毒水の中国と浄水の日本
昨日のエントリーのつづきです。
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1.中国の水源は毒水だらけ
昨日のエントリーでは、香港の水質をテーマに挙げたけれど、では、中国大陸の水質はどうなのか。
2012年6月に発表された、2011年中国環境状況公報(中国環境白書)によると、やっぱりというか、汚染されている。
中国は、長江、黄河、珠江、松花江、淮河、海河、遼河を始めとする十大水系、469ヶ所について水質を観測している。その水質は、昨日のエントリーで紹介した「Environmental Quality Standards for Surface Water」に従って評価している。
この基準では、飲料に適するとされるのはⅠ~Ⅲ類で、Ⅳ、Ⅴ類は農業・工業用水にのみ使用可能としているのだけれど、今の中国では、Ⅴ類より更に水質の悪いものを劣Ⅴ類として公表している。この劣Ⅴ類というのは、「何も使用できない・触る事も不可」というもので、殆ど"毒水"と言ってもいいくらい。2011年の結果は次のとおり。
この表で取り上げられている26の湖沼(ダム)は中国が直接管理しているもので、飲用に適するⅠ~Ⅲ類の湖沼は11で、Ⅳ~Ⅴ類は13、劣Ⅴ類は2。主要な汚染指標は全リンと化学的酸素要求量(COD)。
全リン(TP:total phosphorus)とは、リン化合物全体を指し、有機態リンと無機態リンの合計。これらは、どちらも溶解性と粒子性に分けられるのだけれど、溶解性のものは、栄養塩として藻類に吸収利用されるため、富栄養化現象の直接的な原因物質となる。粒子性のものは、カルシウム、鉄、アルミニウムなどの金属とリン酸イオンが結合した不溶性の塩で、藻類に利用されることなく沈殿する。
また、化学的酸素要求量(COD:chemical oxygen demand)とは、水中の有機物等を酸化剤で化学的に酸化したときに消費される酸化剤の量を、酸素量に換算したもの。CODが高いと、その水中に有機物が多いことになるから、富栄養化が進んでいるかどうかの指標として用いられる。一般に、サケ、マス等には3mg/L以下、コイ、フナ等には5mg/L以下が望ましいとされ、農業用水としては、根腐れ病の防止の点から6mg/L以下が良いとされる。
中国の水質基準(Environmental Quality Standards for Surface Water)では、CODはⅠ~Ⅱ類で15mg/L以下、Ⅲ類で20mg/L以下、Ⅳ類で30mg/L以下、Ⅴ類で40mg/L以下。中国が管理する湖沼(ダム)の半分以上がⅣ類以下の水質であるということは相当に富栄養化が進んでいると言える。
ただし、2011年6月発表された2010年白書では、水質はもっと悪かった。2010年の結果は次のとおり。
2010年の水質は、劣Ⅴ類の湖沼が10あった。それから比べると2011年の劣Ⅴ類の湖沼は2に減っているから、それなりに水質改善されているように見える。だけど、これには裏がある。財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)北京事務所長の小柳秀明氏によると、2011年の評価では、これまで主要な汚染原因物質であった全窒素の項目を、2011年の評価対象からは外しているという。その結果、表向きには改善されたように見えているので注意が必要だと指摘している。
全窒素(TN:total nitrogen)とは、水中に含まれる全ての窒素化合物のことで、有機態窒素と無機態窒素に分けられる。有機態窒素は、人間や動植物の生活に起因するタンパク質、アミノ酸、尿素、核酸等の他、製薬、食品、石油、化学工業等の工場排水にも含まれる。また、無機態窒素は植物の栄養素として直接的に利用され、富栄養化の指標としては全窒素が尤も良く使われている。
こんな大事な指標を外さないと、水質改善されたように見えないということは、実際の汚染状況は2010年当時からあまり変わってないのではないかと思う。
2013年3月13日、中国政協委員の李景虹氏は「中国の水資源は世界で最も貧しく、汚水排出量は世界で最も多い。…中国の1人当たりの水資源量は世界平均の4分の1に過ぎない。最近では一部の年で地下の水質が安全基準に達せず、水源の水質汚染が悪化の一途をたどっている。…水資源の安全が確保されれば、人々の健康問題も解決されるだろう」と述べたそうだから、中国当局も自国の水質の酷さは十分認識していると思われる。
2.高品質な日本の水源
では、翻って、日本の水質はどうか。
一般に水源には、河川水、ダム湖水、湖沼水、地下水などがあるのだけれど、日本の水道水源の約7割は、ダム湖水、河川水を始めとする地表水で、残りの3割は伏流水や地下水で賄っている。
日本における水源の水質管理は、環境基本法で定められている。河川は水の利用目的などに応じて、AAからEまでの6段階の類型を指定し、湖沼ではAAからCまでの4段階の類型を定めている。
河川で水道利用可能としているのは、AA類型からB類型までの上から3つで、AA類型のBODは1mg/L以下、B類型でも3mg/L以下と定められている。
