辛抱の遭難と好運

 
太平洋横断中のニュースキャスター辛坊治郎氏と、全盲のセーラー岩本光弘氏の乗った小型ヨットが遭難・救助されるという事故が話題になっている。

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これは、ブラインドセーラーの岩本光弘氏と辛坊治郎が、日本国福島県いわき市・小名浜港からアメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴまでのおよそ5100マイル(8200km)を帆走する企画。

2011年、お笑いタレントの間寛平氏が、世界一周マラソン(アースマラソン)を達成した際にも、太平洋と大西洋を小型ヨットで横断しているけれど、今回の企画は、このアースマラソンのサポートスタッフで、間氏のヨットパートナーでもあった比企啓之氏によるもの。今回の航海にも、間寛平氏がアースマラソンの時に使ったヨット・エオラス号が使用された。

比企氏によると、「アースマラソンで間寛平さんが乗っていた"エオラス"が役割を終えたまま、日本の海に留まっているという記事が雑誌に掲載された。そこで誰か使ってくれる人がいないか募集をかけたところ、岩本さんが名乗りを挙げてくれました。同乗者を探しているなかで、辛坊さんの顔が、いの一番に浮かんだので、本人がいないところで岩本さんとお願いにいこうと決めたんです。そこで僕から電話をして事情を説明したところ、"面白いなぁ"と返事をもらってプロジェクトが進むことになりました」とのことのようだ。

辛抱氏は辛抱氏で、ヨットで太平洋横断を横断したいという夢を持っていた。大学時代は、ヨットの同好会にも所属し、小型船舶1級免許を所持。現在は2艇目のセーリングヨットのオーナーでもある。

辛抱氏は、太平洋を横断したいという夢について、第1回大阪マラソンの番組で間寛平氏に伝えたら「比企に言うといたるわぁ」って言ってくれていたそうで、そうした縁から今回の企画となったようだ。

この企画は「ブラインドセーリング」プロジェクトと名付けられ、成功すれば、世界初の快挙となるはずだった。



ところが良かったのは出港から2、3日まで。折からの悪天候と時化に巻き込まれ、21日に浸水。排水が追い付かず船体放棄せざるを得なくなった。浸水当時の状況は大凡次のとおり。
発生の経緯(6月21日)

◆7時35分
辛坊氏から事務局に電話 エオラス号船内から。
辛坊:「右舷から浸水あり、船体放棄しかない」
    「現在地は北緯32°58′66″、東経152°49′32″」と報告
事務局:「船体放棄は最後の手段です。まずは排水してください」
排水ポンプ始動、排水の仕方を指示。
辛坊「もしかしたら排水がポンプでいけるかもしれない」との作業状況が受話器から聞こえる。
事務局の問い合わせには答えない。排水状況の声だけが聞こえる。

◆7時41分
電話をつなぎながら、事務局より海上保安庁に同時に救助要請。電話が切れる。

◆8時1分 
辛坊氏から事務局に電話。「ポンプでの排水が追い付かない。船体放棄しかない。2人は大丈夫。」
2人がエオラス号から脱出し、ライフラフト(救命ボート)に避難。
「船体を放棄しました」「イーパブは持ち出せなかった」「2人は大丈夫」と辛坊氏から報告。
GPSから事務局に現在地報告。

◆9時50分  
緊急持ち出し電話・イリジウム 救命いかだより辛坊から事務局に電話。
「ラフトに乗り移り、東に流されている。船体放棄した。位置は北緯32度58分、 東経152度49分。」
「波の高さは2~3m。2人はけががなく元気。」
「ペットボトルを船内から持ち出しできた。救命いかだには食糧、水はある」

◆11時
海上保安庁救難課に連絡。「2人とも元気。」

◆11時44分
海上保安庁航空機(LAJ500)が現場海域に到着し、ライフラフトを発見し交信。2人の無事を確認。

◆12時30分
海上自衛隊航空機(US2)が救助のため厚木基地を出発。

◆14時すぎ
US2が現場に到着。海上着水を試みる。

◆15時
US2は海上模様から着水が困難なため厚木基地へ引き返す。
気象状況は南西の風約15m/秒、波の高さ約4m
海上自衛隊の別のUS2が厚木基地から現場に向け出発。

