水道水と名水とミネラルウォーター

 
更に昨日のエントリーの続きです

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1.水道水を飲まなくなった日本人

昨日のエントリーでは、日本の水源は綺麗な水であることについて述べたけれど、近頃は日本人でも水道水を直接飲まなくなってきている。

6月2日から3日にかけて、リサーチパネル社がネットで「あなたは水道水をそのまま飲みますか?」というアンケートを取った。その結果、「飲む」と答えた人は54.4%、「飲まない」と答えた人は45.6%と拮抗し、埼玉・千葉・東京・滋賀・大阪・兵庫・香川・福岡・佐賀・長崎・沖縄の11都府県では「飲まない」が過半数を超えた。因みに、最も「飲む」率が高かったのは山形県の78.4%、最も低かったのは沖縄県の34.0%。

「飲まない」と答えた人のコメントには「浄水場での殺菌剤が心配で沸騰水のみ飲用」とか「まずいので、浄水器の水しか飲みません」とか「お茶にすることが殆どだけど、どうしても飲みたいときは飲む。くさいからできることなら飲みたくないわー。」とか、ストレートにおいしくないから飲まないというコメントが比較的多い印象。

一方、「飲む」と答えた人の方は「普段はミネラルウォーターだがそれがなくなったら仕方なく水道水で済ます」とか「お茶にすることが殆どだけど、どうしても飲みたいときは飲む。くさいからできることなら飲みたくないわー」という具合に、仕方がなく飲んでいるという回答から、「田舎だから十分美味しい」という回答まで、割と幅がある。

平成24年7月、国土交通省は平成23年度版の「全国一級河川の水質現況」を発表しているけれど、それをみると、田舎の水系は確かに水質が高く、AAもしくはA類型が目白押し。特に、河川では、最高クラスの水質を意味するAA類型の基準はBODで1mg/L以下なのだけれど、AA類型のトップ10クラスともなるとBODの値は0.5~0.6mg/Lと基準値の更に半分程度しかない。確かに、ランキングの上位は北海道や東北、九州と地方が多く、「田舎だから美味しい」というコメントには妥当性があると思われる。




2.ミネラルウォーターの原材料

水道水を飲まない人が普段飲む水として挙げることの多かったものに「ミネラルウォーター」がある。ではミネラルウォーターは、どうやって出来るのか。

日本の国土は急峻な山々からなり、空から降った雨や雪の大部分は、一気に地表を下って海に流れ込む。そして、その一部が地中深く染み込んで、地下水となっていく過程で、土壌の中の多種微量のミネラル成分を溶かし込んでいく。この地下水を汲み上げて、ボトルに詰めたのが所謂「ミネラルウォーター」。

だけど、一口に「ミネラルウォーター」と言っても、日本においては、その製法・成分によって呼称が異なったりする。農林水産省はミネラルウォーター類の品質表示ガイドラインを策定しているのだけれど、それによると、「ミネラルウォーター」は次のように区分される。
ナチュラルウォーター:特定の水源から採水された地下水を原水とし、沈殿、濾過、加熱殺菌以外の物理的・科学的処理を行わないもの
ナチュラルミネラルウォーター:ナチュラルウォーターのうち、地層中の無機塩類が溶解した地下水を原水としたもの
ミネラルウォーター:ナチュラルミネラルウォーターのうち、ミネラルの調整、抜気、複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターの混合等が行われているもの
ボトルドウォーター:ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター以外のもの
とまぁ、地下水の種類によって分けられている。更に、その地下水も細かくみれば、次のような種類がある。
1.浅井戸水:浅井戸から取水した地下水
2.深井戸水:深井戸から取水した地下水
3.湧水:自噴している地下水
4.鉱水:取水した地下水のうち溶存鉱物質等により特徴付けられる地下水
5.鉱泉水:水温が25℃未満の自噴する地下水で、溶存物質等により特徴付けられる地下水
6.温泉水:水温が25℃以上の自噴する地下水、又は温泉法第2条に規定される溶存鉱物質等により特徴付けられる地下水水のうち、飲用適のもの
7.伏流水:上下を不透水層にはさまれた透水層内に生じる流水
日本列島は、山が高峻で平野が狭く、地下水も大陸と比べて短期間で海に達するために、地下水中に溶出するミネラル成分は比較的少なく、石灰岩層の水源も少ない。こうしたことから、日本の地下水には、カルシウムやマグネシウムの金属イオンの含有量が少なく、こうした水を"軟水"という。

