護衛艦「いずも」進水す

 
今日は極々簡単に。

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8月6日、海上自衛隊の新型ヘリコプター搭載護衛艦22DDHの進水式が横浜市内で開かれた。

命名は、事前の噂どおり「いずも」。全長248メートル、基準排水量約1万9500トンで過去最大の護衛艦。22DDHについては、もう2年近くも前のエントリーの「軽空母『22DDH』」で取り上げたこともあり、諸元その他について改めて言及しないけれど、凄いと思うのは、その建造期間の短さ。

起工が2012年1月27日で、進水式が2013年8月6日。僅か1年半かそこらで進水にまで漕ぎ着けている。前級の「ひゅうが」が2006年5月11日に起工、2007年8月23日進水だから、まぁ、殆ど同じといえば同じなのだけれど、排水量等「ひゅうが」より2回りほど大きくなっても、建造期間が変わらないのは大したものだと思う。

他国の同規模の軽空母と比べてみても、勿論、その構造や運用が異なるとはいえ、フランスのカブールが2001年7月17日の起工で、進水が2004年7月20日でほぼ丸3年。スペインのフアン・カルロス1世が2005年起工の2008年3月10日進水とこちらも3年近くかかっていることを考えると、やはり日本の建造は早いほうではないかと思うし、このクラスの"護衛艦"であれば1年半で造れるとなれば、それだけでも他国への牽制になるだろう。

「いずも」の命名については、「第三艦隊旗艦「いずも」進水します!」のエントリーで触れつつ、「あかぎ」「かが」「ながと」辺りの名はまだまだ取っておくようだと述べたのだけれど、実は、海自内での命名案の中には「ながと」も有力候補として上がっていたようだ。

海自艦艇の命名については、部隊のアンケート結果や語感などを踏まえて選んだ案を防衛相が許可する形で命名するそうなのだけれど、大臣に提出する前の段階で「ながと」が有力な数候補の中に残っていた。だけど、関係者によると、中国などを無用に刺激するのは避けたいとの判断も働き、最終的に見送りとなったという。

ということで、最終的には「いずも」にはなったけれど、海自から「ながと」が挙がったということであれば、それなりの艦だと認識されているということでもある。

この「いずも」の進水について、中韓が早速反応しているけれど、特に中国の反応が喧しい。8月7日には、1面で「準空母」と写真入りで大きく報じている。

中国各紙は「いずも」について、オスプレイの搭載能力があり、F35も「改造すれば搭載可能」などと図解入りで解説。艦名についても「対中侵略戦争に使われた艦船と同じ名前」とし、「原爆の日にあわせて準空母を進水させた。政治的な意味がないわけがない」と述べ「事実上の空母」だと警戒感を露わにしている。

実戦配備前のたった一隻の護衛艦が進水しただけで、この警戒っぷり。このように「空母」が持つ軍事プレゼンスは大きいと言わざるを得ない。

中国の「環球時報」は社説で「中国は空母を発展させることで対抗していくしかない」と指摘したようなのだけれど、中国初の空母「遼寧」は旧ソ連のヴァリャーグをウクライナから買い入れた後、改造したもの。

「遼寧」については、その主任設計士である、中船重工集団公司の王治国氏は中国青年法のインタビューで、「不完全な統計ながら、遼寧艦には航空機に関する、1万件を超えるさまざまな問題が存在する」と述べ、改造についても「遼寧艦のプロジェクトに従事した全部門が直面した最大の課題は、少ない時間と大量の作業だ。彼らは15ヶ月で、30ヶ月の作業を完了した。プロジェクトが始まってから、同部門の同僚のうち約15人が作業により犠牲になった」と答えている。

15人も犠牲になるなんて、一体、どんな作業をやったのかと思うけれど、少なくとも突貫工事であったことには間違いないし、一万件もの問題を抽出したのはよいとしても、そのフィードバックや対策を考えると、まだまだ先は長いように思われる。

中国がヴァリャーグを改造するのに要した、突貫15ヶ月で、日本は「ひゅうが」を新造し、ほぼ同じ期間で「いずも」を新造できる能力があることを内外に知らしめた。建造技術の蓄積という観点からは、他国から軽空母を買って改造して云々よりは、最初から自前で建造できるほうがずっといい。

