米中首脳会談と日米電話首脳会談

 
6月13日、安倍総理は、オバマ大統領と約30分の電話会談を行い、悪化している日中関係について、両国間の対話が重要との認識で一致した。

画像
 ブログランキングに参加しています。応援クリックお願いします。
電話会談の概要は次のとおり。
 【米中首脳会談】
 大統領 (中国の習近平国家主席との会談で交わされた、米中関係や尖閣諸島問題を含む日中関係、北朝鮮に関するやりとりを紹介)
 首相 大統領が日本の立場を踏まえた上で対応していただいたことに謝意を表明する。
 【日中関係】
 首相 日本としても常に日中で協議するドアは開いている。
 【北朝鮮】
 大統領 (拉致問題について、日本の立場への支持を表明)
 両首脳 核・ミサイルを含む北朝鮮の問題で、日米が連携して対応していくことを確認。
 【TPP】
 大統領 日本が環太平洋連携協定(TPP)交渉に参加することは、TPPにとって大きな進歩であり歓迎する。
 両首脳 日米で協力し、交渉をより良いものにしていくことを確認。
 【ハーグ条約】
 首相 (関連法が日本で成立したことを報告)
 【日米関係】
 両首脳 緊密に意思疎通することは、日米両国が認識を共有する上で極めて重要との考えで一致。
冒頭で、6月7~8日にかけて行われた米中首脳会談の内容をアメリカ側が日本に伝えたことについては、事前にアメリカ政府から、オバマ大統領が安倍総理に会談内容を直接説明したいと提案されているとの事前情報が伝わっていたけれど、どうやらそのとおりだったようだ。

その米中首脳会談の骨子は、共同通信の報道によると、次のとおり。
 一、沖縄県・尖閣諸島問題を長時間協議。中国の習近平国家主席は領有権を主張、オバマ米大統領は緊張緩和と対話解決要請

 一、環太平洋連携協定(TPP)の交渉情報を中国に提供する枠組みを構築

 一、北朝鮮の非核化は米中共通目標。北朝鮮を核保有国と認めない

 一、適当な時期に今回のような首脳会談を中国で開催
2日間計8時間にも渡って、長時間会談したにも関わらず、これだけの内容しかなかったとはとても思えないのだけれど、会談後、オバマ大統領が「両国間にはいや応なく緊張のある分野があるものの、私が過去4年間に学んだことは両国民が協力を強く望んでいるということだ」と述べているところをみると、話し合いはしたもの平行線に終わった部分が相当あったのではないかと思われる。



例えば、例の尖閣問題にしても、習近平主席が尖閣を「中国固有の領土」と主張せんがために、約40分にわたり尖閣や歴史問題に関する中国の主張を一方的に述べ続けたり、1時間にわたりペーパーを読み上げながら同様の発言を行うなどしたとされる。

それに対し、オバマ大統領は、「まず中国側は、日本が米国の同盟国であることを認識する必要がある。…米国は日本と、日本の民主主義を完全に信頼している。日本は成熟した民主主義国であり、民主主義や人権などで米国と価値観を共有している。…米国の同盟国である日本が中国から脅迫されることをわれわれは絶対に受け入れない。」などと反論。習近平主席に強く釘を刺した。

習近平主席にしてみれば、8時間の会談のうち1時間40分も尖閣関連の主張に時間を使った挙句、「絶対に受け入れない」と返されては、がくっときたところもあったのではないかと思う。

一方、また、会談で無駄な時間を割くことを嫌い、さっさとビジネスの話に入ることを好むオバマ大統領が、よくぞ、習近平主席の一時間のペーパー朗読に我慢して付き合ったものだと思う。相当我慢しながら聞いていたのではないか。

このように尖閣に関する限りは、オバマ大統領はある程度、日本の代弁をしてくれた面もあったのではないかと思うのだけれど、果たしてそこには、日本からリクエストしていた部分もあったようだ。

6月8日、菅官房長官はテレビ東京の番組で、「日本側の考え方を米国に伝えており、そこはしっかり主張してもらえる」と、米中首脳会談の際、日本の考え方を伝えるよう、事前にアメリカ側に求めていたことを明らかにしている。

そして、事前リークのとおり、米中首脳会談の内容も、オバマ大統領から安倍総理に電話で伝えられた。曲がりなりにも、アメリカは日本のリクエストに応え、同盟国としての信義を守った。

日本のマスコミの中には、「米中首脳会談はノーネクタイで行われた」とか、「中国の国家主席が就任から3カ月で訪米するのも、 米中首脳がこれほど収集的に会談するのもかつてなかった事だ」とか、さも米中蜜月時代の到来だとか、日本が軽く扱われるようになったかのような報道をしているけれど、ノーネクタイで長時間会談が行われたという「親密の演出」が、会談内容についてリクエストでき、その結果も報告して貰えるという「同盟国同士の信頼」を上回っているとは思えない。

菅官房長官は、「日米関係は信頼感の中でやっている」とし、安倍総理が「日米は同盟関係で、これは米中とは決定的な差だ。地球儀を俯瞰するように外交を進めたい」と述べているけれど、今のところは同盟関係は機能しているように見える。

もちろん、アメリカも日本に会談内容を全部が全部話している訳ではないだろう。もしかしたら、米中間の"密約"に類する部分もあるかもしれない。だけど、表向きは、形の上であったとしても、アメリカは同盟国としての信義を通している。そのことはきちんと認識する必要はある。さもなくば、同盟関係など続けることなど出来なくなる。

米中首脳会談が成功だったのか、失敗だったのか。両国の今後のリアクションから目が離せない。




画像

この記事へのコメント

  • プチ農

    中国にとっては失敗に近いと思います。アメリカは中国を舐めているのに、中国は夜郎自大になっていると思います。危ないですよね。
    2015年08月10日 15:22

この記事へのトラックバック