日本の防衛を取り戻す
昨日のエントリーのつづきです。
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6月24日、平成25年版「防衛白書」の概要が明らかになった。
それによると、中国の軍事力の増強や北朝鮮の核ミサイル開発を受けた警戒感を示し日本を取り巻く「安全保障環境は一層厳しさを増している」と明記。中国が国防費を過去10年で約4倍に増加させていることに触れ、「軍事や安全保障の透明性不足により、地域や国際社会にとっての懸念事項」と言及。尖閣諸島周辺などで挑発行為を繰り返していることについても、「領海侵入や領空侵犯、さらには不測の事態を招きかねない危険な行動を伴うものがある」と指摘している。
また、北朝鮮については、軍事に依存する状況は今後も続くと分析。核ミサイル開発の動きを「国際社会の平和と安定を著しく害するもので容認できない」と指摘した。
これに対し、島嶼防衛の取り組みとして、日米共同の離島奪還訓練実施や、領土防衛態勢充実のための装輪装甲車や水陸両用車の参考品購入を明記し、オスプレイについても「沖縄配備により、在日米軍全体の抑止力が強化され、この地域の平和と安定に大きく寄与」と評価している。
白書は7月5日の閣議で報告される見込み。
この防衛白書を伝えた中国の環球時報は、日本専門家である楊伯江氏にインタビューし、楊伯江氏から「今年の白書には防衛計画の大綱の調整に向けた下地作りの意味がある。第1に専守防衛から先制へという戦略思想の変化の趨勢。
第2に人員、装備などハード面の全面的な強化で、非専守防衛型兵器の発展も排除しない。第3に南西諸島方面の防衛の重点的な強化だ」とのコメントを掲載している。
ここで、楊伯江氏が指摘した、防衛計画の大綱の調整というのは、おそらく、近く見直しされる防衛計画大綱のことを指すと思われる。
防衛計画大綱とは、日本の安全保障政策の基本的指針のことで、だいたい10年後までを念頭に置いて、中長期的な視点で日本の安全保障政策や防衛力の規模を定めるもの。これに関して自民党の安全保障調査会と国防部会が、6月4日、政府の新たな「防衛計画の大綱」策定に向けた提言をしている。
「防衛を取り戻す」という副題のついたこの提言では、安全保障政策の基盤となる重要課題として、 「憲法改正」、「国家安全保障基本法の制定」、「国家安全保障会議の設置」、「日米ガイドラインの見直しなどへの早急な取り組み」の5つを挙げている。
具体的には、尖閣諸島など離島奪還を想定し、垂直離着陸型輸送機オスプレイや水陸両用車を備えた「海兵隊的機能」の保持や、部隊を迅速に展開させるための輸送能力の大幅拡充、また、ミサイル迎撃能力を高めるため、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)やイージス艦の増強および、陸上自衛隊の一体的な運用性を高めるための「陸上総隊」新設も検討課題に挙げている。
この提言を受けて、防衛省は7月中に大綱見直しの中間報告を取りまとめるとしているのだけれど、どうやら、短距離弾道ミサイルの開発の検討に入るようだ。
これは、尖閣などの離島侵攻への抑止力強化を目的とするもので、例えば、特殊部隊を乗せた中国艦艇が尖閣に接近した場合、近隣海域に弾道ミサイルを着弾させ不法上陸を遅らせるという狙い。また、不法占拠された場合でも、増援艦艇の展開を防ぎ、陸自部隊の迅速な奪還作戦を支援する役目を果たす。射程は400~500キロ、飛行時間は5分程度を想定し、沖縄本島に配備する計画のようだ。
実は、平成16年の防衛大綱改定の際も、長射程ミサイルの技術研究開始を検討したのだけれど、当時は、公明党が敵基地攻撃能力保有と専守防衛逸脱の恐れがあるとして反対したため見送った経緯がある。
沖縄本島から尖閣諸島の魚釣島までは450キロ、宮古島からは210キロ、石垣島からは170キロあるのだけれど、今回は
射程を限定することで敵基地攻撃能力に直結しないと明確化するそうで、平成26年度予算案概算要求に調査研究費が計上される見込み。
だけど、平成26年度に調査研究費ということは実戦配備はもっと後になる。そんなペースで遅すぎるということはないのだろうか。
防衛省の平成25年度の概算要求の中に「南西諸島を始めとする島嶼を含む領土の防衛態勢の充実」という項目があるのだけれど、そこに、12式地対艦誘導弾の取得として4両購入とある。12式地対艦誘導弾の射程は250キロ程度とされているから、沖縄本島から尖閣へは届かないけれど、宮古島や石垣島、或いは、与那国島からであれば、射程圏。
まぁ、誘導弾だから、速度は時速1000kmくらいで、宮古島から撃ったとしても、尖閣周辺に届くまでには十数分はかかるだろうけれど、それでも配備するしないとでは、抑止力としては大きく差がでてしまう。
なんとなれば、与那国島へ配備を計画している、陸上自衛隊の「沿岸監視部隊」に配備して運用させるくらいはしてもいいし、当然、そうしたことも検討していると思う。
この記事へのコメント
opera
>だけど、平成26年度に調査研究費ということは実戦配備はもっと後になる。そんなペースで遅すぎるということはないのだろうか。そんなペースで遅すぎるということはないのだろうか。
1970年代の様々な危機を経て、大平正芳総理の下で「総合安全保障研究グループ」が「総合安全保障戦略」という報告書を提出したのが1980年。この時点では、防衛費の20%増額と調査研究のみを指摘。様々な調査研究の後、イージス艦の導入の最終決定は1987年。実際の配備は1993~1998年。つまり、冷戦崩壊後になってしまっています。しかし、このことがつい最近まで日本が惰眠を貪ることを可能にしてきました。
短距離弾道ミサイルの開発についても、中長期的には戦術核ミサイルの配備に繋がることに期待したいところです。