注目を集めるLNG燃料船

 
8月14日、政府が液化天然ガス(LNG)を燃料に使う船舶などの補助事業に日本郵船が内定したことが明らかになった。

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近年、国際海運業界では、CO2などの温室効果ガスや窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)などの大気汚染物質について、排出量の削減が求められている。

船舶から排出される大気汚染物質については、世界の海運のルールを作る国際海事機関(IMO)によって、NOxやSOxなどの排出規制が開始されていて、現在、一般海域とECA(大気汚染物質放出規制海域)について順次その規制値が強化されてきている。

IMOは2020年にも船舶による硫黄分の排出規制を強化し、全海域でコンテナ船やタンカー船の燃料に含まれる硫黄分を3.5%から0.5%に下げる。また、規制で先行する欧州諸国は2015年に北海やバルト海で0.1%とする方針でいるという。更に、二酸化炭素(CO2)の排出量も過去10年平均に比べ2割の削減が義務付けられる見込み。

現在、船舶の燃料は、主に重油なのだけれど、今後は規制地域での運航が難しくなる公算が高く、対応が急がれていた。そこで注目されているのが、燃料としての天然ガス。

天然ガスは、これまで燃料として用いられてきた石炭や石油と比較して、NOx、SOx、CO2の排出量が少なく、環境面において非常に優れているとされる。故に、今後、順次強化される大気汚染物質規制に対して、国際海運における船舶用燃料として、その実用化が大きく期待されている。

日本でも、2011年7月に政府の新造船政策検討会が公表した新造船政策にて、天然ガス燃料船の実用化・導入が位置付けられた。そして、2012年3月には、国土交通省の海洋政策懇談会で、今後取り組むべき海洋政策の方向性が報告書として取りまとめられている。

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この報告書の中で、天然ガス燃料船の早期実用化は、「海事産業における最先端の技術開発」として盛り込まれている。

政府は、今回の事業で、この秋にも日本郵船にLNG燃料船を1隻発注する予定で、2015年に完成の見込み。投資額は約15億円で、経済産業省と国土交通省が3年間で数億円を補助するようだ。

発注予定のLNG燃料船は、港湾で大型船を押したり引いたりして、正確な位置に着岸するのを助ける小型船で、まずは、小型船を実験的に導入して、LNGの補充方法や火災などに備えた防災体制のノウハウを蓄積するという。

だけど、世界では、既にLNG燃料船は実用化されている。とりわけ、北欧諸国において、内航フェリーやオフショアサポート船を中心に天然ガス燃料船の普及が進んでいる。

ノルウェーでは、NOx排出への課税制度を導入しているのだけれど、このNOx税の減免措置としてNOxファンドが創設され、参加企業への軽減税措置や、NOx削減に関する投資費用に対して最大80%が補助されるなど財政的な支援が行なわれている。2000年には、世界初の天然ガス燃料船が就航しているのだけれど、このNOxファンドによって、2006年以降、次々と天然ガス燃料船が就航している。

また、スウェーデンのヨーテボリ港や、オランダのロッテルダム港でも、天然ガス燃料船向けにLNGを供給する港湾施設開発を検討している。

更に、EUでも、2010年から2013年までの間に、パイロットプロジェクトとして、天然ガス燃料船2隻が建造される計画で、大型天然ガス燃料エンジンの開発支援も実施。バルト海周辺6カ国によるLNG燃料に係る供給インフラの設備導入も検討されている。

LNG燃料船は、2013年現在、欧州の海運会社で、小型船を約40隻導入しているのだけれど、ノルウェー船級協会によると、世界のLNG燃料船は2020年までに1000隻に増えるという。

日本もLNG燃料船で先行するノルウェー政府との連携を進めていて、2011年5月に、国土交通省とノルウェーの貿易産業省が、洋上風力発電、天然ガス燃料船、シップリサイクル等を中心に、海事技術及び産業分野における緊密な協力と情報交換の促進に向けた覚書を締結。2012年5月には、貿易産業大臣の来日に合わせて、ワークショップも開催している。

ただ、一口にLNG燃料船の導入といっても、船だけの話じゃなくて、ガス供給や港湾インフラとも連携して取り組む必要があるし、また、現時点では、天然ガスを燃料として使用する際の国内法規すら未整備。

だから、今回の日本郵船へのLNG燃料船発注などパイロットプロジェクトを通じて、技術的課題の解決、インフラシステムの確立、安全規制の整備が急務となる。今後の取り組みに注目したい。

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この記事へのコメント

  • 白なまず

    船舶エンジンのLNG化なんて今頃ゼロから取り組む訳ではないので、それ程問題があるとは思えませんが、LG自動車の普及は技術ではなくコスト高で普及しいない。自動車に搭載可能な小型エンジンは各自動車メーカが実用化していて動力源としての船舶での利用なんて直ぐに出来そうである。一体何を開発したいのか?段階的に政府主導で開発する意味など無いように思える。LNGエンジンの普及を阻害している規制やコスト高を押さえる試みを行わなければ自動車と同じである。SOX、NOXの具体的削減効率のデータなんて実際のエンジンのデータが五万とあるので削減計画なんてナンセンスだと思う。船舶メーカと自動車メーカ、発電機メーカ等LNGを使う団体が渾然一体で取り組める様に政府が主導すれば良いだけでLNGの利点を効果的に早く導入できるはずである。

    http://ja.wikipedia.org/wiki/天然ガス自動車

    CNG燃料タンクの構造
    http://www.honda.co.jp/ngv/tec_5.html
    2015年08月10日 15:22
  • 日比野

    白なまずさん、コメありがとうございます。

    LNG燃料船で調べた限りでは、仰るとおりエンジン廻りの技術的課題は殆どないようです。但し、不具合時や許容量を超える自然気化ガス(BOG)が出た時に、それらを無臭排煙として燃焼させるガス燃焼装置(GCU)は、三菱重工が開発中ですけれども、まだ国内供給はできてないようですね。

    それ以前に、LNG燃料船については、国際的にも未だ船舶関係や燃料補給関係の安全基準が確立されていないようで、それらへの対応も睨んで、段階的導入を進めつつ最終仕様にまで絞り込もうとしているように見えます。

    かといって、基準が固まるまで待っていたら、国内のLNG燃料船対応のインフラも未整備のまま放置され、今後増え続けるLNG燃料船を国内港湾に受け入れることもできないでしょうから、今から準備をしておくのだと思われます。
    2015年08月10日 15:22

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