麻生副総理の「ナチスの手口発言」の教訓

 
麻生副総理の「ナチスの手口」発言が話題になっている。

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これは、7月29日、麻生副総理が国家基本問題研究所の月例研究会における講演で、改憲に絡みナチスを引き合いに「あの手口を学んだらどうか」と発言したことが、ナチスを肯定したものだ、と受け取られ騒ぎとなった。

まず、問題とされる麻生発言を引用すると次のとおり。
 僕は今、3分の2という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。

 そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持であったり、そうしたものが最終的に決めていく。

 私どもは、周りに置かれている状況は、極めて厳しい状況になっていると認識していますから、それなりに予算で対応しておりますし、事実、若い人の意識は、今回の世論調査でも、20代、30代の方が、極めて前向き。一番足りないのは50代、60代。ここに一番多いけど。ここが一番問題なんです。私らから言ったら。なんとなくいい思いをした世代。バブルの時代でいい思いをした世代が、ところが、今の20代、30代は、バブルでいい思いなんて一つもしていないですから。記憶あるときから就職難。記憶のあるときから不況ですよ。

 この人たちの方が、よほどしゃべっていて現実的。50代、60代、一番頼りないと思う。しゃべっていて。おれたちの世代になると、戦前、戦後の不況を知っているから、結構しゃべる。しかし、そうじゃない。

 しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。

 そのときに喧々諤々、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。『ちょっと待ってください、違うんじゃないですか』と言うと、『そうか』と。偉い人が『ちょっと待て』と。『しかし、君ね』と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、『そうか、そういう考え方もあるんだな』ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。

 ぜひ、そういう中で作られた。ぜひ、今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。

 靖国神社の話にしても、静かに参拝すべきなんですよ。騒ぎにするのがおかしいんだって。静かに、お国のために命を投げ出してくれた人に対して、敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かに、きちっとお参りすればいい。

 何も、戦争に負けた日だけ行くことはない。いろんな日がある。大祭の日だってある。8月15日だけに限っていくから、また話が込み入る。日露戦争に勝った日でも行けって。といったおかげで、えらい物議をかもしたこともありますが。

 僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。

 昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。

 わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪のなかで決めてほしくない。



麻生副総理の発言の要旨は、憲法改正は喧噪の中で行うべきではない、というものなのだけれど、全文を通して読むと、問題とされたナチス手口発言は、その悪しき例として取り上げているようだ。

麻生副総理は、この発言を撤回しているのだけれど、その際、次のコメントを寄せている。

 「喧騒にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげたところである。私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかである」

と、麻生副総理本人は、やはりナチスを「悪しき例」として使ったとしている。

だけど、この部分をあたかも、ナチスの手口を見習って憲法改正すればいい、という具合に解釈されたのが事の発端。アメリカのユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は、この麻生発言に対して「どのような手法がナチスから学ぶに値するのか。民主主義をひそかに機能不全にすることか」と非難声明を出していることからもそれは明らか。

はたして、この団体が麻生発言の聞きかじりで批判したのか、全文を見た上で声明を出したかどうかは分からない。だけど、もしも後者だとするのなら、それは、日本語の解釈を間違えたか、翻訳が間違ったかのどちらかだろうと思う。

なぜなら、麻生氏の問題の発言部分の主語をどう捉えるかによって、意味ががらりと変わると思われるから。つまり、問題とされる、"あの手口"を学ぶのは、一体誰なのか、ということ。

あの手口を学ぶべきなのが、「国民」なのであれば、くだんの文章は、「喧噪のなかで憲法改正をしたナチスの手口を繰り返させてはならない」という意味となって、麻生氏の主旨どおりとなるのだけれど、この対象が国民ではなく、「権力者」あるいは「政府」としてしまうと、今回の騒ぎのようにナチス肯定だとなりかねない。

もちろん、文章全体の文脈をきちんと追っていけば、後者のような解釈はまず有り得ないのだけれど、問題の部分のみ抜き出してしまうと、後者の解釈として流布させることは可能。実際、朝日新聞の8月1日付の天声人語はそう解釈した。次に引用する。
★天声人語

