日本の無人機が撃墜されるとき

 
昨日のエントリーのつづきを極簡単に…

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日本が領空侵犯の無人機に対して、撃墜も視野に対応を検討していることについて、案の定、中国が噛みついてきた。

9月17日、中国外交部の洪磊報道官は定例記者会見で、「中国側は釣魚島の領土と主権を防衛する能力があると確信する。…九一八事変(柳条湖事件)は日本軍国主義が中国侵略戦争を発動するきっかけとなった。中国では九一八を記念して中華民族の熱愛と平和、たゆまず励む偉大な精神を大いに発揚させ、中華振興のために努力奮闘しなければならない。…日本軍国主義が近代に発動した対外侵略戦争は、アジア近隣の被害国民に深刻な災難をもたらした。われわれは日本側が侵略の歴史を深く反省し、歴史や未来に対する責任ある態度に基づいて、平和的な発展の道を歩み、歴史問題における厳粛な態度や約束を守り、実際の行動をもってアジア隣国や国際社会の信頼を得るように再度促したい」と、歴史を持ち出すいつもの批判を展開した。

中国は、9月18日を意識したのか、柳条湖事件を持ち出して、それが"中国侵略戦争"の切っ掛けとなったと述べている。これは、中国外交学院国際関係研究所の周永生教授が「日本が釣魚島空域を巡航中の中国無人機を撃墜すれば、国連憲章などの国際法や日本の『平和憲法』に著しく違反する。日本が中国の無人機を撃墜すれば、日本が中日の衝突を引き起こしたとみなされるだろう」と述べたと報道されているように、要するに、先に手を出したら、それは侵略行為だ、と牽制したということ。

だけど、そういう中国とて、過去には無人機を撃墜したことがある。

昨年秋に、アメリカは北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射を監視するために、無人偵察機グローバルホークを北朝鮮に送り込んでいたのだけれど、中国筋によれば、グローバルホークは何度か、中朝境界をも越えて中国上空に侵入した為に、高高度向け迎撃用ミサイルを配備し、上空25000メートルと飛行していたグローバルホークを撃墜したという。

中国は領空を侵犯されたことを理由に無人機を撃墜しておいて、日本が領空侵犯した無人機は撃ち落すと言い出すと、侵略行為だとイチャモンをつける。

先の洪磊報道官は、「中国側は釣魚島の領土と主権を防衛する能力があると確信する」と述べ、尖閣は中国領土だと主張している。だけど、そのロジックでいくと、日本が尖閣上空を無人機で哨戒活動をすると、中国はそれを撃ち落さなければならないことになる。

自衛隊は、2014~18年度でグローバルホークを3機導入する計画を立てているけれど、実際にグローバルホークで尖閣周辺を哨戒したら、中国がそれを撃ち落してくることも計算しておく必要があると思う。それを考えると、日本も、先に手をだしたら、それは侵略行為であるという牽制発言を今のうちからしておいて、有事に向けた国際世論の下地作りを始めるべきではないかとさえ。

自衛隊は、自衛隊法が成立した昭和29年に海自と空自が新設されて、今の形になったのだけれど、当時は、サンフランシスコ講和条約(昭和26年)が締結されて間もなく、サンフランシスコ講和条約の署名を拒否したソ連とは、国際法上、休戦の扱いだった。

そんな最中、前年の昭和28年2月に、ソ連の戦闘機2機が、日本の領空を侵犯する事件が起きている。当時は、空自ができる前だったから、アメリカ軍機が日本の領空侵犯措置任務に就いていたのだけれど、スクランブルしたアメリカ軍機は、領空侵犯したソ連機を迎撃、1機を撃破し、他の1機を退去させている。

こうした状況下で翌年、空自が設立し、領空防衛任務はアメリカ軍から空自に移管されることになったのだけれど、ソ連とは休戦状態のまま。だから、もし、ソ連がまた領空侵犯したときに、空自がそれを撃墜したら、ソ連が休戦が破られたとして、軍事侵攻を再開する恐れがあったことに加え、当時結ばれていた、旧日米安保条約には、アメリカによる日本の防衛義務は明記されておらず、有事の際に介入してくれる保障もなかったことから、あえて、自衛隊法の「自衛隊の権限等」の領空措置任務については武器使用権限を明記する立法をしなかったという指摘もある。

こうしてみると、自衛隊法そのものも、時代にそぐわなくなっている感は否めない。まぁ、それを補うためのROEなのかもしれないけれど、自衛隊法にせよ、竹島にせよ、敗戦後、日本が独自の防衛力を持てない時代に起こったことが、今になって足を引っ張ってきているように思えてならない。

その意味では、今の日米安保が破棄されたり、アメリカ軍が沖縄から撤退した後に展開する出来事を予想することは容易だろう。

今は、無人機を撃墜するしないで口での牽制をしている段階で済んでいるけれど、自分で自分の身を護る自衛力がないと、その牽制すらできない現実を知っておく必要があるだろう。




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