日韓通貨スワップと韓国の損失


6月10日、菅官房長官は記者会見で、「日韓通貨交換(スワップ)協定」について、韓国政府から延長要請があった場合「隣国であり、大局的観点に立って検討していきたい」と述べた。

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「通貨スワップ」とは、通貨危機に陥った際に互いに通貨を融通しあう制度で、日本銀行及び財務省と韓国の中央銀行である韓国銀行との間で、2005年に初めて結ばれた。

2005年当初は、限度額30億ドル(当時の額で約3000億円)で、日銀と韓銀との間で結ばれたのだけれど、2006年2月には、今度は、財務省と韓銀との間で「日本100億ドル・韓国50億ドル」の双方向スワップを締結している。

ところが、2008年のリーマンショックで韓国経済が危機に陥ったため一時的に200億ドルに引き上げられた。

そして、2011年10月には、ウォンが急落の気配を見せ始めたことを受け、日本政府は通貨スワップ協定を一時的に700億ドル(約5兆4千億円)まで拡大したのだけれど、2012年に李明博前大統領による竹島への上陸と陛下侮辱発言の後、両国関係は悪化。日韓通貨スワップは相互に有効期限を延長せず、700億ドルは、2006年当時の130億ドルに縮小されていた。

今回延長云々と言っているのは、この縮小された130億ドルのうち日銀-韓銀間で結ばれた30億ドル。この30億ドルは、7月3日に期限を迎える。

菅官房長官は、韓国側からの延長打診について「現時点においてあったとは聞いていない」としているけれど、政府筋や外交筋からは、「朴政権は重要な政治決定を行う体制ができていない」とか、「日本への支援要請で"弱腰"との政府批判が高まることを懸念し、要請に二の足を踏んでいるのではないか」との観測が流れている。

ただ、今回の30億ドル分が失効しても、残り100億ドルがある。これは、財務省と韓銀との間で結ばれている分なのだけれど、これは「チェンマイ・イニシアティブ(Chiang Mai Initiative:CMI)」という枠組みの中で行われる。

チェンマイ・イニシアティブとは、東アジア地域における通貨スワップの取り決め。1997~98年のアジア通貨危機後、東アジアでの金融協力の必要性が認識されたことを受け、2000年5月にASEANと日中韓財務大臣会議(ASEAN+3)にて合意。2003年末までに、日本、中国、韓国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの8カ国の間でネットワークが構築された。

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だけど、チェンマイ・イニシアティブにおいて、その通貨スワップの発動条件は、基本的にIMF融資とリンクしていて、スワップ総額の80%はIMFの管理に置かれ、自由にスワップが発動できるのは、残りの20%だけ。

IMFの融資にあたっては、IMFと借り入れ国が協議して、経済の安定化計画を行なうことが条件で、その取り立ても厳しい。

韓国は1997年の通貨危機の際、IMFからの総額550億ドルの融資を受けた経験がある。このとき、韓国はIMFに対して、「財政再建」・「金融機関のリストラと構造改革」・「通商障壁の自由化」・「外国資本投資の自由化」・「企業ガバナンスの透明化」・「労働市場改革」などを約束したのだけれど、それを実施する過程で、企業倒産が相次ぎ、200万人近い大量の失業者を出している。それを考えると、韓国は、もう一度IMFのお世話になることには二の足を踏むのではないかと思われる。

この1997年の通貨危機のとき、韓国のウォンは大暴落していたのだけれど、その暴落は、このIMFによる韓国への緊急融資が発表されても止まらなかった。

当時、韓国の主要銀行が抱えていた短期対外債務残高320億ドルの大部分は日米欧の民間銀行からの借入れに集中していたため、彼ら民間銀行は、韓国向けローンの回収を急いだ。その結果、韓国の外貨準備が急速に枯渇するという事態に見舞われていた。要するに、他国との銀行レベルで取り付け騒ぎが起きたようなもの。

だから、いくらIMFが緊急融資をすると発表しても、市場は安定せず、ウォンは暴落を続けた。

日本政府は、まず国内邦銀に対して、韓国に対する債務繰り延べの合意を取り付けることに成功し、欧米系銀行の同調をも引き出した。

この日本政府の交渉妥結は市場に大きなインパクトを与え、1ドル=1678ウォンだった為替は翌日には1524ウォンにまで急回復。韓国の国家破産は回避された。

これらを見ると、当時の韓国の通貨危機を救ったのは日本及び日本の信用力であり、日本が支えるという"信頼"がどれほどの威力を持っているかが良く分かる。

それほど信用のある日本が、今回の通貨スワップについて、韓国政府から延長要請があった場合に考えると"公式"に発表した。この意味は決して軽くない。なぜなら、日本が世界に向かって、今後も韓国を支えるとは限らないという宣言をしたことになるから。

