参院選と橋下市長の決断

 
5月24日、安倍総理と公明党の山口代表が党首会談を行ない、6月26日までの通常国会の会期を延長しないことを確認した。

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公職選挙法では、参院選は「閉会日から24日以後30日以内に行う」と定められているから、この期間に合致する日は、7月21日。会期延長がなければ、この日が参院選投票日となる見込み。

5月29日、安倍総理は、都内で行われた、自民党石原派のパーティーに出席し、「国会はあと1カ月を切った。国会が終われば東京都議選、参院選になる」と述べているし、同じく29日の読売テレビのインタビューで、参院選について「基本的に7月4日公示、同21日投開票という日程で考えている」と述べているから、ほぼ7月21日の投開票は間違いないものと思われる。

また衆院とのダブル選挙については「昨年衆院選をした。衆院議員が落ち着いて仕事をしていくことができることも大切だ」としているから、おそらくないだろう。

さて、参院選を控え、マスコミ各紙も議席予想を出し始めているけれど、自公の過半数獲得はまず固いところという見方が大勢のようだ。まぁ、7割近い安倍内閣の高支持率をみれば、それもむべなるかな。

政治評論家の森田実氏は、自民の獲得議席数を選挙区で48、比例区20の計68。比例区でさらに議席を伸ばせば、最大で28議席。非改選の50と合わせ、自民党単独で過半数の122議席に届くかどうかとしている。

また、時事通信社解説委員の田崎史郎氏は、自民の議席数を、31ある1人区で最低25、16ある複数区で16から17議席で、選挙区は計41~42。比例区は18から21獲って、合計で59から63。更に、官邸筋は比例で25獲れると言っているそうで、比例を25とみると、59から67の間、としている。

非改選議席は自民が50、公明が9あるから、今度の参院選で自公ふぁ63以上取れば、合計122議席で過半素を超える。ようやく捻じれが解消し、安定政権が見えてくる。安倍総理も前回の仇討ちをしたことになる。

だけど、あれから5年経って、かつての"仇"は見る影もない。

民主党は改選46の内、当選見込みはおおよそ15から20議席。一人区では全滅するのではないかとも噂されている。まぁ、それでも前回の参院選の貯金(非改選)が42もあるから、参院野党第一党になることは動かないと思われる。

それに対して、一番頭を抱えているのは、維新の会。勿論、橋下共同代表の慰安婦発言が維新の支持を大きく落とした。

5月25、26日に産経新聞社とFNNが実施した合同世論調査で、橋下氏の慰安婦発言について、75.4%が「不適切」、16.8%が「適切」と回答し、政党支持率も前回10.8%から4.4ポイント落として6.4%となり、民主の8.8%に躱され3位に転落。

無論、今回の橋下氏の慰安婦発言が政党支持に大きく影響していることは、党も認めている。5月29日、維新の会の小沢鋭仁国対委員長は記者会見で、「今回の支持率の下落の最大要因はやっぱり慰安婦問題であり、影響は大きいと思います。橋下徹共同代表が言おうとしたことは、女性を戦場から守り、かつ、日本だけが不当に侮辱を受けていることを改善し、日本の誇りを回復するということだ。しかし、これとまったく逆な受け止め方が海外や国内の一部からされた。落ち着いていけば、少し違うところに目を向けてもらえるのかなと思う。」と述べている。

小沢国対委員長は、「まったく逆な受け止め方をされた」などと、まるで不慮の事故にでもあったかのように言っているけれど、やはり、発言そのものに反発を受けるだけのものがあったのだと思う。特に女性から。

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筆者は、その反発は、慰安婦が必要だった云々発言ではなくて、橋下氏が在日米軍に、風俗業の活用を進言したことがずっと大きかったのではないかと思っている。確かに、日本国内では法律上認められているのかもしれないけれど、それを表立って、しかも公式の場で発言することは憚られて当然。

