潘事務総長"反日"発言の裏に潜む狙い

 
今日は、少し遅ればせながら、この話題です。

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8月26日、韓国を訪問している国連の潘基文事務総長は、ソウルの韓国外務省で記者会見し、韓国記者から「北東アジアの国々が憂慮している日本政府の平和憲法改正の動きに対する国連の立場」を問われ、「日本の政治指導者は極めて深く自らを省みて、国際的な未来を見通すビジョンが必要だ」と、日本を非難を行った。

更に、歴史認識や領土問題に関連した質問についても、「正しい歴史認識を持ってこそ、他の国々から尊敬と信頼を受けられるのではないか」と批判した。

この発言に対して、 27日、菅官房長官は「非常に疑問を感じている。…潘氏の真意を確認し、引き続き日本の立場を国連で説明していきたい」と、政府として国連代表部を通じて発言の真意を確認することを明らかにした。

外務省は、潘氏の記者会見の発言録を取り寄せて精査したようなのだけれど、政府筋によると「強い口調で日本の非のみに言及しており、明らかに中韓寄りの発言だ。中立性を求めた100条に違反する恐れもある」と不快感を示しているという。

ここでいう中立性を求めた100条というのは、国連憲章のこと。国連憲章100条を次に引用する。
第100条
1.事務総長及び職員は、その任務の遂行に当って、いかなる政府からも又はこの機構外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならない。事務総長及び職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動も慎まなければならない。

2.各国際連合加盟国は、事務総長及び職員の責任のもっぱら国際的な性質を尊重すること並びにこれらの者が責任を果すに当ってこれらの者を左右しようとしないことを約束する。
と、100条1項で、他の政府に指示を求めても受けてもならず、国連の地位を揺るがすような行動をしてはならないとし、2項で、国連加盟国は1項を果たせるよう干渉しない、と定めている。

巷では、今回の潘発言について、国連トップの立場でありながら、中立性を破っているだとか、国連憲章違反だとかいう批判の声が上がっている。それはその通りだろうと思う。

だけど、肝心なその"中立"について、国連憲章には、その明確な定義はされていない。それどころか、国連憲章日本語版テキストには、"中立"や"公正"といった単語すら一言も出てこない。

国連の中立性といけれど、それは、単に100条1項の「事務総長及び職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動も慎まなければならない」から導き出されているものに過ぎない。

要するに、国連の地位を傷つける"おそれ"がなければ、いくらでもやってもよいわけで、いくら"中立"を叫んだとしても、その基準自体が変わる可能性があるということ。ではその基準とはどのようにして決める、或いは決まるのか。



一つには、世界からの了解が得られることという基準が考えられる。

国連事務総長が他国を批判したのは、今回の潘氏が初めてというわけじゃない。例えば、2004年9月15日、当時のアナン国連事務総長は、イギリスBBCとの会見で、イラク戦争は違法かとの質問に、「私の見解では国連憲章に合致していないと思う。…違法だった。…国連の承認や国際社会の広範な支持がない、イラクのような軍事作戦が再び起こらないことを望む」と明確に批判している。これは中立性を損なっていないのか。

だけど、このアナン氏が明確にアメリカを批判した9月15日というのは、イラクでの戦闘が終結し、国連軍が大量兵器を捜索しても見つからず、捜索を断念した9月13日の翌々日。即ち、アメリカがイラク攻撃の根拠の一つとしていた、大量破壊兵器の存在が否定されたタイミングだったということ。つまり、世界がアメリカが掲げたイラク戦争の大義に疑念を抱いたタイミングで、「違法だった」と国連事務総長が発言したのだけれど、その状況下で、国連の中立性を問う声は殆ど上がらなかったと記憶している。これは、同時に、この発言に対して、世界が"中立"のお墨付きを与えたことを意味してる。

誤解を恐れずにいえば、アナン氏は、国連の地位を傷つけるおそれがなくなったタイミングで、いわば"後出しジャンケン"の発言をすることで、国連の"中立"を守ったとも言える。