確かに、通貨スワップが延長されなかったとしても、表向きは、130億ドルの枠が100億ドルになるというだけ。スワップ総額でみれば、それほど大きな事のようにみえないかもしれない。だけど、それと市場の信頼とはまた別の話。

6月9日、韓国銀行のユ・サンデ国際局長は「韓銀、日韓通貨スワップ延長は、すでに議論すべき問題ではない。…今回の満期が到来する通貨スワップ資金は、金融協力のレベルで見れば重要だが、危機に対するレベルでは意味は大きくない。有効期限が1カ月しか残っていない状況ではあるが、真剣に考えていなかった。状況を見て決める」と述べているけれど、たとえ、危機という意味では大きくなかったとしても、市場の"信頼"や"安心"という意味では、日本の後ろ盾を失うのは、決して小さなことじゃない。

韓国が反日ブーストをかますのは勝手だけれど、それによって、自分で国家的損失を招くことになるかもしれないことに気づいているのだろうか。




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この記事へのコメント

  • 白なまず

    白村江の戦いを思い出す時です。百済に肩入れして唐・新羅連合軍と戦い大敗したのを繰り返し、情け深く百済難民を受け入れた結果、朝廷を牛耳る藤原(中臣鎌足=百済の王子:扶余豊璋)を産んだのです。彼らは決して恩に報いる事はせず、仇なす者です。兎に角、朝鮮人に餌を与えるべきではありません。

    因みに、新羅を建国したのは秦王国(=海神=綿津見=賀茂氏系渡来人=弥生人=徐福の末裔)なので、百済VS新羅の戦いでもあり、新羅系は源氏に繋がるのですが、元は出雲、九州北部、大和にあった邪馬台国連合
    の本流で、朝鮮戦争中に難民としてやって来た朝鮮半島南部の慶州や済州島出身の朝鮮人は新羅系と無関係ではなく、韓国の左翼系の大統領の出身地が百済(全羅南道)と言う事実は歴史的な因縁を感じます。だから、新羅系の在日朝鮮人は認識を新たにして、反韓国左翼、反反日日本人=藤原系=近衛文麿で安倍総理に協力すべきです。安倍総理のご先祖さまは当然、親新羅系の天武天皇の配下でした。そして、伊勢神宮を皇祖を祀る社にして復活したのも天武天皇です。伊勢神宮、出雲大社ともに遷宮の今年は天王山です。出雲系の豪族の末裔が復権する。そして龍神が復
    2015年08月10日 15:22
  • プチ農

    こんばんは 
    中国とのスワップが無意味なのは韓国の中銀の連中が一番わかっているはず。ウォン下落時に不足するのはドルであり、ドルを調達できるのは日銀のみです。中国からどのようにドルを調達するのでしょうかね??
    2015年08月10日 15:22
  • sdi

    実際、チェンマイイニシアティブに基づき韓国がいざというときに通貨スワップで借りれる総額は384億ドルで、そのうちIMFを経由しない(IMFから取り立てを受けない)額が115億ドルです。いましきりに騒がれている30億ドルは、この115億ドルに上乗せされている別枠です。
     この金額を大きいとみるか小さいとみるかですが、韓国側は「小さい」と見ているのでしょうね。実際、この30億とさらに別枠でもっと巨額のスワップ「枠」(あくまで枠)が去年廃止されましたか、マーケットは大して反応しませんでした。今回、この30億ドル分が廃止になっても、「当然の帰結」というところが正しいかと思います。まあこれで、日韓のスワップ枠はチェンマイイニシアティブの条文に書かれた枠だけなります。日韓の二国間協定という「特別な関係」一つ終焉した、という意味あいこそありますが韓国もマーケットもそんなに動揺しないんじゃないでしょうか?
     韓国は「中国からの使い勝手良いもっと大きなスワップ枠があるから問題ない。それを背景に信用を保持できる」と、考えているでしょう(日本円で5兆のこえていたはず)。韓国は人民元経済圏への傾斜を強めるこ
    2015年08月10日 15:22
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    もう南朝鮮は大きな問題ではない.
    オバマ大統領のどうし良うもない支那への傾斜は
    日本のTPP参加を全く無意味にしようとしている.
    オバマ大統領の安倍(日本)嫌いは相当なもののようだ.
    これは単に米国の安全保障に対してオバマ大統領を
    始めとする米国リベラルの意識の乖離が
    引きおこしたネジレである. この大統領は過去の
    ルーズベルト大統領に並ぶ最悪の政権である.
    今後の支那共産党政権の崩壊に伴って米国の
    支那化が急速に進むに違いない.

    日本はどうするか.

    米中韓以外との連携を強めていく以外にはあるまい.
    大東亜戦争直前の独立の危機が再び訪れる.
    幸いなことは, オバマ大統領が米国そのものでは
    ないことである. つまり, あと三年間を辛抱して
    しのぐ強さが我々に求められている.
    2015年08月10日 15:22

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