実際、先の世論調査でも、風俗業の活用発言について、80.7%が不適切と答え、適切は12.2%と、慰安婦発言よりもこちらのほうがより反発が強い。女性に限定すると、慰安婦発言に79.3%、風俗活用発言には82.4%が不適切だとしている。維新の会関係者によると、「女性有権者の拒否反応がすさまじい」とぼやく立候補予定者もいるという。まぁそれはそうだろう。

昨日のエントリーでは、慰安婦問題に関するタブーが壊れつつあると言ったけれど、一方では、特に女性有権者に対しては、強烈な反発を招いている訳で、こと選挙に関していえば、橋下氏は維新の会の足を大きく引っ張っていると言える。

こうなると、他の中小政党とは違って、選挙基盤の弱い維新は苦しくなる。維新は選挙でも候補者に公認料を出すことはない。数千万円はかかるとされる選挙費用は候補者本人が自腹で用意する。それでも候補者が集まっていたのは、有権者の支持がそれなりにあり、多少なりとも当選の見込みがあったから。

そんな維新の会が頼みの綱の支持を失ったら、途端にその求心力を失う。実際、参院選千葉選挙区で維新から出馬予定だった新人の中田敏博氏は公認辞退を申し出ている。他にも辞退者が続出しないとも限らない。

政治評論家の浅川博忠氏は「橋下発言の前は、野党の選挙協力もあって『維新は参院選で15議席はいく』とみていたが、一連の騒動で7、8議席まで下落した。今後、候補者の辞退が続けば、5議席程度しか取れなくなる。」と述べているし、森田実氏は、橋下発言で、比例票が逃げたとして、維新の会の比例獲得議席を3議席としている。

ほんの1年前には、政権を獲るなんて言っていた維新が、こうなってしまう。政治の怖さ、世論の風の怖さをまざまざと見せつけられる。

仮に、参院選で維新が惨敗すると、対外的には、「日本国民は橋下氏の慰安婦発言を支持なんてしてませんよ。」というメッセージを送ることになるから、それを持って、一応の幕引きにはなる可能性はある。

ただ、筆者は、なんとなくだけれど、橋下氏はタイミングを見計らって、維新の会の共同代表を自ら辞任するのではないかという気がしている。先日の外国人プレス向け記者会見で言いたいことは言った。後は責任を取る形を取って、さっと辞任する。参院選で惨敗して辞任を迫られるよりは、そちらのほうがまだ復活の可能性が残されているし、維新の会に対するダメージを食い止めたいのなら、そうした方がよいだろうと思う。

5月30日、大阪市議会の自民、民主系、共産の各会派は、従軍慰安婦発言などで市政を大きく混乱させたとして、橋下市長に対して問責決議案を共同提出。これに対して、橋下市長側が、問責されれば、出直し市長選をすることを検討するとして議会側を牽制し、結局、否決されたのだけれど、橋下氏の足元も揺らいでいる。

これらを考えると、橋下氏なら、世論の動向を睨みながら、自ら先手を打って、維新の会の共同代表辞任という選択をするかもしれない。




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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    橋下氏が無思慮に工作員の仕掛けに乗って
    うかつな発言をしたのはまずかったが,
    問題ある陰の立て役者は松井大阪府知事.
    西村議員除名は彼の周辺から出てきたのだろう.
    橋下氏の発言と西村氏の発言がどの様に違うのか?
    未来を託す党としては非常に危険であることが
    あらわになったと思う.
    大阪府が再建団体に確定した時, 同和問題を
    抱える以上それはほぼ避け難いが,
    その時に命運は尽きることになろう.
    2015年08月10日 15:22
  • nisimiyu(西川美幸、前・日本物理学会代議員

    <震災や原発事故を事前に注意喚起できた者による政策提案!>
    http://nisimiyu.web.fc2.com/alertmails/ManifestSuggestion.htm
    3/11震災の前日朝、宏観異常レポート掲示板に月の角度異常を報告、その半年前から日本地震学会公式ML「なゐふる」で「すゑのまつやま」を警告していたのは、世界で私だけです。できた人の意見をこそ優先してください。できれば、科学技術に理解ある女性に投票してください。
    2015年08月10日 15:22

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