台頭する中国は「這い寄る混沌」か

 
昨日のエントリーの続きです。

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1.習近平の失望と復讐

米中首脳会談で、習近平国家主席が、「新型大国関係」なるものを掲げ、「太平洋には米中両国を受け入れる十分な空間がある」と2大パワーによる協力関係を強調したのに対し、オバマ大統領は「まず中国側は、日本がアメリカの同盟国であることを認識する必要がある。…アメリカは、日本と日本の民主主義を完全に信頼している。日本は成熟した民主主義国だ」と釘を刺していたことが、明らかになってきている。

今回の米中首脳会談について、アメリカ側でも、サイバー攻撃や海洋安保問題などで解決への進展がみられなかったことから、失望が広がっているようだ。

アメリカ大手シンクタンクである「アメリカン・エンタープライズ(AEI)」のマイケル・オースリン研究員は「中国のいう"新型大国関係"とは、大きな問題で米国は中国の協力を得られず、米中関係を安定させるため小さな問題に焦点を当てるものだ。…習氏は中国によるサイバー攻撃について何ら言及せず、南、東シナ海問題など海洋安保についても、東南アジア諸国など関係国が求める多国間での枠組みでの解決に言及しなかった」と指摘。「ブルッキングス研究所」のリチャード・ブッシュ上席研究員も「両首脳は良いスタートを切ったが、中国側は重要な米中問題がすべて消えたと思わない方がよい」と述べている。

また、ロサンゼルス・タイムズ紙も「歴代政権と体質は変わらない」と冷ややかな見方を示し、ワシントン・ポストに至っては、「記者会見で新華社の記者が、習氏のいう『新型大国関係』に関するできレースの質問をした際、日米双方の記者から失笑がもれた」とばっさり。

どうやら、米中首脳会談は、習近平国家主席の思惑通りとはいかなかったようだ。

今回の米中会談に当たっては、中国はアメリカに対して、水面下で無茶苦茶工作していた。アメリカ国防総省関係者によれば、「9月の予定が3カ月も前倒しになったのは、中国が米国に泣きついてきたからだ。習主席は今回の首脳会談で、東シナ海や南シナ海でもめている領土・主権問題について、特に、日本と一触即発の状態にある尖閣諸島問題で劇的な決着をつけようとしている。…これまでも中国はあらゆるチャンネルを通じて、『尖閣諸島に人民解放軍を一時的に上陸させてくれ』と米国に必死で泣きついてきていた。例えば、『1日上陸を認めてくれ。ダメなら3時間でいい。米国に迷惑がからない方法を考えたい』と。そして、『どんな条件でも飲む』と言っている。その最後の詰めを習主席はやるつもりだ」と言う程のものだったそうだ。

そうやってまで、トップ会談で話をつけようとし、尖閣について1時間40分も時間を割いてまで得た答えが「日本がアメリカの同盟国であることを認識する必要がある」だったのだから、習近平国家主席は、さぞかし悔しかったのではないかと思われる。そこまで同盟関係とは強いものなのか、と。

日米の強固な同盟関係を目の当たりにした中国が、それでも尚、太平洋の覇権を諦めないのなら、次には、日米同盟を切断しにくるであろうことは容易に予想できる。




2.中国が「価値観外交」を拒絶する理由

人民日報は、6月13日と14日の両日、「典型的な『人格分裂』---安倍政権の『価値観外交』の偽りのベールを剥ぐ」と題した記事を掲載した。

くだんの記事はこちら()にあるのだけれど、「いわゆる価値観外交は世を欺き名誉をかすめ取るだけの政治茶番劇で、国際社会や民主、自由、人権へのこの上ない愚弄である」と口を極めて批判している。

ここ最近は、中国に対して、特に何をしたということがない安倍総理に対して、中国からのいきなりの"口撃"。一体何の意図があるのか。

筆者は、この突然の批判は、先に述べた、中国による日米同盟の切断の一環ではないかと思っている。くだんの記事の一部を次に引用する。
 安倍政権が愛して止まない「価値観外交」とは一体どんな代物なのか?

 現代世界では世界の多極化と経済のグローバル化が急速に進行し、平和、発展、協力、ウィンウィンが後戻りの許されない時代の潮流となっている。国の大小や強弱を問わず世界各国の共通利益は増え、共同で対処する必要のある試練も増えている。当然ながら各国は相互尊重、互恵協力、共同発展を図るべきである。いかなる国家間の人為的障害や対立を引き起こす企みも、時代の潮流に逆行する。

 安倍政権は明らかに時代の潮流に逆行し、いわゆる「価値観外交」を推し進めることで、一体化しつつある世界を再び分断しようと企んでいる。本質的に言って、いわゆる「価値観外交」は完全に冷戦思考の禍であり、その目的は冷戦時代のように世界の文明発展の多様性を抹殺し、イデオロギー、政治体制、社会制度上の異同を国家関係の親疎を決定する基準とし、世界を再び截然と対立する陣営に分断することにある。