ぎょっとした。麻生副総理が7月29日、ある会で改憲に触れて、こう述べたという。
「気づいたら、ワイマール憲法がナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうか」。
同僚記者の取材と麻生事務所に確認した結果をあわせ、以下紹介する

▼麻生氏はまずナチスがどうやって独裁権力を獲得したかを語った。それは先進的なワイマール憲法の下でドイツ国民が選択したことだ、と。
いかに憲法がよくても、そうしたことは起こるのだ、と

▼次に、日本の改憲は騒々しい環境のなかで決めてほしくないと強調した。それから冒頭の言葉を口にした。
素直に聞けば、粛々と民主主義を破壊したナチスのやり方を見習え、ということになってしまう

▼氏は「民主主義を否定するつもりはまったくない」と続けた。
としても、憲法はいつの間にか変わっているくらいがいいという見解にうなずくことは到底できない

▼ヒトラー政権は当時の議会の機能不全に乗じて躍り出た。
対抗勢力を弾圧し、全権委任法とも授権法とも呼ばれる法律を作って、やりたい放題を可能にした。麻生氏の言うナチス憲法とはこの法のことか。
そして戦争、ユダヤ人大虐殺へと至る

▼巨大な罪を犯した権力集団を、ここで引き合いに出す発想が理解できない。
熱狂の中での改憲は危うい、冷静で落ち着いた論議をすべきだという考えなら、わかる。
なぜこれほど不穏当な表現を、あえてしなければならないのか。言葉の軽さに驚く。
と、朝日の社説子は、ナチスのやり方を"見習え"と書いているから、これはもう、明らかに、くだんの発言の主語を国民ではなく「政府」としている。これで意味が180度変わった。勿論、これを持って、いつものマスゴミの歪曲・捏造報道だと批判することはできる。だけど、麻生氏の言葉の選び方にも、今一つの工夫というか慎重さがあってもよかったようにも思う。

仮に、狙い撃ちされた「あの手口」という表現にしても、これが「あの教訓」という言葉だったら、天声人語の"異次元解釈"は出来なかったように思われる。その意味では、脇が甘いといえば甘い。

今日は死ぬのにもってこいの日だ」のエントリーでも触れたことがあるけれど、麻生副総理は、今年1月に、終末医療に関する発言でも、同じようにマスコミの餌食にされたことがある。この時も今回と同じく、発言の主語を「異次元解釈」することで、意味を180度引っくり返され、叩かれた。

当時の麻生副総理も、この発言を撤回し、「主語が抜けている」と反論しているのだけれど、麻生氏も、この時のマスゴミの"手口"に学んでいたのであれば、今回のナチス手口発言についても、その言葉選びは変わっていたかもしれない。

無論、それ以前に、取材した記者或いはマスコミは、麻生副総理に問題部分の主語について確認し、その上で報道すべきだったのは言うまでもない。そうしたことをせずに、「異次元解釈」を垂れ流すからマスコミはマスゴミだと言われてしまう。マスコミは、自分で自分を"ゴミ化"していることに気付かないといけない。




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この記事へのコメント

  • 白なまず

    ナチス・ドイツによるホロコーストについての博物館である「ホロコースト記念館」をイスラエルの首都エルサレムのヘルツルの丘(ヤド・ヴァシェム)、アメリカ合衆国ホロコースト記念博物館、広島県福山市のホロコースト記念館とドイツから離れた当事国ではない場所に建てている。この当事国と無関係の場所に宣伝用の建物を作る手法は韓国の少女慰安婦像とそっくりで、支那(朝日新聞)がやれば南京虐殺記念館が南京以外の場所に建てられるだろう。そして無知な人々へ彼らの解釈による歴史を浸透させる。他国への反論や内政干渉に使い世界中から非難とターゲットに思わせる手口。支那(朝日新聞)韓国はユダヤ人のやり方を見習ったのだろう。それで、ここから本題で、ユダヤ国債金融の連中は安倍政権がよほど嫌なのだろう。麻生さんの発言を捏造してまで世界中に嘘を広めた。勿論発信元は反日日本人記者それを華麗な連携プレーであっという間に拡散した。つまり、ユダヤ国債金融がバックに居て反日活動主導していて、その手先が日本のマスコミだという事が明らかになった。
    2015年08月10日 15:22
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    西村幸祐Twitterでは, 最初に共同通信社が
    「麻生氏はナチスの手口を使えといった」と書き,
    その後朝日が乗ってきたということらしい.
    反応の早い「ぼやきくっくり」ブログでは
    二回ほどこの話題を取り上げていた.