水の硬度「(カルシウム濃度 (mg/L)×2.5 + マグネシウム濃度 (mg/L)×4.1」で近似され、WHOの定義では、硬度120以下を軟水と定義しているのだけれど、日本の水道水は、硬度80前後。

こちらに、いろいろなミネラルウォーターの硬度が書いてあるけれど、ヨーロッパのミネラルウォーターは軒並み、硬度が数百から1000以上あるのに対して、日本のそれは、沖縄を除いて100以下。如何に、日本の水の硬度が低いかが分かる。
※無論、大陸の水は全て硬水というわけではなく、当然軟水もある。

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3.おいしい水の7条件

1984年、当時の厚生省(現・厚生労働省)は『おいしい水研究会』なるものを発足させ、「おいしい水の7条件」というのを纏めたことがある。その7条件は次のとおり。
1.蒸発残留物:(30~200mg/L) 主にミネラルの含有量を示し、量が多いと苦味等が増し、適度に含まれるとまろやかな味がする。
2.硬度:(10~100mg/L) ミネラルの中で量的に多いカルシウム・マグネシウムの含有量を示し、硬度の低い水はクセがなく、高いと好き嫌いがでる。
3.遊離酸素:(3~30mg/L) 溶け込んでいる炭酸ガスや酸素の量を表す。水にさわやかな味を与えるが、多いと刺激が強くなる。
4.過マンガン酸カリウム消費量(330mg/L以下):有機物量を示し、多いと渋みをつけ、多量に含むと水の味を損なう。
5.臭気度:(3以下) 臭いがつくと不快な感じがする。臭気度 3以下とは、 異臭味を感じない水準。
6.残留塩素:(0.4mg/L以下) 水にカルキ臭を与え、濃度が高いと水の味をまずくする
7.水温:(20℃以下) 冷やすことによりおいしく飲める。体温と比較して20~25℃低い温度(10~15℃)の水がおいしいとされている。
当時の『おいしい水研究会』は、学者・研究者及び地方自治体の水道関係者からなる10名の委員と、それ以外の研究会委員で、構成されており、その中には、女優(声優)の大山のぶ代さん、「酒」編集長の佐々木久子さん、利き水名人といわれた東京都水道局の前田学氏らがいたそうだ。

これら7条件をみると、おいしい水はこういうものなのか、と思ってしまうのだけれど、この条件には、「ここに示した数値は、おいしい水の一応の目安である。一般的にいって、これに適合したものであれば、ほとんどの人がおいしく飲めるといってよいと思われるが、逆に、この一部に適合していないからといって、かならずしもその水がおいしくないということではない。たとえば、硬度や遊離炭素の濃度がこの条件にはずれた水であっても、その他の水質成分のバランスからおいしく飲める水というものもあれば、おなじ水でも、飲む人の好みやいろいろな条件によって、おいしく感じられたりそうでなかったりもする」という但し書きがある。

それならば、なぜ、こんな条件をわざわざ出してくるのかと思うのだけれど、実は、『おいしい水研究会』の発足の元になったのは、1984年の3月26日に厚生大臣宛に出された生活環境審議会の「高普及時代を迎えた水道行政の今後の方策について」という諮問に対する答申。

この答申では、「水道水源である河川公共水域の水質汚濁が進行し、水道水の安全性等を確保する上で大きな問題」と指摘し、「異味異臭等いわゆる"まずい"水道水の供給が…利用者に不安感を与え、場合によっては水道に対する信頼感を損なうこととなる恐れもあるので、水道によるおいしい水の供給を達成できるよう努める必要がある」としている。

こうしたことから、全国清涼飲料工業会・技術委員の福田正彦氏は、「おいしい水を取り上げる目的は2つあって、その1つは水をおいしくすることによって消費者の不安感、不信感をなくすこと、もう1つはオゾン、活性炭処理などいわゆる高度処理によって微量成分などを除去することである」と指摘している。

実際、当時、国民生活センターが、飲料水についての調査をしたところ、日常の飲料水のなかで「生水」や「白湯(さゆ)」を飲まないという人が63.4%もいたから、それを食い止めたいという意図もあったのかもしれない。




