを強めている。
浴衣・着物製造の東京印はミャンマーに縫製工場を設立し、13年秋稼動する予定だし、テントメーカー、太陽工業はカンボジアで物流包装材料を生産する計画。プノンペン郊外の工業パークで工場を設立し、11月に操業を開始する一方で、中国での委託加工を段階的にカットし、最終的にすべてをカンボジアに移転させるという。
そんな中、中国国内の論調も微妙に変化してきている。
昨年の反日暴動当初、中国は 「中国市場に依存しているのは、むしろ日本経済だ、中国人が、日本製品をボイコットすれば、日本経済はガタガタになる」なんて論調を出して、息巻いていたけれど、最近では、逆にダメージを受けるのは中国の方だ、なんて声も上がりだしている。
産経新聞上海支局長の河崎真澄氏は3月31日付の「反日デモから半年…メディアの論調に変化 対日強硬論でダメージは中国に?」という記事で、反日デモから半年の間に、中国メディアの対日論調が10段階の変化を見せていると述べている。
確かに、この記事での指摘のとおり、中国は微妙に振り上げた拳の収めどころを探りつつ、対日関係を動かそうとしているように見える。
2.自爆する中国
また、それに加えて、この河崎氏の記事の"第9段階"でも触れられているけれど、深刻化する中国の大気汚染も、対日関係改善を模索せざるを得なくなるように追い込んでいる一面があるのではないかと思う。
先頃、中国人民大学環境学院などは、国内281都市を調査した報告書を発表している。それによると、国や自治体などが公表した2005~2010年のデータに基づいて、汚染の原因となる直径10マイクロメートル以下の粒子状物質「PM10」や二酸化硫黄、二酸化窒素の数値を分析し、空気の質が「悪い」「極めて悪い」都市が9割近くに達した
と報告している。報告書では、「社会の経済発展が進む一方で大気汚染の防止策は遅れている」と指摘。環境対策が後手に回っていると断じた。
更に、3月31日、中国の第一財経が運営するウェブサイト「一財網」は、2010年に中国で亡くなった人のうち、14.9%にあたる123万4000人が、PM2.5が原因で亡くなったとする最新の研究発表について報じているし、環境NGO「グリーンピース」北京事務所は、昨年12月に、北京、上海、広州、西安で循環・呼吸器の疾患で死亡した人数から推測した結果、「12年にPM2.5に関連して死亡した人は8572人に上り、経済損失は68億元(約1020億円)に達する」との調査結果をまとめている。
つまり、大気汚染が経済損失を引き起こしているわけで、こればかりは、どんなに「反日デモ」をやったところで全く解決しない。それどころか、環境対策に関する高い技術を持っているのが当の日本と来ている。実際、民間の中国人は、日本製の空気清浄器をバカスカ買っているのだから、彼ら自身、それをよく知っている。
口では反日を叫びながら、体は親日でないと、命が危ない。そうした状況に中国人は置かれている。しかも、経済面でみても、反日暴動を起こして、日本が泣きついてくるかと思っていたら、先に自分のところの経済が揺らぎだした。そして、PM2.5では、逆に自分達が日本に泣きつかないと、二進も三進もいかないと来てる。
泣きっ面に蜂というか、自業自得というか、自分で自分の首を締める結果となりつつある。
流石に、中国政府は、危機感を強めているようで、当初は、日本からの協力を撥ね付けていた態度を変え、環境保護省や全人代の幹部を4月に日本に派遣することを検討しているという。
更に、今月6日~8日に、中国・海南島で開かれるアジアなどの政財界代表による「ボアオ・アジアフォーラム」において、日本の福田康夫元首相が、中国の習近平国家主席と会談する方向で調整していることが報道されているけれど、中国としても、そろそろ対日関係を改善したいという思惑もあるかもしれない。
筆者は以前、「習の逝かざる いかにすべき」のエントリーで、中国との対話のチャンネルは開けているというポーズを取りながら、時間を稼ぎ、その間に中国包囲網を進めて、有利な立場を固めてから首脳会談をやればいい、と述べたことがあるけれど、安倍総理は、この間にも、モンゴルへ飛んで、また一歩布石を打っている。
まぁ、福田元総理と習国家主席との会談から、安倍総理までの首脳会談まで、あとどれくらい時間がかかるのか分からないけれど、今の安倍外交ペースでいけば、夏ごろまでには相当な部分まで足固めができているのではないかと思っている。
この記事へのコメント
sdi
「自分の利益は自分で守れ」
↓
「損害を受けるものが、その損害を自分で防げばいいだろ?」
というロジックになってないですかね。今の中国社会。
例えば、中国の大気汚染が日本に飛び火してきていますが、中国人はこんな風に考えてませんかね。
「俺たちの大気汚染が日本に影響を与えてあんたらが困ってるのはわかった。そんなに困ってるのなら、あんた達が自分で始末すればいいだろ?俺たちはそんなに困ってない」
こんな国とFT結んで委員ですかね?というか、こんな国が純粋に経済目的だけでFTAなんて結びますかね?TPPと日中韓FTAの二者択一を迫られたら、私はTPPを支持します。