自衛隊が海兵隊を創設する日

 
昨日のエントリーの続きです。

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既に防衛省は、防衛大綱に従って、「海兵隊機能」を持った水陸両用部隊を設ける準備を始めている。

来年度には、その為の"準備部隊"として、陸自に「水陸両用準備隊(仮称)」も創設するという。準備部隊は、九州、沖縄を担当する陸上自衛隊西部方面隊の傘下で、西部方面普通科連隊(西普連)と連携。離島奪還作戦のノウハウを習得して、戦闘能力の向上を図り、その後編成される水陸両用部隊が、占領された島を奪回する役割を担う。

西普連は、2002年3月27日に新編された比較的新しい部隊で、島嶼防衛を主な任務とする離島対処即動部隊。英語表記の頭文字からWAiRとも呼ばれる。部隊は、連隊本部及び本部管理小隊が、約60名、第1から第3中隊が各およそ200名の合計、約660名で構成される。昨日のエントリーで、対馬から南西諸島までをカバーする自衛隊員はわずか660人といったのは、この西普連を指す。

中隊は、小銃小隊3個、対戦車小隊、81ミリ迫撃砲小隊および120ミリ迫撃砲小隊各1個からなり、小銃小隊のうち1個はレンジャー小隊。それ以外にも、本部管理中隊を除いた隊員の約7割がレンジャー資格を有している精鋭部隊。

西普連は、アメリカ海兵隊とも合同訓練の経験があり、先日のカリフォルニアでの離島奪還訓練「ドーン・ブリッツ」にも参加しているのだけれど、演習後の6月17日、統合幕僚副長・磯部晃一陸将、第1海兵遠征軍・トゥーラン中将、第3海兵遠征打撃軍・ヒューバ少将による共同インタビューで、トゥーラン中将が「4ヵ月前のアイアンフィストでは米軍の船、米軍の航空機を使用して演習を実施したが、今度は海上自衛隊の船、航空機、陸上自衛隊の航空機を運用して米軍とともに問題なく遂行できた。自衛隊の能力の高さに感心している。将来自衛隊の能力がどのような速度で高まっていくのかも想像できる」とコメントしているから、その能力の高さが伺える。

防衛省は今年度にアメリカ海兵隊と同タイプの水陸両用車「AAV7」4両、来年度にはAAV7の指揮通信型と回収型の派生型2両を調達して、それらを準備部隊に配備し、水陸両用部隊の新編前に試験運用するそうなのだけれど、アメリカ海兵隊と同タイプを用意するということは、当然、アメリカ軍との合同作戦を行うことも想定しているものと思われる。

防衛省はそれ以外にも、水陸両用部隊の編成に向けて、様々な装備を改修または調達しようとしている。



例えば、空では、オスプレイを導入する計画が進んでいる。防衛省は平成26年度予算の概算要求で調査費約1億円を計上し、早ければ、平成27年度にも導入することを目指している。

従来型の輸送ヘリより速度で2倍、搭載量で3倍、航続距離で4倍の性能を持つオスプレイの導入は、紛争地への戦力投射を考えれば当然の選択だろう。

また、海でも、「おおすみ」型輸送艦に、水陸両用車やオスプレイを搭載できるように、大規模改修を行う。具体的には、艦内でオスプレイを移動させられるよう格納庫と甲板をつなぐエレベーターを改修、甲板には耐熱塗装も施す。また水陸両用車については、発進用に船尾のハッチを改修し、滑り止めの塗装を行うことを想定しているようだ。そして、先日、進水した護衛艦「いずも」には電子会議装置などを整備して、水陸両用戦の司令部機能も持たせる。計画では、26年度に、主に設計を行い、27年度以降に順次、改修を進めるようだ。

更に、物資等の輸送については、輸送艦以外にも、PFI方式でも民間フェリーの導入も検討しているという。PFIとは、プライベート・ファイナンス・イニシアチブ(Private Finance Initiative)の略で、要するに、民間資金を活用して社会資本を整備する方式のこと。既に、イギリスなど海外では、この方式による公共サービスの提供が行なわれている。