◆17時53分
US2が現場に到着し海上着水。

◆18時14分
2人を救出し、US2機内に収容

◆22時31分
辛坊治郎氏、岩本光弘氏を乗せた海上自衛隊の航空機(US2)が厚木基地に到着。
とまぁ、こんな感じだったのだけれど、今回の救助には、いろんな好運が重なった結果だったのではないかと思う。一つは、ヨットに、岩本氏だけでなく、辛抱氏と2人で乗っていたこと。

出発前、辛抱氏は「私は海の盲導犬。故障が起きた時に治すのが私の仕事。…全部の機器が正常に動けば、HIROさんのシングルハンドでもできる。ただ、故障が起きた時に一人だと難しい」と、自分が同行する理由を説明しているけれど、今回のように、事故が起こった場合対応が難しい。その意味で、辛抱氏が同乗していたことは運があった。これが一つ。

もう一つは、救援に向かった、空自がUS-2を派遣したこと。US-2については、「P-1配備とUS-2輸出」のエントリーで、その性能の凄さを取り上げたけれど、今回の救出劇では、その威力を存分に発揮した。

辛抱氏らが遭難した現場は波高3~4m、風速16~18mという状況。こんな状況で、着水できる飛行艇は世界の中でもUS-2だけ。空自はこのUS-2を5機保有しているのだけれど、その内2機を辛抱氏らの救助に派遣した。もしも、US-2を持たない他国だったら、飛行艇による救助はハナっから諦めるしかなかった。これがもう一つの好運。

辛抱氏は救助後の会見で、「たった2人の命を救うために、自衛隊、海上保安庁の何百人の皆さんが、命を投げ出す覚悟で、4メートルの波を越えて、助けに来て下さった。この国の国民で良かった」と、海保と海自に感謝の言葉を述べているけれど、そのとおりだろうと思う。

US-2はインドが調達を計画しているけれど、今回の救出劇はその性能を改めて実証したことになる。今後の交渉にも弾みがつくに違いない。




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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    イーパブが使えなかったのはどういうことか.
    排水ポンプの指示をしなければならなかったのは何故.
    水洩れに対する不安があったのに全面補修をせずに
    出航したのどういうことか.
    水洩れを自分で何とかする技量もないのに太平洋を
    横断するとは神をも恐れぬ愚かものだ.

    いざとなれば誰かが助けてくれると思って緩んでいるのだろう.
    2015年08月10日 15:22
  • 日比野

    ちび・むぎ・みみ・はなさん、白なまずさん、enthusiasticさん、moharizaさん、整備不良ではないかとは、割と初期の段階で指摘されていたようですね。確証がとれなかったので、記事には書きませんでしたけれど、流石に準備不足の感は否めませんね。
    2015年08月10日 15:22
  • enthusiastic

    ヨット沈没原因をクジラと衝突と偽装する辛坊

    ヨットで太平洋を横断中 クジラと衝突!?
    http://www.kuunel.jp/content.html?t=7425315

    ヨット沈没原因についてテレビでは盛んにクジラとか流木とか言って擁護している。
    だが辛坊の削除ブログとやらには「バウスプリットの止水に不具合があって、水が漏れることが分かったんです。・・・余程荒れた海でない限り漏水しません」と自分で書いている。
    整備不良の船で荒天の海に出て、4メートルの横波で破損部位が耐えられなくなり破断したのは明白!
    保険の支払いとか、テレビ局の責任とかいろいろあるだろうけど、正直にミスを認めた方がいいぞ辛坊!
    2015年08月10日 15:22
  • mohariza

    辛抱某なる人間は、小生意気で、口だけ達者な、芸能崩れの「自称政治コメンテーター」と思っていますが、
    これに懲り、世間の注目を浴びる為だけ(?)の無茶な行動は慎むべきと思います。
    辛抱某はこれを期に、謙虚なコメンテーターになれば良いのでしょうが、
    多分 無理と思います。

    マスゴミに完全にいかれた人間と思っていますので・・・。
    2015年08月10日 15:22
  • 白なまず

    煽るつもりはありませんが、これが本当なら、、、

    >なんで台風多いこの時期に出発したのか、誰もが不思議に思う罠
    >7/10到着予定とかいいつつ予定より遅れて24時間テレビに生中継でゴールとかそんな予定だったんだろうなアホか
    >船がぶっ壊れてるのも最初からわかってたのかよ、んでブログを急いで消去? 反省してねーだろこのクズ

    辛坊治郎、整備不良のヨットで強行出発した疑いが浮上 「余程荒れた海でない限り漏水しません」 → 沈没
    http://www.kimasoku.com/archives/7190501.html
    2015年08月10日 15:22

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