4月28日、参院の山口選挙区補欠選挙が投開票され、自民党新人で、前山口県下関市長の江島潔氏が、民主党前衆院議員で、今回無所属で出馬した、平岡秀夫・元法相を破って初当選。これで、自民党は山口県の衆参6議席を独占した。
開票結果は次のとおり。
江島潔 (自民・公明推薦) 287604自民党は安倍総理の地元山口県での補選ということもあってか、安倍総理が初のお国入りをしたほか、石破幹事長ら幹部が相次いで応援に入った。対する民主党も、平岡氏を無所属で擁立して全面支援。海江田代表と細野幹事長がともに3度応援に駆けつけたものの、蓋を明けてみれば、ダブルスコア以上の大差で江島氏の圧勝に終わった。
平岡秀夫(無所属・民主推薦) 129784
藤井直子(共産) 25944
河井美和子(幸福) 10096
今回の補選は、昨年の衆院選に鞍替え出馬して当選した自民党の岸信夫氏の参院議員辞職に伴って実施されたものなのだけれど、今回の江島氏の当選で、参院会派の勢力は自民会派は84名。民主党会派の85名まであと一つと迫った。更に、民主党は室井邦彦参院議員が離党届を出しているので、室井氏が会派を離脱すれば84名で同数となる。民主党の参院アドバンテージも風前の灯火。
また、自民、公明両党の非改選議席は合わせて59議席となり、夏の参院選で与党過半数である122議席まで、63議席。
今回の山口補選の結果から見て、夏の参院選で自民が大きく議席を伸ばすのは間違いなく、自公で、過半数を超えてと見る向きもあるけれど、平岡氏陣営も「穏健保守からリベラルまで幅広い反自民勢力の結集」を掲げ、無所属で出馬した関係から、連合は平岡氏の推薦を見送り、集票マシンとして殆ど機能しなかったことに加え、争点に掲げた「脱原発」が票に結びつかなかったという"敵失"が幸いした部分も考慮する必要があるだろう。
だけど、「脱原発」が争点にならなかったという意味は大きく、これで民主党が、夏の参院選で自民との対立軸を出すのがますます難しくなった。
何せ、今の安倍政権は付け入る隙が殆どない。
経済政策は、目下「アベノミクス」が絶好調。反アベノミクスを争点に掲げても、勝ち目はない。ならば外交はといえば、特に大きな失点もなく、順調に推移している。
靖国だの何だので騒いでいるのは、マスコミの方で、むしろ国民のほうが冷静に見える。
憲法改正や集団的自衛権についても、北朝鮮の"無慈悲な挑発"や、中国の度重なる尖閣への領海侵犯という事実が、皮肉にもマスコミの世論誘導を阻んでいる。
4月28~29日に産経新聞とFNNが実施した合同世論調査で、「憲法改正は必要」との回答が57.6%と過半数を超え、憲法改正の是非を問う国民投票には81.5%が「投票したい」と答えている。
また、「自衛隊の位置づけを明文化すべきだ」との回答は71.7%に達し、「集団的自衛権を認め、明文化すべきだ」との回答も62.1%に及んでいる。
安倍総理は周囲に「5年、10年会談がなくても、それでいいんだよ。日本の経済力が強くなれば問題ない。中国が尖閣問題であれだけめちゃくちゃやると、日本の国民世論も乗せられない。中国は墓穴を掘った」 と漏らしたそうだけれど、その通りだろう。
忘れっぽい日本人に対して、忘れないよう、わざわざ定期的に挑発と領海侵犯をして下さるのだから、こういう結果になるのは当然だといえる。
自民党の石破幹事長は熊本市での講演で、「主権独立国家にふさわしい憲法を作らなければならないというのが安倍総理大臣の思いだ。国家の独立が外敵の侵害で揺らいだ場合に独立を守るのが軍隊だが、憲法にはどこにも軍隊の規定が書かれていない。時代に合わなくなった憲法を見直すことが自民党の責務だ。…参議院選挙では獲得する議席の数も大事だが、有権者にどういう思いで自民党に入れてもらうのかが極めて大事だ。憲法改正などを訴えれば、甘い話ばかりではなく厳しい批判を受けることもあるが、本来は自民党がもっと前にやっておくべきことだった」と夏の参院選で、軍隊の規定を盛り込む改正を訴える考えを示した。
その一方、高村副総裁は29日のTBSの番組で、自民党の憲法9条改正案に関して「多数派を構成する中で、柔軟に対応すればいい」とし、戦力不保持を規定した9条2項の削除については「絶対譲れない」と述べている。
ある意味において、参院選後の、96条改正のみならず、9条改正への地ならしをしているように見えなくもないのだけれど、それ以上に、今の日本にとって、国力に見合った国防力とは如何なるものか。今の日本にどれくらいの国防力が必要とされるのか。日本の脆弱性とは何かについて、もっと議論というか、広報の必要があると思う。9条改正云々は別として、国防を考えるいい機会になる。
マスコミが憲法改正がどうの、靖国がどうのと騒いでいるのを尻目に、日本を巡る現実はその先を行っている。最後に取り残されるのは、実はマスコミなのかもしれない。
この記事へのコメント
クマのプータロー
自分たちが思っている国際貢献と、周囲から期待される国際貢献との質のギャップについても考え合わせると、大幅なレジームチェンジを迫られるのは日本国民の方だと思います。マスコミが取り残されるのはその後でしょうか。
秋山殿
軍国主義復活ってかw
白なまず
【プーチン大統領、日本の
sdi
ただ、注目すべき点もあります。平岡元法相の経歴(元大蔵キャリア・退官後弁護士)を考えるとき、この人の主義・主張は、恐らく民主党の非組合系政治家の中で平均値なのではないでしょうか?「『穏健保守から中道・リベラルまで』の政治勢力の集合」「脱原発」「平和主義」というスローガンは、間違いなく彼の本音でしょう。ちなみに「パチンコ換金合法化」も代議士在職中は訴えていましたが。
今後の民主党は、今回の補選の平岡元法相の主張と似通った政治方針を掲げて参議院選を戦うことになるのではないでしょうか?なにしろ、他に縋る杖がありません。これ以外の何かを打ち出したとき、それでなくてもがたついている党内はさらにがたつくでしょうね。
日比野
>大幅なレジームチェンジを迫られるのは日本国民の方だと思います…
あぁ、そうかもですね。現実はもう"一国平和主義"を許さない情勢ですからね。
opera
http://www.47news.jp/CN/201304/CN2013042501002214.html
96条の先行改正には、自民党参議院議員の西田氏のような保守系議員も反対しており、色々と議論の余地が出てきました。
石波幹事長の発言からは、軍の存在を明記する積極的な規定が必要不可欠のように思われがちですが、記憶が正しければ、アメリカ憲法には国軍の存在を明記する規定は無かったはずです(州軍に関する規定と国軍の予算に関する規定はある)。
近代国家には国防軍の存在が必要不可欠であるという考えを前提とするなら、高村副総裁が言うように、9条2項の削除するだけでも、法律論的には国防軍を明記したのと同様の結果を導くことできます。軍法会議の設置については76条に抵触する可能性もありますが、何らかの形で最高裁への上訴を認めればクリアできると思います。
ここにきて、9条2項の先行削除という案を考える必要が出てきたのかもしれません。