日本では、平成11年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」が制定されているのだけれど、日本版海兵隊の運用にも、一部このPFIを使って、民間の輸送力を活用しようということ。具体的には、PFI法に基づいた特別目的会社を設立して、平時は定期運航などの運用を委ねておいて、有事や訓練の際には、自衛隊が使用する。

その目的は、装備導入費を効率化するためだそうで、防衛省によれば、輸送に適する能力を持った輸送艦を新造すれば約100億円かかる上に、運用経費も必要になるところ、民間フェリーが活用できれば、年間使用料としての数億円だけで済むとしている。それにまた、船舶の運用経験の無い陸自にとっても、操船や整備を民間に任せられるというメリットもある。ただ、いざ有事の際に、紛争地まで民間人に操船させてよいのかといった話もあるから、その辺りの対策も必要になるだろう。

筆者は2011年7月のエントリー「米空母『キティホーク』を買え」で、横須賀で退役した空母キティホークを誘致する計画(横須賀・三浦半島を元気にするプロジェクト)があることを紹介したことがあるけれど、PFIで特別目的会社をつくるなら、この横須賀の計画に相乗りして、キティホークを運用する運搬会社でも作ったらどうか。

数年前、「1000円高速」が行なわれていた当初、客をそちらに取られて、民間フェリーが窮地に陥っているなどと報道されていたけれど、今でも民間フェリー会社のいくつかが倒産している。ならば、それらフェリー経験者を予備自衛官として採用し、キティホークでなくとも、半官半民の従業員として特別目的会社で吸収・雇用できないものかとさえ。

まぁ、現実にはキティホークは、運用整備や維持費用を考えると難しいだろうけれど、PFIで眠っている民間活力を有効活用するのなら、そうしたことも考えてよいように思う。




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この記事へのコメント

  • 白なまず

    日本海軍の敗因の一つに島の占領範囲が広く守るのが困難であったと倉山満先生の動画(第12週3話ガダルカナル攻防戦)で知りました。最前線の守るべき島に駐屯するより地域を守る強力な基地を作り、何か有れば速攻で対処できる様にした方が良いと思います。

    第12週1話真珠湾攻撃~世紀の奇襲大成功!...のハズだった
    http://www.youtube.com/watch?v=1HDH4QpznSc

    第12週2話ミッドウェー海戦~まだまだ強いぞ!帝国陸海軍
    http://www.youtube.com/watch?v=2UTn84EIXYY

    第12週3話ガダルカナル攻防戦~弱いアメリカが強い日本に勝てたワケ
    http://www.youtube.com/watch?v=y5fZeI9y2cM
    2015年08月10日 15:22
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    田母神氏は奪回ではなく抑制力と主張している.
    レーダー網完備と潜水艦, 護衛艦, 空母の拡充
    が必要だろうし, 過疎地への自衛隊の配備を
    進めるべきだ. 過疎値への配備は地元の経済にも
    安心感にも大きく貢献する.

    そのためには, 自衛隊配備に対する地方自治体の
    権限をもっと縮小すべきである. 何で国を守る
    ことに地方自治体が口を出すのか?
    2015年08月10日 15:22
  • sdi

    重装備を輸送するのは船になるとしても、即応部隊の緊急展開はやはり空路にするしかありません。海兵隊化も必要ですがそれ以上に緊急展開部隊の輸送手段の拡大と整備とが急務ではないかと思います。西普連や空挺団を空中機動させる専任部隊を編成して、両者を一括指揮できるように部隊を統合する、くらいは必要でしょう。特に西普連は部隊が長崎、輸送手段の西部方面航空隊が熊本、とちょっと離れすぎです(習志野と木更津も結構離れてますけどね)>同じ敷地内で同居するのが一番なんですが。敵対勢力のSOFによる、輸送手段に対する破壊工作に西普連の兵力を使うこともできますしね。いまや西普連は、対馬海峡と南西諸島の両方を睨まなくてはならない状況です。西普連のほかに南西普連が欲しいくらいですね。
    2015年08月10日 15:22

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