桜島の噴火で、鹿児島が大変なことになってますね。

8月18日、鹿児島の桜島が噴火した。噴火したのは、桜島の昭和火口で、大きな噴石が山の3合目まで飛んだほか、噴煙が火口から5000メートルの高さにまで上がったのが観測された。また、噴火に伴って、小規模な火砕流が火口の南東およそ1キロまで流れ、火山灰は北西の方向に流れた。鹿児島市の繁華街・天文館地区でも噴火から数分後には灰が降り始め、小一時間にわたって灰が降り続いた。
噴火の映像を見る限り、相当大規模な噴火に見えるのだけれど、今回の噴煙の高さ5000メートルというのは、2000年10月7日の桜島南岳山頂火口の爆発と同等なのだそうだ。京都大学防災研究所火山活動研究センター長の井口正人教授によると、今回の噴火は「昭和火口では最大級の噴火だが、ただちに今後の大規模噴火を予感させるものではない」とのことで、昨年7月24日の南岳山頂火口の爆発に比べても、今回の爆発ははるかに小さい規模だという。
それでも、日中にもかかわらず薄暗くなる街に、傘を差したり、ハンカチで顔を覆ったりして灰を避ける人々をみると、尋常ではないことが分かる。降灰の影響で、車はライトをつけて徐行し、鹿児島県内を通るJR日豊線は一部で約1時間半にわたって運転が見合わせられたそうだから、実際の社会生活に影響が出ているのだけれど、火山灰というのは雪などとは格段に厄介なもの。
火山灰とは、火山から噴出される溶岩や鉱物の結晶の欠片のことで、直径2mm以下の大きさのものを指す。物質としては火山ガラス、鉱物結晶、古い岩石の破片などで構成される。
火山灰に対する個人の対策については、色んなところで注意されているけれど、極単純にいえば、「吸い込まない、触らない、流さない」が原則。
降ったばかりの火山灰は、溶岩や鉱物の結晶が割れたばかりであるため、粒の角は、鋭く尖っている。だから、目に入ると、角膜を傷つける恐れがある。その時は擦らずに流水でそっと取るとよいそうだ。
無論、吸い込むのも駄目。呼吸器系疾患につながる恐れがある。細かいことをいえば、火山灰中の鉱物結晶に含まれることがある、クリストバライト(方珪石)を長期間吸い込むと「珪肺」という肺疾患になることがある。尤も、今回のような爆発的な噴火では、火山灰に占めるクリストバライトの割合は3~6%と比較的少なく、溶岩が崩れ落ちるような噴火の場合だと、その割合は10~24%と、比較的多くなるようだ。
また、火山灰は元々、火山ガスの中で生成されたものであるから、その表面には塩酸と硫酸といった火山ガス成分が付着している。これらは水に容易に溶けるから、火山灰に少しの水が加わっただけで、それらが溶けだして、金属製品を錆びさせたり、木綿の衣類などを痛めてしまう。
何れにせよ、人体や金属製品にとって、あまり良いものではなく、吸い込まない、触らないが基本になる。
また、火山灰は、社会インフラや交通機関にも影響を及ぼす。
今年の夏のような猛暑だと、どこの施設でもエアコンを全開で使っていると思うけれど、エアコンなどの空調のフィルターに火山灰が詰まると止まってしまう。中には冷蔵庫等が止まるケースもあり、店によっては営業中止になるところも出てくるだろう。
また、鉄道でも線路に灰が積もると、灰が車輪とレールとの間の絶縁体となって、線路に電流を流すことで稼働させている、鉄道運行の安全システム等が機能しなくなる恐れがある。更に、車道でも、一般車両の車高である10cmを超えて灰が積もってしまうと、車が故障したり、スリップしたりする原因になる。こうなるともう運転なんかできなくなる。
更に、ジャンボジェットなどにも影響がある。ジャンボ機のエンジンの燃焼温度は非常に高く、火山灰がエンジンに吸い込まれると、灰が融解してエンジンの排出口を塞いでしまうことがあるため、火山灰が存在する空域は飛行できない。
要するに、大量の火山灰は物流を麻痺させる可能性が高く、数日分の水や食料は個々人で蓄えておかないと危ない。
それ以外にも、電気系統にも不安がある。火山灰は水を含むとべとべとになって其処彼処に付着して、雪のように溶けることがない。例えば、火山灰が電線ケーブルに降り積もった後で雨が振ると、その火山灰が水を吸って粘土のように、べっとりとケーブルに付着してしまう。あまりに酷いとその重さでケーブルが破損する恐れがある。尤も、桜島の辺りのケーブルは、灰が積もっても、直ぐに落ちるように三角形の形をしているらしいのだけれど、それ以外の地域で普通に使われている丸い電線ケーブルには、勿論そんな配慮は施されていない。
だから、もし、富士山なり、箱根山なりが噴火して、首都圏に大量の火山灰が降るようなことがあれば、場所によっては停電するところも出てくるかもしれない。但し、大都市部に関していえば、電源供給ラインは複数本あるので、1~2本断線したくらいで、いきなり電源供給がストップすることはないようだ。
また、水を吸うとべとべとになる火山灰は、当然のことながら、下水なんかに流したら、一発で詰まる。だから、排水溝に火山灰を流すのは厳禁で、掃除機で吸い取って、ゴミとして回収するのが原則になる。因みに箒で掃くと、尖った火山灰の粒子で床などを傷めてしまうことがあるので、掃除機で吸い取るのが良いらしい。
富士山の噴火が噂される昨今、首都圏の人にとっても、桜島の噴火は他人事じゃない。その時になっても慌てないように、普段から、備えだけはしておきたいもの。
「火山灰 触るな 流すな 吸い込むな」
この記事へのコメント
白なまず
【桜島の月別の爆発回数】
http://www.jma-net.go.jp/kagoshima/vol/data/skr_exp_num.html
【汚される霊峰富士】
http://www.y-asakawa.com