4.名水百選

というわけで、この「おいしい水の7条件」は、元々、水道水の品質指針としての性格を持っていた。例えば、硬度を10~100mg/Lを条件としているところなんかは、もろに"軟水"が美味しい水だということを意味してる。日本の水をターゲットにした条件であることは疑いない。

では、巷でいわれている、「名水百選」であれば、この「おいしい水の7条件」を満たしているかというと、必ずしもそうとは限らない。

「名水百選」は1985年に環境庁が、水資源、水環境の保護の立場から、関係する地域住民の努力を顕彰する意味合いを込め設定されたもので、「そのまま飲める美味しい水」という意味じゃない。

「名水百選」の選定条件は次の5つ。
1)水質・水量、周辺環境、親水性の観点からみて、保全状況が良好なこと
2)地域住民等による保全活動があること
3)規模
4)故事来歴
5)希少性、特異性、著名度等
1985年の選定のときは、各都道府県から報告のあった784件を31件に絞り込み、その後、河川等から69件を選定して加え、名水百選とした。

その後、水環境等の保全が叫ばれるにつれ、水環境保全を一層推進する目的で、地域の生活に溶け込んでいる水環境の中で、特に地域住民による保全活動が持続的に行われ続けているものを、新たな「名水百選」として2008年に選定した。

選定に当たっては、各市町村から提出された名水を各都道府県が最大4件推薦し、集まった162件を「平成の名水百選調査検討委員会」が審査する形で行なわれた。

このように、名水百選は、その選考過程からみても、必ずしも、美味しい水だとは限らないのだけれど、昨日のエントリー「毒水の中国と浄水の日本」でも見てきたように、日本の水源の水質はもともと高いから、「保全状況が良好」で「地域住民等による保全活動がある」ような名水は、そのまま「おいしい水の7条件」を満たしている可能性は高いと思われる。

たとえば、こちらのサイトでは、名水百選に選ばれた「尚仁沢湧水」は、おいしい水の7条件を満たしているとアピールしている。

名水百選は全国各都道府県で選ばれているから、どこにいても、美味しい水を体感することができる。日本は本当に水に恵まれている。

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この記事へのコメント

  • mohariza

    今は、日本酒は呑まなくなったが、日本中をほとんど回ったので、
    体験上分かっているが、日本酒が美味い所は、水が美味い所で、
    地図上、黄の名水が1の<必ずしも不味い水の県と云えないのだが・・・>県でも美味い地酒の日本酒があり、
    埼玉、千葉、茨城、静岡、愛知、奈良、鳥取でも、<沖縄は、日本酒の代わりに泡盛があるし・・・、但し、大阪では、美味い日本酒は呑んだ記憶は無いが・・・、>地酒の美味い酒があるので、
    また、新潟の日本酒が美味いことになっているが、米は新潟産では無く、兵庫県特A地区産山田錦がほとんどで、地酒としての日本酒の美味さは、米の旨さには必ずしも関係は無く、
    日比野氏が云われるように<どこにいても、美味しい水を体感することができる>のは事実です。
    それは、日本が降水量が多いこと、標高差の落差が大きいこと等が関係し、
    ヨーロッパの大陸のように古い地層では無いことから来ていると思われます。
    (註1:韓国<朝鮮半島は、北中国大陸と一緒に大陸移動した大変古い陸塊で、水は不味い国です。富山、福井は日本列島では、大変古い、中国大陸から移動した陸塊ですが、日本列島等と合体した所為もあり、地質は変質
    2015年08月10日 15:22
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    なぜ人は水を気にするか.

    それは信心の問題であり儲けの問題である.

    ネットで浄水器を検索すれば出てくる出てくる.
    流石に非科学的な宣伝はなくなったが, 人は
    「奇麗な水を飲むことが大事だ」という文句に弱い.
    微弱放射能の害を気にするのとあまり変わらない.

    害を及ぼす放射能の強さには閾値がある.
    何故なら, 人間にの細胞には自己修復機能があるから.
    修復できる範囲内であれば問題無い.
    逆に, 機能は使わなければ弱くなるのだから,
    ある程度の放射能で自己修復機能を活性化する方が
    良いと言う主張さえあり得る.

    水も同じ. 害にならない範囲の成分であれば
    大体は何が入っていても大丈夫.
    後は, 科学ではない, 気分の問題だ.
    だから, 信心と呼んでも良かろう.
    気になるなら活性炭を通せば良い.
    それ以上の違いが分かるものがどれほどいるのか?
    2015年08月10日 15:22

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