要するに、国連の"中立"とて、世界が認めた土俵の上の"中立"に過ぎず、その時の状況によって、その中立の基準などいくらでも変わり得る、ということ。

その観点から、今回の潘事務総長の発言を見ると、2つの可能性がある。一つは潘氏が自身の立場をわきまえず、国連を私物化し、韓国の利益となる発言をしたという可能性。もう一つは、中立を守るという国連の立場を知っていながら、あえて、日本を批判する発言を行うことで、一種の既成事実を作り、世界的・国連的"中立"の基準を、反日にシフトさせようと目論んだ可能性。

前者の場合は、潘氏のみならず、国連の信用を失墜させる行為なのだけれど、後者であった場合は、日本が強力に抗議しないと、それが世界に承認され、新たな中立の基準になってしまう恐れがある。

潘氏は今回の発言について、「国連事務総長として、個別の問題に深く介入するのは望ましくないが」と前置きしているから、筆者は、後者の可能性が高いとみる。

実は、潘事務総長の過去の発言を少し追ってみると、日本以外に対しては結構慎重な発言をしている。

例えば今年の4月11日、北朝鮮のミサイル発射問題で北東アジアが緊張していた時期、潘事務総長はアメリカCNNのインタビューに答え、北朝鮮の金正恩第一書記に「挑発を自制し、対話の場に出てきてほしい。…民族の究極的な平和と統一のため、全ての懸案を解決できるよう、最近の挑発的行動を自制し、対話の場に出てくるよう心から願います」と呼びかけている。

また、8月19日、ニューヨークの国連本部での記者会見では、エジプト情勢について「今は報復の時ではなく和解の時。…憤りがどのようなものであれ、対話で解決されるべきだ」と述べている。更に、シリア内戦について、化学兵器使用が確認された場合は実行者の「責任が追及されねばならない」と述べたのけれど、記者から、どうやって責任を問うのかと質問されると、「報告を踏まえた上でどう行動していくかは国際社会が決める」と明言うを避けた。

北朝鮮には「挑発を自制し、対話の場に出てきてほしい」といい、エジプトには、「憤りがどのようなものであれ、対話で解決されるべきだ」と呼びかける。そして、シリアには「責任の問い方は国際社会が決める」と逃げる。そのくせ日本に対しては、「正しい歴史認識」だの「深く自らを省みて」だの批判する。潘氏は、はっきりと"中立"の基準を使い分けているように見える。

これが、北朝鮮やエジプト、シリアに対して語ったのと同じ中立基準をつかえば、日本に対しては、「対話の場に出てきてほしい」という要請になる一方、韓国に対しては「憤りがどのようなものであれ、対話で解決されるべきだ」という忠告になるだろう。そして、歴史認識については「責任の問い方は国際社会又は、2国間で合意すべきだ」になると思われる。

ところが、日本は既に安倍総理が対話の意思を示しているし、歴史認識についても、その責任は日韓基本条約によって、とっくの昔に2国間で合意・解決されている。日本に瑕疵はない。

だから、潘事務総長は、日本以外の国に対するこれまでの発言と踏襲するのであれば、韓国に対して「憤りがどのようなものであれ、対話で解決されるべきだ」というべきだということになる。それをしなかったのは、意図的なものだったのかどうかは分からないけれど、放置すれば、国連の中立基準が"反日"寄りにシフトする可能性がある。だから、"しっぺ返し"戦略なり、"倍返し"なり、兎に角きちんと抗議して、国連の中立性をシフトさせないようにする必要があると思う。




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この記事へのコメント

  • 白なまず

    国連は連合国に主導権があるので敵国の日本が国連で大きい顔するのが反日勢力には許せないのでしょう。まともに機能しない国連から脱退して「資金提供を止めてやる!」くらいの態度を示さないと付け上がる一方です。昔の国際連盟を日本主導で作れば、加盟しないのは反日国のみになると思われるので、因縁つけられる事もなくなるし、国連の名のもとに無意味な国連軍派遣に参加させられる事もなくなるし、イスラム教国やキリスト教国などともバランス良く協議ができる場になるだろうし、、、国連は必要ないと思います。
    2015年08月10日 15:22
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    「裏があるのか?」と思ったが結局は半島的な表ばかりだった.
    2015年08月10日 15:22

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