暴走する北朝鮮と黒幕の野望

 
北朝鮮の挑発がエスカレートしている。

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1.暴走する北朝鮮

3月26日、北朝鮮の朝鮮人民軍最高司令部は、国営朝鮮中央通信を通じて、声明文を発表した。それによると、「米本土とハワイ、グアム島をはじめ太平洋軍作戦戦域内の米帝侵略軍基地と南朝鮮とその周辺地域のすべての敵の対象物を打撃することになっている戦略ロケット軍部隊と長距離砲兵部隊を含むすべての野戦砲兵軍集団を1号戦闘勤務態勢に進入させることになる」と述べ、部隊を「1号戦闘勤務態勢」にするとしている。

ただこの、「1号戦闘勤務態勢」なるものは、初めて使われる言葉で、具体的な意味は不明なのだけれど、29日には、北朝鮮軍のミグ21戦闘機1機が朝鮮半島西部の南北軍事境界線の20キロ手前まで南下し、韓国空軍の戦闘機出動を受け、引き返している。

また、同じく29日未明に金正恩は、戦略ロケット軍の作戦会議を緊急招集し、任意の時刻にアメリカ本土や韓国にある米軍基地などを攻撃できるよう「射撃待機の体勢」に入るよう指示したうえで、攻撃計画書にも最終署名したと朝鮮中央通信が伝えている。韓国軍当局者によると、実際、北朝鮮北西部の東倉里のミサイル発射施設に向かう車両の動きがあるとし、韓国軍はミサイル発射やエンジンの性能試験を行う可能性があると警戒している。

そして、30日には、北朝鮮は、「政府・政党・団体特別声明」を出し、「今から北南関係は戦時状況に入り、全ての問題は戦時に準じて処理される」と宣言した。声明では「米国と傀儡が北侵戦争の火を放つ軍事的挑発をすれば、全面戦争、核戦争に広がるだろう。…我々の革命兵力の最初の打撃で、米本土、ハワイ、グアムなど太平洋全域、南朝鮮の米軍基地、青瓦台、韓国軍基地も焦土化される。…祖国統一大戦は、一気に南朝鮮全域に広がる速戦即決の戦いとなる」と発表した。

ただ、その割には、北朝鮮の開城工業団地と韓国間の企業関係者の往来も通常通り行われており、特異な動向が見られないことから、韓国統一省はこの声明について、北朝鮮が26日に出した「1号戦闘勤務態勢」の後続措置の性格を持つもので、「新たな脅威ではない」と静観する構えを示した。

また、アメリカ政府高官も、開城工業団地の操業を通常通り続けていることに加え、北朝鮮への観光客誘致活動に変化がないことを理由に、脅しは見かけほどでないというのがホワイトハウスも含めた米政権の一致した見方だと指摘。北朝鮮のミサイル部隊に活発な動きがあるとの韓国の報道についても、実戦の準備でなくもっぱら訓練に関連する動きだとの見方を示している。

実際、日韓の軍関係者が傍受した北朝鮮軍の無線によると、部隊の兵士に対しては「くれぐれも挑発行為をせず、慎んで行動するように」などの指令が繰り返し出されていて、すぐに軍事行動に踏み切る可能性は低いとみられているようだ。

なので、今のところは、直ぐに有事にはならず、挑発行為は、先のミグ21の南北軍事境界線接近行動のように実行動による挑発に進みつつあるにせよ、口による挑発が続くと見られている。




2.暴走の黒幕

ただ、アメリカとて、どこまでも挑発をエスカレートさせる訳にはいかない。それなりの抑止行動に動き出した。

例えば、アメリカ第5艦隊が管轄する中東周辺海域で約5カ月に渡って、対イラン警戒活動やアフガニスタンでの対テロ戦の任務に就いていた空母「ジョン・C・ステニス」は、26日に第7艦隊の管轄海域に到着。戦闘攻撃機FA18スーパーホーネットや早期警戒機E2Cの発着艦訓練を実施している。現在はインド洋付近を航行中で、西太平洋での活動海域は国防総省と協議して決めるとみられている。恐らく北朝鮮有事の際には、急行できるように前準備をしているのではないかと思われる。

アメリカ国防総省は先に、韓国との合同軍事演習にB52戦略爆撃機が参加し、韓国上空を飛行したと発表。更に28日には、在韓米軍が、同じく軍事演習に参加させるためステルス爆撃機「B2」を派遣したとの声明を発表している。

元々、米韓軍事演習には、アメリカ海軍の原子力空母ジョージ・ワシントンが参加している。空母ジョージ・ワシントンに、B52にB2。そこに加えてジョン・C・ステニスがウォーミングアップ。北朝鮮に対して過剰なまでの兵力が集結しつつある。

