中国で自由への闘争が静かに進行している。

6月26日、中国内外の著名学者や知識人ら123人は、華僑系ネット「博訊」を通じ、習近平政権に憲政の実現を要求する文書を連名で発表した。
この文書では、「われわれ公民は自らの尊厳を守り、文明的生活を送るための憲政秩序の構築を希望する。…憲政は社会主義に反すると主張する者もいるが、憲政を実行しない憲法は国家主席の迫害死すら防げなかった。…民意の監督を欠いた権力は公共の利益を代表せず、少数者による既得利益集団を形成した。われわれは自身の合法的な財産や収入すら守ることができない」と批判し、民主選挙や、言論、集会、結社の自由、特に政府を批判する言論の自由を要求している。
「憲政」というのは、勿論、憲法に基づいて行われる政治のことなのだけれど、中国でこれが要求されるということは、裏を返せば、中国の政治が憲法に基づいていないということを意味してる。
くだんの文書では、公民の権利と自由について要求しているのだけれど、現行の中華人民共和国憲法では、「共産党の指導」により成立した、中華人民共和国によって、中国公民が「国家の主人」となったと明記され、その権利については、主に「第2章 公民の基本的権利及び義務」の中に記されている。関係する条文を挙げると次のとおり。
第35条と、このように条文だけなら他の先進国並みの権利が謳われている。だけど、現状はどうかというと、それが護られているとはお世辞にも言えない。
・中華人民共和国公民は、言論、出版、集会、結社、行進及び示威の自由を有する。
第36条
1.中華人民共和国公民は、宗教信仰の自由を有する。
2.いかなる国家機関、社会団体又は個人も、公民に宗教の信仰又は不信仰を強制してはならず、宗教を信仰する公民と宗教を信仰しない公民とを差別してはならない。
3.国家は、正常な宗教活動を保護する。何人も、宗教を利用して、社会秩序を破壊し、公民の身体・健康を損ない、又は国家の教育制度を妨害する活動を行ってはならない。
4.宗教団体及び宗教事務は、外国勢力の支配を受けない。
第37条
1.中華人民共和国公民の人身の自由は、侵されない。
2.いかなる公民も、人民検察院の承認若しくは決定又は人民法院の決定のいずれかを経て、公安機関が執行するのでなければ、逮捕されない。
3.不法拘禁その他の方法による公民の人身の自由に対する不法な剥奪又は制限は、これを禁止する。公民の身体に対する不法な捜索は、これを禁止する。
第38条
・中華人民共和国公民の人格の尊厳は、侵されない。いかなる方法によっても公民を侮辱、誹謗又は誣告陥害することは、これを禁止する。
第39条
・中華人民共和国公民の住居は、侵されない。公民の住居に対する不法な捜索又は侵入は、これを禁止する。
第40条
・中華人民共和国公民の通信の自由および通信の秘密は、法律の保護を受ける。国家の安全又は刑事犯罪捜査の必要上、公安機関又は検察機関が法律の定める手続きに従って通信の検査を行う場合を除き、いかなる組織又は個人であれ、その理由を問わず、公民の通信の自由及び通信の秘密を侵すことはできない。
第41条
1.中華人民共和国公民は、いかなる国家機関又は国家公務員に対しても、批判及び提案を行う権利を有し、いかなる国家機関又は国家公務員の違法行為及び職務怠慢に対しても、関係のの国家機関に不服申し立て、告訴又は告発をする権利を有する。但し、事実を捏造し、又は歪曲して誣告陥害をしてはならない。
2.公民の不服申し立て、告訴又は告発に対しては、関係の国家機関は、事実を調査し、責任を持って処理しなければならない。何人も、それを抑えつけたり、報復を加えたりしてはならない。
3.国家機関又は国家公務員によって公民の権利を侵害され、そのために損失を受けた者は、法律の定めるところにより、賠償を受ける権利を有する。
第47条
・中華人民共和国公民は、科学研究、文学・芸術創作その他の文化活動を行う自由を有する。国家は、教育、科学、技術、文学、芸術その他の文化事業に従事する公民の、人民に有益な創造的な活動を奨励し、援助する。
先日も、習近平政権は、大学に対して、自由を教えるなと通達しているし、地方政府は債務返済の為、住民の住居を強制的に取り壊して退去させたりしている。
今年1月の「統制の国と連携の国」のエントリーでも触れているけれど、中国南部・広東省の週刊紙「南方週末」が、1月3日付の新年号で掲載する予定だった「憲政の夢が実現されて初めて、国家の自由や人民の自由を守ることができる」とする記事が、中国政府の指示で書き換えられているし、また、中国共産党内の改革自由派が運営する雑誌「炎黄春秋」も同じく1月に「憲政」を要求する論説を発表して、公式サイトが一時閉鎖されている。
