今日はごく簡単に…。
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7月9日、平成25年度版の防衛白書が閣議で報告され了承された。白書の内容については、既にこちらで公開されているけれど、そのダイジェストから、第Ⅰ部の見出しとその要約を拾っていくと次のとおり。
・概観…我が国を取り巻く安全保障環境の一部は顕在化・先鋭化・深刻化しているとまぁ、見出しとその要約だけでも、日本を取り巻く状況がはっきり分かる。防衛白書の第Ⅰ部の表題は「わが国を取り巻く安全保障環境」となっている。つまり、この第Ⅰ部で取り上げられている項目こそが、今の日本が安全保障を考える上で、特に注意しなければならないものであるということ。
・米国…安全保障戦略の重点をよりアジア太平洋地域におく方針だが、厳しい財政状況による影響が注目される
・北朝鮮…北朝鮮の軍事的な動きは、東アジア全域の安全保障にとっての重大な不安定要因となっている
・中国…既存の国際法秩序とは相容れない独自の主張に基づき、力による現状変更の試みを示しており、不安を抱かせる
・ロシア…プーチン大統領が権力基盤を維持しながらも、経済の構造改革等の諸課題に対応していくのか注目される。
・東南アジア…南沙諸島や西沙諸島の領有権などをめぐって中国との間で主張が対立。
・サイバー空間をめぐる動向…サイバー攻撃が多発しており、中国、ロシア、北朝鮮の政府機関などの関与が指摘されている
・国際テロリズムの動向…グローバル化の進展により、テロ組織内外の連携、武器の入手などがより容易になった。
その筆頭のアメリカは財政事情に不安があり、北朝鮮が東アジア全域の不安定要因。そして、中国は俺様ルールを振りかざしながら、力による現状変更の試みをしている、と、事実そのまんまを記している。正に、概観に記しているように、日本を取り巻く安全保障環境の一部は「顕在化・先鋭化・深刻化」している。
この防衛白書について、さっそく中国は噛みついた。
7月9日、中国外務省の華春瑩報道官は記者会見で「防衛白書の指摘は事実と異なる点がある。中国は国際法と国内法に基づいて正常な海洋活動を行っており、非難する余地はない。…このところ日本は中国の脅威を誇張して地域の緊張と対立を引き起こしており、日本の意図や進んでいる方向を憂慮せざるをえない」と述べている。
以前、筆者は、「EEZと海洋覇権を狙う中国」や、「中国による海上ブイ設置と俺様ルール」のエントリーで、中国は、身勝手な自国法を国際法としてゴリ押しする傾向があると述べたけれど、華春瑩報道官の「中国は国際法と国内法に基づいて正常な海洋活動を行っており云々…」という言い分からして既に、"既存の国際法秩序とは相容れない独自の主張に基づき、力による現状変更の試み"をしている。
また、中国は「日本は中国の脅威を誇張して地域の緊張と対立を引き起こしており」なんていっているけれど、では、今年1月に、中国海軍艦艇が海自護衛艦に火器管制レーダーが照射したのは、地域の緊張と対立を引き起こさなかったのか。
かくいう中国は、今年の4月に国防白書を出している。その全文はこちらで公開されているのだけれど、その前書きの一部を次に引用してみる。
中国は終始変わることなく独立自主の平和外交政策と防御的国防政策を励行し、さまざまな形の覇権主義と強権政治に反対し、他国の内政に干渉せず、永遠に覇権を争わず、永遠に覇をとなえず、永遠に軍事拡張を行わない。中国は、相互信頼・互恵・平等・協力の新たな安全保障観を提唱し、総合的な安全保障、共同の安全保障、協力による安全保障の実現を追求する。前段で「永遠に覇をとなえず、永遠に軍事拡張を行わない」と謳っておきながら、その直後に「国の安全と発展の利益に適う国防強化と強大な軍隊の建設」と言っている。"永遠に軍事拡張を行なわない強大な軍隊"とは、一体どんな軍隊なのか。筆者にはちょっと想像がつかない。第一、「国の安全と発展の利益に適う国防強化」と言っている時点で、国の発展に合わせて軍事拡張する、と言っているようなもの。
中国の国際的地位にふさわしく、国の安全と発展の利益に適う国防強化と強大な軍隊の建設は、中国の現代化建設の戦略的任務であるとともに、中国が平和的発展を実現するための強固な保障でもある。「中国国防白書:中国の武装力の多様な運用 前書き」より引用
更に、国防白書の「一、新たな形勢、新たな挑戦、新たな使命」の章では、「一部の国はアジア太平洋地域での軍事同盟を深化し、軍事プレゼンスを拡大し、しばしば地域の緊張状態をつくり出している。一部の隣国は中国の領土主権や海洋権益にかかわる問題で、それを複雑化、拡大化する動きに出ており、日本は釣魚島問題で紛争を引き起こしている。」と日本を名指しで批判している。
拓殖大学の茅原郁生名誉教授は、中国の国防白書について、経済的利益や同胞救助の名目で、域外への武装力出動が増える可能性を指摘している。
日本からしてみれば、尖閣で紛争を起こしているのは、そっちだろうと言いたいところだけれど、元々、防衛白書は、自国の国益を守るためのものであるから、自国の認識をその通りに述べることは至極当然なこと。だから、その意味では、防衛白書も外交の一種だといえるのかもしれない。
少なくとも、日本国民も、たとえ理不尽で無茶苦茶だと思えたとしても、隣国が国防白書になんて書いているかくらいは知っておいたほうがよいのではないかと思う。
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