どう考えても、勝ち目がないのに、どうして、ここまで北朝鮮は強気に出られるのか。

ここから先は、全くの憶測で、証拠もないから、眉唾で読んでいただいて構わないのだけれど、筆者には、北朝鮮の強気の裏には、中国のバックアップがあるような気がしてならない。

今回の北朝鮮の暴走に関しては、中国も激怒して、安保理の制裁決議にも賛成に回っているけれど、それは表むきで、裏では、滅亡しない程度に、暴走させているようにも見える。経済援助その他を見返りに。

その理由は、あえて、北朝鮮を暴走気味にさせることで、アメリカ軍の戦力をアジアに集中させ、その隙に、手薄になった中東諸国、引いてはアフリカ諸国への影響力をより強めようとしているのではないか。




3.中華帝国の野望

中国は、昔から中東諸国に武器を売却してきた。

今年2月にUAEの首都アブダビで、軍事見本市、アブダビ国際防衛展(IDEX:International Defence Exhibition)が行われた。これは、1993年から各年で開催される中東と北アフリカ地域で最大規模の展示会。陸・海・空における防衛を全て網羅した専門的な展示がされる。同時に、こうした展示会は、対ホスト国および参加各国との軍との交流・情報交換・人脈形成および信頼醸成の場という側面を持っている。

中国は、この展示会に毎回参加していて、中国のパビリオンは年々拡大の一途を辿っているという。また、中国は、展示会に大型の代表団も派遣していて、今回も制服組だけで15名程の代表団を送り込んでいる。この中国代表団が展示した武器は、中国が輸出向けに開発した装輪式の新型自走榴弾砲である105mm装輪自走榴弾砲、固定翼無人航空機など、中東地域で初めて展示した武器も少なくないという。

中国がこうした中国製の武器をどんどん中東やアフリカ各国に売り捌いていくと、それらの国々の兵器産業は中国なしでは成り立たなくなる。とりわけ、あの辺りの地域は紛争が絶えないから、いくらでも売れるし、売った分だけ影響力を行使できる。

そのような状態で、例えば、中国が、あの地域からアメリカの影響力を排除又は、追い出し、更に軍事援助や経済援助をしたら、かの諸国は一斉に中国に靡くことだって考えられる。

とはいえ、世界最強のアメリカ軍を追い出すことは簡単じゃない。世界に、マトモにアメリカと喧嘩して勝てる国など存在しない。

ただ、一つ考えられるのは、世界のあっちこっちで紛争がおき、その度にアメリカの鼻面を引きずり回してやることで疲弊させ、やがて自ら撤退させるように仕向けること。

今なら、イランと北朝鮮が火種になっていると思うけれど、例えば、イランに水面下で話をして、中国に優先的に石油を輸出するとか、或いは、同盟に近い関係を結ぶとか何かを約束するのであれば、アラビア海からアメリカを追い出してやろうとかナントカ言って、北朝鮮を焚き付けて、疑似暴走させる。暴走がエスカレートすれば、アメリカとて在韓米軍や在韓アメリカ人の保護を考えなくてはならず、抑止のために戦力を割かざるを得なくなる。

今回の場合は、見事に、空母ジョン・C・ステニスを中東から引きずり出すことに成功した…。

まぁ、唯の妄想に近い憶測ではあるけれど、この中国黒幕説が本当であれば、今の北朝鮮の挑発も、アメリカ海軍の戦力を東アジア地域に張り付けさせることが目的となるから、北朝鮮は、自分が爆撃されない程度かつアメリカが警戒して戦力を投入しそうな程度に挑発を続け、ぐだぐだの睨み合いに持ち込むことを狙っていることになる。となると、今後は、大規模攻撃とかはなくて、38度線での散発的な戦闘や、日本海などへのミサイル発射を繰り返して、警戒レベルだけを上げさせておくやり方を続けるのではないか。

ただ、この瀬戸際黒幕作戦のキモは、アメリカが戦争を嫌がって、ぐだぐだと牽制だけを延々と続けるだろうという期待(予測)にある。仮に、オバマ大統領が金正恩体制崩壊を決断し、大規模空爆かなんかを決断するのなら、この黒幕作戦は水泡に帰す。

まぁ、黒幕説自体、筆者の唯の憶測にしか過ぎないから、この予測は、殆ど意味がないものだとは思うけれど、無謀とも思える北朝鮮の挑発について、ひとつの可能性としてエントリーしておく。

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この記事へのコメント

  • 酋長

    私もそう思います
    2015年08月10日 15:23
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    米空母が来ると言うことは情報収集のための
    その多大勢もおおぴらに集まる.
    安保理事で非難している以上は止められないので
    支那にとって得なことはないだろう.
    2015年08月10日 15:23

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