宮崎駿の憲法改正反対発言について

 
今日は、このネタです。

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スタジオ・ジブリの宮崎駿監督が、「慰安婦問題で日本は謝罪して賠償すべきだ」などとインタビュー記事で発言し、騒ぎになっているようだ。

問題の記事は、2013年7月10日からスタジオ・ジブリが全国の書店で配布した、無料の小冊子「熱風」7月号に掲載されたもので、「憲法を変えるなどもってのほか」と題した論考。

くだんの小冊子は、スタジオ・ジブリが、ホームページ上でPDF配信(配信期間は2013年8月20日18:00迄)しているから、そちらを参照していただければと思うけれど、大雑把に、筆者なりに論旨を整理すると次のとおり。
a)子どもの頃は「本当に愚かな戦争をした」という実感があった。酷い大人をみてきて日本がきらいになった。

b)自分は、本質的には大義の為に死んでゆく人間だ。だから、もうちょっと早く生まれていたら、熱烈な軍国少年になっていたはずだった。

c)日本がきらいだったが、あまりにも自分の中に何もないので、「自分よりも大切なものが何かあるんじゃないか」と思っていた。

d)30代になって初めてヨーロッパへ行って帰って来た時、自分がどれだけこの島の植物や自然が好きかということがよくわかった。人がいなければ日本はものすごくきれいな島だと思った。日本の国や日の丸が好きになったのではなく、日本の風土というのは素晴らしいものだという認識を持つようになった。

e)歴史ということで言えば、僕たちに見えるのは目の前にある昔のことだけ。日本という国で政治家をやるのであれば、そのぐらいのことについては教育を受け、自分で知ろうとしなかったら国際的に通用しない。

f)選挙をやれば得票率も投票率も低い、そういう政府がどさくさに紛れて、思いつきのような方法で憲法を変えようなんてもってのほか。

g)憲法改正は国の将来を決定していくことだから、できるだけ多数の人間たちの意見を反映したものにしなきゃいけない。多数であれば正しいなんてことは全然思っていないけれど、変えるためにはちゃんとした論議をしなければいけない。

h)今は、ちょっと本音を漏らして大騒ぎを起こすと、うやむやに誤魔化して「いや、そういう意味じゃないんだ」みたいなことを言っている。政府のトップや政党のトップたちの歴史感覚のなさや定見のなさには、呆れるばかり。考えの足りない人間が憲法なんかいじらないほうがいい

i)国際的な舞台に出してみたら、総スカンを食って慌てて「村山談話を基本的には尊重する」みたいなことを言う。「おまえはそれを全否定してたんじゃないのか?」

j)憲法9条と照らし合わせると、自衛隊はいかにもおかしい。おかしいけれど、そのほうがいい。
 
k)国防軍にしないほうがいい。職業軍人なんて役人の大軍で本当にくだらなくなるんだから。今、自衛隊があちこちの災害に出動しているのを見ると、やっぱりこれはいいものだと思います。隊員たちはよくやっていて、礼儀正しい。イラクに行かざるを得なくなっても、一発も撃たず、ひとりも殺しもせず帰って来た。立派だったと思う。…僕はだまっていましたが、感動していた。

l)本当に戦火が起こるようなことがあったら、ちゃんとその時に考えて、自衛のために活動しようということにすればいい。立ち上がりは絶対遅れるけれど、自分からは手を出さない、過剰に守らない。そうしないと、本当にこの国の人たちは国際政治に慣れてないからすぐ手玉に取られてしまう。

m)スイスやスウェーデンという中立国に憧れたことは事実。でも、実際は違うわけで、非武装中立ということは現実にはあり得ない。だからリアリズムで考えても、一定の武装はしなきゃいけない。ただ、それ以上は「ちょっと待て」っていうのが正しい。

n)「戦前の日本は悪くなかった」と言いたいのかもしれないけれど、悪かったのだ。それは認めなきゃダメ。慰安婦の問題も、それぞれの民族の誇りの問題だから、きちんと謝罪してちゃんと賠償すべき。領土問題は、半分に分けるか、あるいは「両方で管理しましょう」という提案をする。この問題はどんなに揉めても、国際司法裁判所に提訴しても収まるはずがない。

