憲法改正と集団的自衛権

 
日経新聞が7月14日から16日にかけて実施した世論調査を行い、参院選で最も重視する政策については、「景気や雇用」がトップで32%。続いて「社会保障」が23%、「消費税など税制改革」が13%という結果となった。

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それに対して、「震災復興」は6%や「エネルギー政策」「外交や安全保障」「憲法改正」はいずれも5%と振るわない。有権者の意識は景気・雇用関係に向いていることが浮き彫りとなった。

先日「変化した安倍総理の演説」のエントリーで、安倍総理の参院選の演説は、景気の話題を中心に据えていると述べたけれど、なるほど、有権者の意識が景気に向いているのなら、そのニーズに応えるという意味では当然のことだと思われる。

ただ、筆者は、くだんのエントリーで、自民党は、景気以外にも、憲法改正、外交安全保障、エネルギー問題など、今後の政策の方向性をちゃんと国民に伝えるべきではないかとも述べていたのだけれど、なんと偶然にもエントリー当日にあたる7月15日放送の長崎国際テレビ番組のインタビューで、安倍総理は「われわれは9条を改正し、その存在と役割を明記していく。これがむしろ正しい姿だろう」と憲法改正を発言した。

これまで96条だなんだといっていたことから考えると、はっきりと踏み込んだ発言ではあるけれど、96条で憲法改正条件云々と議論するよりはよほどスッキリしているし、選挙を前にして、いうべきことを言ったという意味では評価できる。

だけど、日経新聞の世論調査が示すように、大半の国民の意識が景気に向いているというのが本当であれば、折角の安倍総理の発言も、それほど国民には届かないかもしれない。その意味では、参院選で、ちゃんと、9条改正をやると言ったという"アリバイ"発言的な結果に終わる気がしないでもない。ただ、ローカル放送とはいえ、選挙前に言ったからには、そこから先は有権者にも責任は発生する。

当然、この安倍総理の発言について、憲法改正を阻止したいと思っている野党が噛みついてくることは十分考えられる。
先の日経新聞の世論調査では、支持政党別に重視する政策についての結果も公表しているのだけれど、面白いことに、各政党の支持層別にそれぞれ重視する政策が違っている。

例えば、社民党支持層が一番重視する政策は「憲法改正」で25%。共産党も「社会保障」の25%に次いで、「憲法改正」が20%を占めている。また、みどりの風の支持層の26%、生活の党支持層の13%が「エネルギー政策」を重視するとしている。

これは、「憲法改正」や「エネルギー政策」を重視すると答えた人が全体では5%しかなかったことを考えると突出して多い。つまり、今回の参院選では争点がないとか、安倍総理の信任投票だなどとマスコミがいう割には、意外と、政党とその支持層は政策によって、カテゴライズされていると言える。

だけど、支持層が「憲法改正」や「エネルギー政策」を重視していると一口にいっても、「憲法改正」が社民党で、「エネルギー政策」が、みどりの風と、生活の党。従って、その中身は「憲法改正反対」と「原発ゼロ」であることは言うまでもない。

その意味で、彼らがどれくらいの議席を取るかが、そのまま民意を表すと同時に、憲法改正や原発ゼロの可能性がどこまであるかを示すことになる。



現在までの選挙情勢が揺るがなければ、自民は70議席、公明が9から11議席くらいを取り、社民、みどりの風、生活の党は議席を獲れるかどうかとされているけれど、憲法改正を例に考えると、たとえ自民が70議席取ったとしても、参院議席の3分の2は162議席。憲法改正の前向きな、みんなの党、維新の会、新党改革など党の協力を得られたとしても、これらは一桁議席と目されているから、全然足らない。

民主党が割れて、大量の議員が憲法改正に賛成しない限り、現状では改憲は殆ど不可能。だからといって、次の参院選の3年後まで憲法改正を待てるのかというとこれも分からない。その頃の世論がどう転んでいるか。

今はアンチ民主党の流れで自民に支持が集まっているけれど、3年もの間には色んなことが起こっているだろう。アベノミクスだって、流石におおよその結果がでて、その善し悪しが判定されていると思われる。万が一、アベノミクスが失敗しようものなら、憲法改正なんてやっている余裕なんて無くなっているだろう。

無論、その逆に、憲法改正不可避の世論になっている可能性もあるし、現行憲法の問題点について、広く議論して国民にも浸透させる必要はある。だけど、今現在、中国の尖閣侵犯行為、北朝鮮の挑発、韓国の反日と、数年前と比べて、明らかに国防を強化しなければならない状況であるにも関わらず、国民の目が憲法改正に向かないのなら、現行憲法の範囲内でなんとかする手立ても考えなくちゃいけない。

そこには、集団的自衛権の問題も当然入ってくる。集団的自衛権とは、「他の国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利」と定義されるのだけれど、日本でいえば、例えば、在日米軍が第三国から攻撃された場合、日本も迎撃のための共同行動を取れるのかどうかという問題もそれに該当する。

5月8日、安倍総理は、参院予算委員会で「日本領土周辺の公海上を警備している米国艦船が攻撃された際、日本の艦船が助けなくてもいいのか」と問題提起しているのだけれど、これについても答えを出して、対策を立てて置かなくちゃいけない。

この集団的自衛権の行使については、有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」が、尖閣の警備を念頭に新たな「類型」を検討している。

現在、尖閣周辺の海と空は、海自護衛艦や空自の警戒機および、アメリカ海軍、空軍などによる哨戒活動が行われているけれど、双方は互いに別々に行動している。

安保法制懇は、双方は、どちらも尖閣の哨戒活動を行っていることから、これらを自衛隊とアメリカ軍の「共同行動」と位置づけ、仮に、アメリカ軍が攻撃された場合でも、自衛隊が集団的自衛権を行使し反撃できると提起し、また、中国軍が突発的にアメリカ軍の艦艇や航空機を攻撃するといった、明確な武力攻撃とは判断しにくい事態のグレーゾーンにおいても、集団的自衛権が行使できるか議論するという。粛々と進めていただきたい。




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この記事へのコメント

  • sdi

    参議院選挙が終わるまでだんまりで終わったあとに改憲言い出すよりは、道義性はたかいでしょうね。
    しかし、あえて言いますが私は安倍政権は改憲なんて考えずに、日本経済の再建に専念してほしかったですね。半年や1年くらいでは日本の景気が回復するか?。数字のうえでは上向きになるでしょうがそそんなもの手綱を緩めればあっという間に失速してしまうのではないでしょうか?景気が上向きになるだけでなくそれが持続しないと「景気回復」にはならない。私は本当に日本の景気回復が軌道にのるには2~3年くらいはかかると見ています。安倍首相には「アベノミクス」をその間は全力で堅持推進して頂きたいです。最近の中韓の反日(韓国は侮日かも)が強烈になったのも根日本の国力とくに経済力が低下してきているのと無縁ではないでしょう。其の面からも国力回復は急務ではないでしょうか。
    安倍首相の信条からすると「わたしが首相になったのは・・・」と思われるでしょうし、日頃の言動から理解もしますが、あのタイミングで首相になったら「景気回復」が最優先事項となるのは総裁選の段階で解りきっていたはずです。自分で総裁選で立候補して野田政権を打倒して首相を目
    2015年08月10日 15:22
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    アンカー青山氏の解説を聞いていると, 安倍首相の
    最近の発言は参議院後の自民党安定多数の状況を
    睨んで述べているもののように思われる.

    つまり, 9条改正を主張しているのは, 選挙の大勢が
    決したこれからは自民党内が主戦場であるということだろう.
    2015年08月10日 15:22

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