奔走する安倍総理と高気圧酸素治療
6月8日、安倍総理は今月23日投開票の東京都議選に向けた遊説をスタートさせた。この日、安倍総理は、都内6カ所の街頭で演説。日本を取り戻す戦いだと支持を訴えた。
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ついこの間まで中東を歴訪したかと思えば、先日は立て続けにインド、フランス両首脳との首脳会談。そして、都議選に参院選。まったく行き着く暇もない。官邸内では安倍総理に休養を取るよう求める声が上がっている。
政権発足から6月までの150日余りの時点で、安倍総理が自宅で過ごした「完全休養」はわずか3日。新聞の首相動静を見ても、正に分刻みのスケジュールがびっしり。民主党政権の3年半を3ヶ月で超えたとも言われる安倍総理だけれど、朝から晩まで終日「書類整理をして過ごす」なんて日ばっかりだったどこかの首相とが大違い。
5月30日、菅官房長官は、会見で「正直言って、そばで仕えていて週1回は休んでほしいと強く思っている。…円高デフレから脱却したい、休日を利用して海外を訪れ国益のため頑張りたい、という危機感を持ち、脇目も振らず働いている。…そうしたことを踏まえているのだろうが、とにかく一段落したら休んでほしい」と述べている。そのとおり。いくらなんでも働き過ぎ。
そんな安倍総理だけれど、6月8日の東京都議選の遊説を終えた後、東京医科歯科大医学部付属病院で「高気圧酸素治療」を受けた。どうやら、谷内正太郎内閣官房参与がこの治療を受けるよう勧めたようで、流石に見かねたのだろうと思われる。
高気圧酸素治療(HBO、Hyperbaric oxygen therapy)とは、大気圧よりも高い気圧環境の中に患者を収容し、この患者に高濃度の酸素を吸入させることによって、病態の改善を図る治療の事。
通常、大気圧下で高濃度の酸素を吸った場合、血液には酸素はほとんど溶け込まず、主に赤血球によって運ばれるため、100%酸素を吸っても血液中の酸素量の上昇には限界がある 。だけど、ここで、高い圧力をかけてやると。酸素は、直接血液に溶けるようになる。ゆえに、赤血球の数に関係なく、血液中の酸素量を増やすことができ、細胞に酸素が行き渡ることで活性化。疲労回復や様々な症状に効果があるという。
2002年のワールドカップ直前に、イングランド代表のベッカムは左足甲の骨折したのだけれど、そのとき、この高圧酸素治療法を行い、わずか2ヶ月で復帰できたと話題になったことがある。
尤も、このときベッカムが使ったのは、「オアシスO2」と呼ばれる、一人用の高圧酸素カプセル。高圧といっても、気圧は1.3気圧程度で酸素も100%酸素という訳ではなかった。
それに対して、安倍総理が受けた、東京医科歯科大の「チェンバー」と呼ばれる装置は、最大気圧を6気圧迄上げられるれっきとした治療用装置。「チェンバー」は、16名が同時に治療可能な日本最大級の治療装置で、年間6000名前後の治療を行っているそうだ。
この「チェンバー」による治療は、大体2時間かけて行われる。治療を受ける人は、2~3気圧にまで高めたチャンバーに入って、椅子に座り、酸素マスクをつけて、そこから100%酸素を体内に送り込んでいく。
治療を開始して加圧する段階で、何度か耳抜きをするそうなのだけれど、担当医がカメラで室内のモニタしながら、折々に酸素マスクの着脱を指示。1時間半を過ぎたあたりから、今度は30分程かけて減圧をして治療は終わる。この「チェンバー」で、3気圧条件で高気圧酸素治療を行うと、「オアシスO2」のような、通常の高圧酸素カプセルを使った場合と比べて、血液中に溶け込む酸素量は11倍にもなるのだそうだ。
安倍総理は、治療後、周囲に「取りあえず、すっきりしたかな」と話したそうだけれど、世界的にも難治性潰瘍、放射線性障害・潰瘍の治療に高気圧酸素治療が積極的に行われ、日本医科歯科大でも、放射線性膀胱炎、直腸炎、咽頭潰瘍等で高い有用性があるそうだから、安倍総理の持病である、潰瘍性大腸炎にも効果があるかもしれない。
安倍総理は、公務のない日は、都内のジムで汗を流したり、各界人との会食を入れたりすることもしばしばで、秘書官が、完全休養日を入れるよう進言しても、「畑の違う人たちとふれあう方がリフレッシュになる」と意に介さないそうなのだけれど、休養とまではいかなくても、谷内参与の進言を聞き入れて、治療を受けたことはよかったと思う。
時として、一国の宰相の健康は、国の命運に関わることだってある。安倍総理には、取れるときに休養を取って欲しい。
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