
6月17日、中国の地下金融が29兆元(464兆円)規模にまで膨れ上がっていることが、中国の金融専門家がまとめた資料で明らかになった。

これは、「影子銀行(シャドーバンキング)」と呼ばれるもので、昨年後半頃から、その規模の急拡大が注目されていた。
資料によると、2010年には20兆元(320兆円)だったのが、2012年には29兆元(320兆円)以上に膨張。国有銀行が信託会社や証券会社などにリスクの高いローンを移したり、返済困難なローンの簿外借り換えを手配したりするケースがあるそうだ。
全国の地方政府はインフラ整備や再開発に銀行以外から借り入れた膨大な資金を投入しているけれど、返済の目途が立たないローンが重なり、最終的に銀行が地方政府に借り換えを指示し、救済する場合も多いとみられている。
中国で言われている影子銀行とは、次のようなものをいう。
1) 個人等がアンダーグラウンドでインフォーマルに貸し付ける民間借貸。主に、中小企業向けで、利率は20%以上になる場合も多く、中にはネット上での個人相互の金融もある。影子銀行が急拡大した原因は、2011年以降採られた金融政策の引き締めに端を発する。中国は、まだ金融の自由化が十分進んでおらず、資金の出し手、借り手双方の金融サービス多様化への要求が強まっていたという背景がある。
2) 信託会社の提供する各種信託商品で、不動産、企業債等で運用。
3) 銀行が自らの名前で個人等に提供している信託貸款、および企業が銀行に資金を預け入れ、銀行が仲介して他の企業やインフラプロジェクト等に貸し付ける委託貸款。
中国の金融システムは規制だらけ。1年ものの定期預金金利は3%、貸出金利は6%と決まっている。そんなところに、規制金利に不満を持つ金融関係者が、高金利を約束して資金を募り、高金利でも良いから、資金を貸して欲しい企業に金を流す地下システムが出来上がっていった。
ところが、問題なのは、その地下システムの主役を銀行が務めていること。もちろん影子銀行には、規制金利なんてないから、年利10%で集めた資金は、年利18%で貸出に回るのだという。
業績の良い民間企業は、民間企業だという理由で、銀行が設備資金を貸し渋る。ゆえに、彼らは影子銀行で資金を調達することになる。また、国有企業は、赤字補填となる融資なんかには銀行が応じてくれないから、これも影子銀行で資金を調達する。
現在、借り手の中で最大なのが、地方政府系の第3セクター。
「退化する中国 ~戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり~」のエントリーでも触れたけれど、中国の地方政府は、土地転がしをして、不動産バブルを生み出している。
中国の中央銀行である中国人民銀行は、こうした加熱する不動産バブルに対処するため、2010年頃から、金融引き締めを始め、国有銀行はこれに対する新規融資を貸し渋っていた。
だけど、地方政府の土地転がしは、まず資金調達ができて、次に転売して利益があがるという前提があって初めて成立するスキーム。
従って、国有銀行が貸してくれない土地転がしの資金についても、影子銀行が顔を出すことになる。そうして手にいれた土地は、高く転売できないといけないから、不動産価格が下落することはあってはならない。
こうした事情もあって、共産党中央政府がいくら指導をしても、土地バブルは一向に収まらない。だけど、永遠に膨らむバブルもまた、有り得ない。いつかは弾けるときがやってくる。
中国の不動産バブルが弾けてしまうと、当然、影子銀行のシステムも大きなダメージを受けてしまう。
6月20日、アメリカの金融大手ゴールドマン・サックスは香港株式市場で、11億ドル(約1114兆円)にも及ぶ、中国銀行最大手の工商銀行(ICBC)の持ち株を全て売却。資本を完全に引き上げた。
ゴールドマン・サックス撤退は、中国の景気減速に伴い、銀行セクターの不良債権が急増し、投資リスクが拡大したことが主因だと見られている。
外資は危険な匂いをかぎ取っている。
バブルを収めようとする中央政府と、それに抵抗する地方政府。影子銀行は、中国経済のメルトダウナーとなるか。
この記事へのコメント
とおる
・「中国は今、ちょうど2008年3月にベアスターンズが破綻した時と同じ段階に来ている」 『バロンズ』が巻頭特集で中国の信用危機を預言
http://markethack.net/archives/51880950.html
プチ農
中国様のファイナルカウントダウン開始でしょうか。危ないですよね