シリア情勢が緊迫しています。その前にちょっと昨日の続きから…・

8月28日、潘基文国連事務総長は、オランダ・ハーグでの記者会見で、歴史認識問題で日本に自らを省みるよう求めた自身の発言について、「日本で誤解があり残念だ。…歴史認識問題や政治的対立は政治指導者らが強い意志を持って対話を通じて解決すべきだということだ」と、いきなりトーンダウン。日本がすかさず批判したのが効いたようだ。
この潘基文国連事務総長、世界からはあまり評判がよろしくない。潘氏は2006年に第8代の国連事務総長に就任したのだけれど、国連の主要ポストに韓国人ばかりを起用してワシントン・ポスト紙から「縁故主義」が批判されたことがある。ニューズウィークなどは「世界で最も危険な韓国人、潘基文」、「やっぱり危険な事務総長、潘基文」と題した記事を掲載し、「歴史的にレベルの低い国連事務総長のなかでも際立って無能。核拡散の脅威や難民危機にも関心を示さない潘のおかげで、国連はあってもなくても関係ない存在に堕ちた」とこき下ろしている。
今回の歴史認識発言しても、緊迫するシリアではなく韓国にいるとはどういうことだ、という批判もあるようだ。
そのシリアだけれど、こちらの解説によると、「アラブの春」が遠因だという。
何でも、チュニジアやエジプトからの「アラブの春」の運動を受け、シリアでも政府に政治・経済の改革を訴える市民デモが行なわれたのだけれど、アサド政権は市民との対話を呼びかけると共に、デモの拡大を防ぐための弾圧を行った結果、市民の抗議デモはやがて武装勢力による反体制運動へと変化していった。
普通であれば、人員・装備共に劣る反体制派は簡単に鎮圧されそうなものなのだけれど、アサド独裁政権打倒を望む欧米諸国や湾岸アラブのサウジアラビアとカタール、トルコ、そして、長年に渡って、アサド政権と対峙し、弾圧によって国外での亡命生活を余儀なくされていた在外シリア人から、武器供与や資金提供が為された。
更には、国外から厳格なイスラム信仰を主張する、武装した過激なサラフィー主義者がシリアに流れ込み、反体制派は、アサド政権と対峙できるだけの力を得ているのだそうだ。こうしたことを背景にシリアは「内戦状態」となっている。
こうした中、8月21日、シリアの首都ダマスカス近郊で、化学兵器がロケットのようなもので打ち込まれ、多数の市民が気分が悪くなり病院に担ぎ込まれる事件が起こった。反体制派の代表組織「シリア国民連合」の幹部、ジョージ・サブラ氏は記者会見で計1300人が死亡したことを明らかにしたのだけれど、アサド政権はこれを否定し、反対に、化学兵器を使ったのはテロリスト(反体制派)だと主張してる。
国連は化学兵器が使用されたかの調査団を派遣。28日には国連安保理で、シリアへの武力行使を認める決議案について協議したのだけれど、ロシアと中国の反対で物別れに終わった。
アメリカのオバマ大統領は、アメリカ公共放送PBSの番組で、「配備システムやロケットが使われていることを考慮すると、反体制派が今回の攻撃を実行できたとは考えられない。我々は、シリア政府がこれを実行したとの結論に達した」と、国連決議抜きでの武力行使を示唆。それが今の状況。
だけど、オバマ大統領は、イラク戦争で当時のブッシュ大統領が「大量破壊兵器がある」として攻撃し、結局なかったことについて厳しく批判し、イラク戦争を「間違った戦争」だとまで言って、大統領になった。そんな彼が、踏み出すシリアへの武力介入は「間違った戦争」にはならないのか。
確かにオバマ大統領は、シリアへの介入には消極的だった。内戦が激化しても動かなかった。だけど、「大量の化学兵器が運ばれたり使用されたりする様子が見え始めたら、それが米国にとっての『レッドライン』だ」とは警告していたから、今回の化学兵器攻撃疑惑が、そのレッドラインを超えた証拠だと見做したことになる。
ただ、そのレッドラインの元となる判断基準が何かとなると、少し曖昧なように見えなくもない。例えば、オバマ大統領は、化学兵器がテロ組織の手に渡り、対米攻撃に用いられる危険に触れ、「化学兵器を使うことで、米国の国益が影響を受ける状況を生み出しているという点をアサド政権が理解するよう望む。…再び化学兵器を用いない方が賢明だという極めて強い警告をシリア政府は受けることになる」と語っている。これは、アメリカの"国益"を判断基準にした発言。
一方、ケリー長官は、「倫理への冒涜だ。…大統領は最も憎むべき兵器を使った側に責任を取らせる決意だ」と批判。こちらは倫理観が判断基準としたかのような発言をしているし、また、ハーフ副報道官は、多数の市民を無差別に殺害したことが一般的に国際法違反に当たると強調。こちらは国際法を根拠としている。
だから、アメリカは、少なくとも、自身の国益と倫理観と国際法の3つを論拠に上げているのだけれど、もしもオバマ大統領がこれら3つの理由でシリアへの攻撃を是とするのなら、逆に言えば、この3つさえ揃えば「間違った戦争」にはならないということになる。
だけど、このロジックをあまり前面に出すとアメリカ自身もそれに苦しめられる可能性がある。それは最後の「国際法」の部分がブーメランになりかねないから。ハーフ副報道官が、多数の市民を無差別に殺害したことが国際法違反になると発言したとき、ロイターの記者から「アメリカが核兵器を使用し、広島、長崎で大量の市民を無差別に殺害したことは、あなたの言う同じ国際法への違反だったのか」と質問され、ハーフ氏はコメントできなかった。アメリカにとっても、"無差別殺害"を武力行使の理由に挙げることは、自分で自分の首を絞めることになってしまう。
ここでせめて、武力行使の安保理決議でも取り付けていれば、国連の承認を得ているからという理由づけもできるのだけれど、それがない状態での武力行使に、これら3つの理由で世界を説得できるのか。或いは世界の説得なんて必要ないと押し切るのか。難しい決断が要求される。
…本当はこの続きを書く積りでいたのですが、力尽きました。明日以降にまたエントリーさせていただきます。
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
彼がシリア攻撃を行なうとすれば, 大統領の
回りにいるもの達の損得勘定.
支那との関係や如何に?
グローバル資本との関係や如何に?