また、湖沼で水道利用可能としているのはAA類型とA類型の上から2つで、AA類型のCODは1mg/L以下、A類型は3mg/L以下となっている。
ここで、河川に適用されているBOD(Biochemical Oxygen Demand)というのは、生物化学的酸素要求量と呼ばれる指標。
水中の微生物には有機物を分解する働きがあるのだけれど、その際に酸素を消費する。この消費する酸素量を生物化学的酸素要求量(BOD)という。水質が良ければ、そこに含まれる有機物が少ないから、消費する酸素の量は少なくなり、逆に汚れていれば、含有する有機物の量に合わせて、酸素消費量も多くなる。BODが10mg/Lリットル以上になると、悪臭が発生するといわれている。
何故、河川にはBOD、湖沼にはCODと、環境基準の指標が分かれているのかには、2つの理由がある。河川は水の流下速度が速く、河川自体に有機物が滞留する時間が短い為、微生物によって比較的短期的に分解される有機物だけを考慮しても問題ないのに対して、湖沼は逆に水の滞留時間が長く、長期的に分解される有機物まで考慮する必要があるということが一つ。
もう一つは、湖沼には、普通、植物性プランクトンや藻類などの光合成生物が沢山存在するのだけれど、これらが光合成によって酸素を作ってしまうため、BODのように微生物による酸素消費量を測定しようとしても、正確に測定できないから。
実際、日本の水源の水質がどうなっているかというと、環境省が平成24年12月に報告している公共用水域水質測定結果によると、河川のBODについては、全国に2554ヶ所ある類型指定水域の環境基準達成率は93.0%と前年度の92.5%に引き続き、90%以上を達成している。また、昭和54年からのBOD値の年間平均値の推移をみると、20年前の平成2~3年当時では、2.3mg/L程度だったのが、年々低下し、平成23年度には1.3mg/Lまで低下。AA類型に近いところまで改善している。
一方、湖沼のCODについては、全国188ヶ所の類型指定水域の環境基準達成率は53.7%で、近年はほぼ横這いで推移しているのだけれど、細かくみると、20年前には3mg/L台後半で横這いだったのが、平成15年以降には3mg/L台前半と、若干改善している。
ただ、中国の水質基準(Environmental Quality Standards for Surface Water)と比較すると分かるとおり、日本の水質基準は中国のそれよりずっと厳しい。中国の水質基準では、最高水準のⅠ類の規格でも、BODは3mg/L、CODは15mg/L。日本の水質基準と比較すると、中国のBOD基準は日本のB類型に相当し、CODでは、水道には使用できず、工業用水や農業用水として指定されるB類型になる。
つまり、それだけ日本の水というのは、そのままで高品質であり、中国からみれば涎がでるほど貴重な資源ということになる。
近年、中国資本による水源地買収が話題になっているけれど、日本政府も自国の水資源を「高度戦略物資」として捉え、管理・運用する方針を出してもいいと思う。
この記事へのコメント
深月
中国がチベット支配に執念を見せるのは、水の確保の問題が絡んでいるという話があります(中国を流れる大河の水源はチベットにある&北京周辺の乾燥化が進んでいる)。
四川大地震で三峡ダムがにわかに注目されましたが、このダムの造成に関しても、水の確保の問題があったという話でした。三峡ダムがなかったら、下流域の汚染&荒廃のスピードはもっと早かったのだろうかと思うと、複雑な気持ちになります。
mohariza
その名の下に、人民(:国民)の死は粗末にされていました。
マスコミ、(医学等)学会等は、企業等の権力者の云うままにダンマリを決め込んでいました。
現代中国は、まさしく、過去の日本の縮図であり、まだまだ大半の人民は、切り捨てのゴミのようなものです。
しかし、共産主義をこのまま継続し続けようとしても、結局、特権階級の権力維持の機構でしか無いものは、
中国の過去の歴史から、必ず革命が起こり、それまでの権力組織は廃絶されて来たので、そう遅くない時期にそうなる、と思われます。
ちび・むぎ・みみ・はな
何でもカンでも売り物にする発想はいかがなものか.
日本の水も日本の空気も全て日本人のものであって,
代価をとって相応しくない者達に与えるものではない.
日本の売りものは日本人が働いた結果で良い.
なぜなら, この日本の自然を愛してこの数万年以上
を日本列島に暮らしてきたものが日本人なのであるから,
日本人は日本の自然の賜であり, 日本の自然は日本人の
ものなのである. 地球上に人間が足跡を示して以来,
多くの自然が人間の生産活動のために破壊されてきた.
例えばオーストラリア. イギリス人の入殖以来,
多くの動植物が破壊されてきたが, 現在やっと定常状態
に向かいつつある. この時やっとオーストラリア大陸は
オーストラリア人のものと言えるのである.
日本の自然は世界のどこの地域と比べても強いのであるが,
それでも日本が総力を挙げて生産力を高めたなら
日本の森林は今以上の惨状になっていたに違いない.
日本の自然と共生してきたと言う点でこの自然は日本人の
ものと言える.
であるから, 日本の自然と共生していないものに,
日本の自然の僅かでも与え