これらをみても、中国共産党政府は自身の憲法に則った政治をやる積りなどさらさらないことが分かる。
中国政府は、こうした、国内の「憲政要求」に対して、度々反論している。
5月22日、環球時報は、「憲政要求」は理論問題ではなく、政治主張だとし、「実際には回りくどく、新たな言い方で、中国は西側の政治制度を受け入れるべきだという古い要求をしているだけ。…中国はしっかりと法治国に向けた道を進んでいる。」と主張。更に憲政要求は「中国の進歩を断ち切るものであり、国家の政治方向をねじまげるものだ。言っていることは結局は1種の幻想だ。頭脳をそのように急転換する必要はないだろう」と反論した。
また、8月5日付の人民日報では、中国における「憲政」の思潮は、「フォード財団が賛助する現代世界比較憲政史研究のように、米国情報機関が育成した各種基金の資金援助のもとで生まれ、発展してきたもの」とし、「警戒せざるをえない」と主張している。
憲法に則った政治をせよ、という要求を政治理論でなくて、ただの"政治主張"だとし、その裏にはアメリカの工作があり、国家転覆を狙うものだ、という中国政府の反論は、如何にも苦しい。そんな言い訳をするくらいなら、今の憲法など破棄して、中国は一党独裁国家ではあり、共産党の指示するもの以外の自由は認めない、と堂々謳ってみればいい。
それが出来ないということは、かの中国をしても、自由や人権という"世界的価値観"に、表立って刃向うことはできないということ。であれば、安倍総理がが常々発言している「法の支配に基づいて秩序を守る」というのは、中国の物凄く痛い部分を突いていることになる。
ともすれば、国内法を持ち出して、海洋権益などを主張する中国に対して、「貴方がたがそれほど国内法を持ち出すのであれば、貴方の国の憲法にある、思想表現の自由ももっとしっかり守ったらどうか」くらい言い返してやればいい。勿論、中国は内政干渉だと顔を真っ赤にして怒るだろうけれど、一般に内政干渉は、軍事力の行使や軍事力による威嚇、通商・金融の制限や禁止などといった政治的工作のことを指し、単純な説得や勧告は内政干渉とはならないとされる。
自分の国の憲法くらい守りなさいよ、というのが内政干渉に当たるのなら、中国が日本に対して「平和憲法を守れ」と四六時中言っていることなんかも、内政干渉になる。
今の中国に対しては、法による支配、憲政を行えというのは、一番効果があるように思われる。外見だけ、先進国を気取って取り繕っても、中身が伴っていなければ、先進国とは言えない。安倍総理の価値観外交は、それだけで中国を揺さぶるカードであると言える。
この記事へのコメント
sdi
「民主化された中国、言葉の響きは美しい。しかし、それが我々の利益になるのかね?」
という観点を忘れてはならないでしょう。リアリストならば。
中東の一連の「民主化」運動「アラブの春」の結果、既存の独裁もしくは非民主的手法による統治を進めてきた政権が軒並み没落していますが、其の後に来たのはさらなる混沌です。唯一ソフトランディングしたと思われていたエジプトがあの状況です。
民主化された中国が、今より対外的にも対内的にもマシな政治体制や統治を施行できるという確信を私は持てません。「交渉窓口が北京の党中央に一本化できるだけあの頃がマシだった」「共産党による統制が効いただけマシだった」とため息をつくような事態にならなければよいのですが。
白なまず
・美しい法と統治が、太陽・日本を興す
http://momo-matmkanehara-momo.blogspot.jp/2011/12/blog-post_20.html
ミシェル・ノストラダムス師の予言集
http://ja.wikisource.org/wiki/百詩篇第5巻
#24
高められた ウェヌスの下での王国と法、サトゥルヌスはユピテルの上に帝国を持つだろう。昇らされた太陽による法と王国、サトゥルヌスの人々によって最悪を蒙るだろう。
加治木義博氏訳
その法と支配者のもとに金星は興った。サチュールヌは、ジュピター帝国にかかわって右往左往。美しい法と統治が、その太陽を興した。サチュールナウは、その最悪を耐え忍ぶ
ジュピターはギリシャ神話の最高神で、ローマ帝国の神話でもあるつまり、ジュピター帝国とはローマ帝国であり、現代ではバチカン、EU、米国、ロシアの事、加治木氏の解釈では中国の事。サチュールヌは悪魔(サタン)の事。太陽とは古代ではエジプトで、現代では日本の事。
私のオカルト解釈では、その法と支配者のもとにルシファー(金星=光輝く者=