《中略》

 世界経済が成長力を欠き、国際協力が複雑に入り組む中、国際社会はとりわけ「新たな冷戦」をつくりだそうとする日本極右勢力の企てに強く警戒し、国際関係の雰囲気を悪化させる察しの悪い様々な行動を防ぐ必要がある。アジア諸国は歴史的発展の貴重なチャンスを迎えており、なおさらに日本極右勢力の良からぬ魂胆を見破り、アジアを分裂させるいわゆる「価値観外交」を自覚的に拒絶し、協力・ウィンウィン、共同発展という地域の良好な状況を共同で守るべきである。
要するに人民日報は、「多極化と経済のグローバル化が急速に進む今の世界において、安倍政権は"価値観外交"の名のもとに、冷戦構造を生み出そうとしている。だから止めさせるべきだ。」と言っている。それほど、"民主、自由、人権"という価値観を前面に出されることを嫌がっている。

これは逆に言えば、中国は自分で、"民主、自由、人権"という価値観の枠組みには入らないと宣言したということ。口ではグローバルだと言っておきながら、価値観は微塵も譲らないという意思表示をした。

だけど、価値観を持たぬグローバル化は、最後には、文明の衝突を生む。特に、ともすれば、何かと俺様ルールを振りまわす中国なら猶更、その危険が高まる。

安倍総理は"民主、自由、人権"という世界観を押し立てて、外交をやっている。戦略の階層の最上位から抑えにかかっている。それに対して、中国は、世界のグローバル化を持ち出して対抗しようとしている。

だけど、グローバル化というのは結果としてそうなるという話であって、その中に価値観を含んでいなければ、世界観にはなり得ない。戦略の階層でいう政策階層以上にはならない。中国は安倍総理が掲げる"民主、自由、人権"という世界観に対抗するだけの"世界観"を出せない時点で、戦略的に負けている。

相手の価値観、世界観を尊重することなく、自分の都合だけをごり押ししても、そこには「這い寄る混沌」しかない。




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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    インターネット攻撃に困った米国が下手に出て
    いると聞く. それならば, 欧州と米国, 日本とで
    海底ケーブルの再編成をやり, つまり, 有時の
    際には支那大陸からの通信を制限すれば良かろう.
    日本政府が乗り出せば可能であると思う.
    2015年08月10日 15:22
  • sdi

    今回の米中首脳会談が中国側にとって不本意な結果に終ったのは確かでしょう。ただ、中国側もこのまま引き下がるとは思えません。というより、このまま引きがったら自己の権威と権力が危うくなることを一番良く知っているのは習主席と彼を取り巻く北京の共産党の党中央です。このまま引き下がるわけにはいかず、かといってアメリカとの交渉は不調に終った北京の党中央としては何としても「成果が上がった」ことにしなければなりません。
     となると、真っ先に思いつくのが情報戦ですね。さも「米中密約」があったかのような情報をリークして相手の動揺をさそい、さらに自身も「米中密約」に基づいたかのような行動をとる、なんて彼らの好きそうな謀略、というより陰謀ですね。ああ、いつのまにか陰謀論に嵌ってしまいましたよ(苦笑)。
    2015年08月10日 15:22
  • 白なまず

    「這いよる」の引用元?から「這いよれ! ニャル子さん:アニメ」をちょっとだけみましたが、面倒くさいどうでも良い主人公の混沌ぶりが、日本と支那朝鮮、米国、ロシア、との関係を比喩していると言うことですね、、、他人ごとのアニメでも見続けるのに忍耐が必要そうです。それが実際日本を取り巻く状況なら地獄絵巻のようですね。それでも、めぐりがなくなるまで混沌は続くでしょう。


    ひふみ神示 第05巻  地つ巻 第八帖 (一四五)
     祓ひせよと申してあることは何もかも借銭なしにする事ぞ。借銭なしとはめぐりなくすることぞ、昔からの借銭 は誰にもあるのざぞ、それはらってしまふまでは誰によらず苦しむのぞ、人ばかりでないぞ、家ばかりでないぞ、国には国の借銭あるぞ。世界中借銭なし、何し ても大望(たいもう)であるぞ。今度の世界中の戦は世界の借銭なしぞ、世界の大祓ひぞ、神主お祓ひの祝詞(のりと)あげても何にもならんぞ、お祓ひ祝詞は 宣(の)るのぞ、今の神主 宣(の)ってないぞ、口先ばかりぞ、祝詞も抜けてゐるぞ。あなはち、しきまきや、くにつ罪、みな抜けて読んでゐるではないか、臣民の心にはきたなく映るで あろうが、それ
    2015年08月10日 15:22

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