今後の「いずも」の活躍に期待している。




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この記事へのコメント

  • opera

    次は同型の24DDHですか。ここまでは確定事項ですが、さらに2隻の軽空母を建造する計画もあるようで、イージス艦を1,2隻追加建造する計画と併せて、着々と進めて欲しいものです。
     仮に軽空母4隻体制になっても、1隻は練習・訓練、もう1隻は定期的な補修・メンテナンスに回すと、実戦配備できるのは2隻(セット)と言われています。どのような艦隊編成をしてどう運用するのかが極めて重要になるでしょう。

     ところで、中国は中古の欠陥空母を一隻保有しただけで、どのように運用するのかが見えていません。単艦で運用すればミサイルの的になるだけですし、そもそも遼寧自体は訓練艦に過ぎず実戦配備は予定していなかったとも言われていますが、国内の過剰な期待からか即実戦配備されそうな勢いです。また、空母建造能力を獲得するなら、ヴァリャーグを分解・解体して研究し、新しく建造した方が良かったと思うのですが、このままでは次は無さそうです。
     中国は建造技術及び艦隊運用の蓄積が無いだけでなく、海上覇権を確立するということは地上の陣取り合戦とは根本的に違う、ということをほとんど理解していないように思えます。日本はそれを踏まえて
    2015年08月10日 15:22
  • 日比野

    特亜の脅しには屈しないさん、コメントありがとうございます。

    >いずもはF-35Bは改修しないと運用できないとされているが、…既に対応済みかも知れませんよ

    御指摘の点については、私もこの記事のリンク「第三艦隊旗艦「いずも」進水します!」で述べていますが、恐らく耐熱処理済みだろうと思います。2011年9月の記事「軽空母「22DDH」」を書いた時点では、耐熱処理は噂段階でしか確認できてませんでしたけれども。ともあれ、F35B搭載は内々想定しているかと思います。
    2015年08月10日 15:22
  • sdi

    中国側がDDH「いずも」の脅威度を高く評価してやたらと警戒しているのは、彼らが練習空母「遼寧」を非常に重視しているからではないでしょうか。「自国の初の空母に対抗する形で建造された仮想敵国日本の空母型の軍艦」が彼らは「いずも」に対する評価の第一段階です。当然、自分たちが「遼寧」に対して下した評価、軍事上の価値を日本はその艦に持たせているはずだ、と一人相撲しているのかもしれませんね。
     ただ、純粋に船舶としてみたら「遼寧」より「いずも」が上なのは当たり前です。一度スクラップにしかけた艦と新造艦ですからね。問題は軍艦としてどうかですが、「母艦」である以上は艦自体もさることながら搭載機の数・性能、そしてなにより運用能力が問われます。「建造した」ことよりも「建造した艦をどう使うか」のほうが重要ですね。
    2015年08月10日 15:22
  • 特亜の脅しには屈しない

    いずもはF-35Bは改修しないと運用できないとされているが、先日行われた日米合同演習にてひゅうがにオスプレイが耐熱板無しで離着艦できたり、サラッとエレベーターに入っちゃったりしてるところみると既に対応済みかも知れませんよ。とにかく島国であり、キチガイ共に囲まれた日本にはF-35Bを載せた空母っぽい(笑)護衛艦を中心とした艦隊が3部隊位は最低必要です。
    2015年08月10日 15:22
  • 白なまず

    船が出来るまでと言う動画があった。九州の小規模の民間向けタンカーを造くる造船所の物。護衛艦とは作りも装備も違うので参考にならないかもしれないが、それでも造船所の現場の様子や技術の高さに驚く内容。護衛艦を作った造船所は日本トップレベルの造船所だから公開されたらびっくりする事が多いのだろう、、、簡単には真似できない職人技や工期短縮の為の設計のアイデアなど多数あるだろう。この様な大中小の造船所が日本各地にあり地元の産業になっている日本のポテンシャルは計り知れない。

    船ができるまで1
    https://www.youtube.com/watch?v=1VWoAcDlJZI

    船ができるまで2
    https://www.youtube.com/watch?v=Uf9F2DGzdqk
    2015年08月10日 15:22

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