o)かつて日本が膨張したように、膨張する国もある。でも、その度に戦争をするわけにはいかない。そんなことより、今は、日本の産業構造を変えていこうというまじめな取り組みをすべき。

p)「徴兵制をやればいいんだ」というようなことを言う馬鹿が出てくる。「自分はちゃんとしているけれど、他の人はちゃんとしていない」という発想は捨てろ。


この論の中で、宮崎氏は幼少時の体験として、酷い大人ばかりをみてしまったようなのだけれど、それが本質的に理想を追い求めるタイプであった宮崎氏をして、人間不信に陥らせたのではないかという印象を筆者は受けた。

宮崎氏は、憲法改正はもってのほかと言っているけれど、それは、憲法改正そのものが駄目というのではなくて、改正しようとする"大人達"、すなわち政治家達が、碌に議論もせず、誤魔化しで改正しようというその態度に問題があると述べている。もしかしたら、彼らの中に幼少時に体験した"酷い大人達"の影を見、嫌悪感を覚えているのかもしれない。

ただ、その一方で、自衛隊としての災害派遣等での働きを評価していること。憲法9条に照らし合わせると、自衛隊はおかしいこと。そして、非武装中立は現実として有り得ないことを認識しているから、まるっきり"お花畑"ではないように思われる。

要するに、現実問題として、国が一定の武装をする必要は認めるものの、宮崎氏本人に権力者あるいは日本人に対する不信感があり、それゆえ、今の日本人は武力をコントロールできはしない、と思っているのではないか。だから、日本の武力をガチガチに雁字搦めにして、暴走をさせないようにしている現行憲法はそのままでよく、改正するなんてもっての他というロジックになっているように思う。

こういう感覚が、この年代の方々に共通した考えなのかどうなのかは分からないけれど、宮崎氏の論点の中で、筆者が気になった点について、いくつか触れておきたい。それは、上記のk)、l)、n)、o)の各項目。

まず、k)についてツッコミを入れるとするならば、自衛官とて公務員。だから国防軍でないはずの自衛隊だって役人の大軍といえる。だから、宮崎氏は同じ役人の大軍である自衛隊が国防軍になった途端くだらなくなるということについて、ちゃんとその理由を説明しなければ説得力がない。何より自身が自衛隊を感動するくらい立派だと褒め称えているのだから、それが、くだらなくなるにはそれ相応の理由がある筈。

もしかしたら、宮崎氏の深層心理化で旧帝国軍は、今の自衛隊の如くあって欲しかったという願望があって、その裏返しとしての発言なのかというのは穿ちすぎか。

次にl)についてだけれど、現在の戦争は、まず最初の一撃が戦局を大きく左右する。初段のミサイル飽和攻撃で、各基地を叩かれたら、下手をするとそれだけで反撃できなくなるくらいやられてしまうことだって有りうる。そんなときになって初めて、憲法改正なんて出来る訳がないし、自衛隊法改正だって、国会審議している間に国会議事堂が敵軍に包囲されているかもしれない。だから、立ち上がりが遅れることそのものが致命的になり得ることを知らないといけないと思う。

そしてn)については、御立派な意見ではあるかもしれないけれど、残念ながら、これが通じるのは、せいぜい常識を持っている相手だけ。謝っても、賠償しても、延々と責め、要求し続けるのが特亜。既に、韓国とは日韓基本条約で国家間の賠償は済んでいる。慰安婦についてはアジア女性基金まで作った。国際司法裁判所に提訴しても収まるはずがないといっておきながら、賠償しろでは無限にたかられるのがオチ。

最後にo)についてだけれど、厳しい言い方をすれば、思考放棄。こちらに戦争する気がなくても、相手が戦争する気であれば、戦争になってしまう。戦争するわけにはいかないというのは、こちらの理屈であって、それが相手にも等しく適用されるとは限らない。だから、万が一の為の備えは必要だし、自衛隊が現行憲法の手枷足枷によって、備えとして不十分になっているのであれば、備えになるべく、対処しなくちゃいけない。その辺りの指摘が抜けている。