    人権団体の声明は非難というよりは強い調子での
    確認であると西村氏は書いている. 実際問題として,
    麻生氏がどんな政治家であるかは国内よりは海外で
    良く知られているのであるから, 人権団体の質問は
    「一体全体何が起きたのだ」ということだろう.

    事実がその通りなら, 日本政府は共同通信社が嘘を
    書いたことを公式に非難すべきだろう.
    これは「従軍慰安婦」の卑劣なプロパガンダと同じ事が
    我々の正に見ている前で起きたという稀な事態である.
    だから, 目先のきくメディアはもうほっかむりを
    決め込みそうだが, 反日メディアに対する反攻勢の
    一つのきっかけになると思う.
    2015年08月10日 15:22
  • 朱鷺池

    悪意のあるツールである、反日本マスコミは強い。
    情報を捻じ曲げる事を上から下まで信念で書く。宗教に近い。
    麻生さんは、考えながら話すからこうなる
    内にも外にも、敵は少なからず居る。今、頼むは貴方たちだ。
    2015年08月10日 15:22
  • sdi

    あちこちで散々分析だの解析だのされているけど、元々の論調が自民党政治に反感もしくは批判的なブログは「どう読んでも麻生副総理はナチスの手口を見習って静に改憲を進めよう、と言っているとしか思えない」的な解析を提示する一方、そうでないところは「ワイマール時代のナチスみたいなことになってはいけない」的な解析を提示してないかなあ、という読後感がありました。こうなると、もはや先入観というか情動が最後の判断基準になってしまってないですかね?。
    正直いって、麻生副総理の脇の甘さは今に始まったことではないです。私は「ワイマール時代のようなことを日本で繰り返してはいけない。狂騒のなかで改憲論議を進めてはいけない。(ここにいる皆様方も)わーわー騒がないで」と、あの会場の聴衆に対して言ったと理解しています。でも、こんなこといってはなんですが例えにつかったガジェットの選定にもっと神経を払って欲しかったですね。
    それに、言ったご本人が撤回発言してしまったのですから暗に「自分はそういう批判される要素を福田発言をした」認めてしまったようなものですから、今更ですけど。
    2015年08月10日 15:22
  • ナポレオン・ソロ

    お邪魔します。 ソロと名乗っているモノです、三四郎さんの処を伝って来ました。 共同通信社の捏造記事に日本中が振り回されて居ますが、事実は「日本の憲法改正は、騒々しくドタバタの雰囲気の中でやるべきではない、例えば、ナチスが、民族主義が台頭する熱狂と騒擾の裏側で、彼のワイマール憲法を何時の間にか、ナチス憲法に変えて終った様な結果に成る。 冷静で、腰を落ち着けた雰囲気の中で議論を深めて行かねば、ナチスの様な間違いを犯して終う」と云う話だった筈。

     其処を切り貼りして「ナチスの手口を遣って憲法を改正するべきだ」としたが、仮に麻生さんが心で思ったとしても、決して口では謂わない内容である事は、誰の目にも明らかである。それを逸早く嗅ぎ取った読売は、ヘッドラインを早々と差し替えて居る。 この後の展開では、共同通信の捏造の方が問題にされなければならない、と思うが・・

     一方、共同通信社内では、別の事でテンヤワンヤに成っている。 人事部長が、就職応募者の女子大生のメルアドに、「応募論文の文章を見てあげる」と誘うい出し、ホテルに連れ込んで性的暴行に及んで、訴えられる仕儀と相成った。 是を共同通信は文書
    2015年08月10日 15:22
  • 五階の住人

    麻生氏の発言は全世界に向けての公式発言ではない事を忘れて批判されている方が見受けられますが結果論ですね。
    そんな事を言い出せば会食での会話や新幹線での会話等私的な会話でもNGワードを気にして会話をしなければならなくなります。
    これはマスコミによる言論統制です。
    今回の主犯は記者にあります。
    その場で本人に真意を確かめて報道すべきなのです。
    2015年08月10日 15:22

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