宮崎氏は日本は戦争できる国じゃないという認識でいる。それは氏の認識であろうけれど、だからといって、いついかなるときも戦争しない、できないままで放置すれば、やがて、戦争が出来る国によって滅ぼされることだってある。日本が戦争できる国でないのであれば、尚更のこと、戦争に至らないで済むような対策をきちんと取らないといけない。

それがガンダムを沢山作って行進させることだとは言わないけれど、いざとなれば軍事力を行使できる体制も覚悟もあるということそのものが抑止力として働くことを忘れてはいけないと思う。




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この記事へのコメント

  • 三太夫

    日本の「憲法9条信者」は、どうして憲法9条を世界に拡散しないんでしょうか??
    特に日本に近い「シナ・南北朝鮮」にお薦めすればいいものを…と思います。
    そして、彼らが「これはいいものだ!」と感謝して、各国の憲法に反映して、軍備費が削減されたら、「日本の平和憲法は正しかったのだ!」と確認できます。
    世界各国や日本の周辺諸国が軍備増強する中で、日本だけに「憲法9条を守れ!」「軍備削減しろ!」と云うのは、「日本滅亡をたくらむ反日諸国とその傀儡」による謀略以外の何物でもありません!
    2015年08月10日 15:22
  • 白なまず

    子供の頃に日本は負けたのだから悪い国=悪い大人がいたはずと言う感情的な刷り込みがされたのだと思います。GHQ焚書などにより日本は世界最強の軍隊をもち日本が負けた理由を真面目に研究して日本人が事実を知り目覚めたら都合が悪い人々が日本国内に日本人の顔をして暮らしているのではないでしょうか。私の父や伯父は軍隊へ入り出征していますが、伯父の中にも当時小中学生くらいの人が居て、伯父兄弟の意見の違いが正に宮崎氏の消化不良の未解決状態で、特に戦争前と後で教師の豹変ぶりで相当混乱したようです。だから子供の頃の経験が大人不信のピーターパンばかり生じたのでしょう。それに比べ一度でも敵と戦えば、戦場の論理と政治の混乱とどんなに無茶苦茶な状態に成ろうとも、最後の一人に成ろうとも自分が出来る事と、行う時期を常に判断できる日本人になっていた父や伯父とはどうしようもない認識の差があるが、なんとも歯がゆい。法事などで集まっても戦後68年経っても同じような議論を繰り返す当時子供であった伯父は苦しみ続けている。因みに伯父は3人存命しているが、一番末っ子の伯父は教師になり、安倍さんの中学か高校の頃に教えていて、総理に成った
    2015年08月10日 15:22
  • とおる

    日本国憲法は、占領下の日本(occupied Japan)で成立した「占領憲法(occupied constitution)」です。
    破棄が妥当な扱いでしょう。(政治的には難しいでしょうが)
    2015年08月10日 15:22
  • sdi

    同調圧力というか、「反戦が正義」考えるのがクリエイターの世界では多数派というか常識みたいなものになってるかもしれませんね。今回の参議院選でも、私がフォローしているコミック関係のクリエイターのうちミリタリー系の仕事をしている方以外のほとんどが自民党の改憲案に対して反発しまくってました。例の児ポ法の件もあり、アンチ自民を明確に表明してました。彼らのフォロワーにも同意する旨のTLがそれなりの数がありました。まあ、有権者全体からしたら些細な数かもしれませんがね。
    そういう業界の「空気」を考えたとき、「あの」ジブリの御大がこのような発言をしないほうがおかしいかもしれません。今回のジブリの作品は「堀越二郎」「零戦」ですから。早速、韓国からこんな反応付きです。本人の本音でしょうが、過激な発言をすることでバランスをとったつもりかもしれません。
    「韓国ネット民が「英雄」宮崎駿監督をバッシング 「風立ちぬ」は零戦を美化し戦犯国としての反省がない!」www.j-cast.com/2013/07/23180008.html?p=all
    2015年08月10日 15:22

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