台風18号と汚染水

 
台風18号が大きな被害を出しています。

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9月16日朝、大型の台風18号は愛知県豊橋市付近に上陸して列島を縦断し、近畿地方を中心に河川の氾濫や土砂災害など大きな被害をもたらした。気象庁は京都、滋賀、福井の3府県を対象に、初めて大雨特別警報を出した。避難指示・勧告は21府県で約60万世帯に上っている。

台風18号の影響は福島第一原発にも及んだ。

9月16日、東京電力は、福島第1原発の地上タンク群に設けた漏水防止用のせきが、台風18号による大雨の影響であふれる恐れが高まったため、7カ所のせきの弁を開けるなどして、たまった水を排出した。排出したのは、敷地西側にある「H9」や「E」、南側の「G4」などのタンク群のせきにたまった水で、放射性物質濃度は法定基準以下。高濃度汚染水が漏洩したタンクのあるH4エリアの水は仮設ポンプで水を移送している。

この汚染水問題に対して、原子力災害対策本部はこれまでに次の対策を取っている。
1)汚染水・汚染土の除染
  a) 海際のトレンチ内の高濃度汚染水をくみ上げて、タービン建屋に移送し、浄化する。(平成25年8月22日より開始。)
  b) タンクからの汚染水漏えいによって汚染された土を回収する。(平成25年8月23日より開始。)

2)汚染水の漏洩防止
  a) 汚染水が海洋、特に外洋に漏えいしないようにするため、原発の港湾内に海側遮水壁を設置する。(現在、一部設置済み。平成26年9月完成予定。)
  b) 汚染された水が海洋に漏えいしないようにするため、建屋海側の汚染エリア護岸に水ガラスによる壁を設置するとともに、汚染エリアから汚染水をくみ上げて、浄化する。(汚染エリアにおける水ガラスによる壁の設置は、平成25年8月9日に一部完了、汚染エリアからの汚染水のくみ上げは平成25年8月9日から開始。)
  c) タンク及びその配管に係るパトロールを、1日2回から当面1日4回に強化する。(平成25年8月22日より実施。)
  d) タンク及びその配管から漏えいが発生したとしても、周辺土壌等に汚染が拡大しないようにするため、開運用を行っている全ての堰(せき)の排水弁等を閉運用化する。(平成25年8月28日より順次実施。)
  e) タンク及びその配管から漏えいした汚染水が、地下水や海域へ流入する可能性のある経路に対して、常時監視等モニタリングを強化するとともに、海域のモニタリングも強化する。(平成25年8月20日より順次実施。)
ここで、2-bの"水ガラスによる壁の設置"というのは、建屋海側の汚染エリア護岸に、水ガラスを土中に流し込んで固め、遮水壁を設けることで、地下の汚染水が海に流出するのを防ぐ一種の地盤改良工事のことで、2号機付近の護岸を覆うように、長さ約100メートル、地下2~16メートルに水ガラスの遮水壁を建設している。

だけど、工事が始まった7月上旬から地下水位が上がり始め、8月10日には、水ガラス遮水壁手前2メートルに新設した観測用井戸で、地下水位が地中1.2メートルまで上昇していることが分かった。このことから、地下汚染水は、遮水壁を超えて海に流出しているのではと指摘されている。

また、タンクの漏洩については、8月19日に発見して、8月22日から対策を実施しているから、おそらくは、最短に近いスピードで対策を立案したのだろうけれど、無論、タンクの修理または取り換えが直ぐに出来る筈もなく、漏れがないかの点検確認の強化と、漏れの拡大抑止に留まっている。

つまり、水ガラス遮水壁にせよ、タンクの点検にせよ、問題が見つかってからそれに対応する、いわば、対処療法に終始しているのが現状。

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原子力災害対策本部は、今後の対策として、次を実施するとしている。
Ⅰ)汚染水・汚染土の除染
 a) 多核種除去設備(ALPS)について、不具合を修正し、高濃度汚染水の浄化を加速化する。(平成25年9月中旬開始予定。)
 b) 海際の主トレンチ内の高濃度汚染水について、移動式の浄化装置で、その濃度を下げ、その後、トレンチの閉塞作業を行う。
 c) 国費を投入し、より処理効率の高い高濃度汚染水の浄化処理設備を実現する。

Ⅱ)汚染水の流入及び漏洩の防止
 a) 建屋付近への地下水の流入量を抑制するため、建屋山側において地下水をくみ上げる。くみ上げた地下水の線量確認を行った上で、海洋に放流することについて、関係者の理解を得るよう最大限努力する。(平成25年3月に設置完了。稼働開始時期は調整中。)
 b) 建屋付近への地下水の流入量を抑制するため、建屋近傍の井戸により地下水をくみ上げる。(平成26年9月頃設置完了予定。)
 c) 建屋付近への地下水の流入量を抑制するため、建屋の周りを囲む凍土方式の陸側遮水壁について、国費を投入して、技術的課題を克服しつつ構築する。(平成26年度中を目途に運用開始。)
 d) 建屋地下に滞留する汚染水を完全に除去(ドライアップ)するため、建屋の止水(地下水が流入する建屋の隙間等を塞ぐこと)等、地下水が建屋に流入しないようにするための対策を実施する。
 e) 建屋海側の汚染エリアに雨水が染みこみ、新たな汚染水が発生することを避けるため、汚染エリアの地表をアスファルト等により舗装する。(平成25年10月から順次開始。)
 f) 増加する汚染水を確実に貯留することができるよう、必要なタンクを確実に増設する。
 g) タンクからの漏えいリスクを減らすため、溶接型タンクの増設を最大限加速化し、全てのボルト締めタンクのリプレイスを行う。
 h) リプレイスを行ったとしても、タンクや配管からの漏えいのリスクは存在するため、パトロールを強化するとともに、たとえ汚染水を貯留するタンク及びその配管から漏えいが発生したとしても早期に対応して周辺土壌等に汚染が拡大しないようにするため、タンクに水位計や漏えい検出装置等を設置する。(平成25年8月22日より順次実施。)
 i) 接合部の漏えいリスクが相対的に高い鋼製横置きタンクに貯留している汚染水を、リスクが相対的に低い溶接型タンクへ移送するとともに、鋼製横置きタンクのボルト締め接合部等強化を行う。(具体的な方法を検討中。順次実施。)
 j) 汚染水の浄化により発生する高レベルの放射性廃棄物を保管する高性能容器(HIC)などの設備を覆う建屋を設置し、万が一漏えいした場合のリスクを低減させる。(検討中。順次実施。)
 k) 高濃度汚染水の貯留に係る、これまでに判明していないリスクの洗い出しとリスクへの対応を実施する。(リスクの洗い出しをただちに開始。)
と、ここで、ようやくタンクの取り換えや、地下水の流入防止および汚染水の浄化といった、根本対策に近いものを行うとしている。

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まず、タンクの取り換えについて、筆者は、きちんとした溶接型タンクを使っていると思っていたのだけれど、実際にはボルト締めタンクが使われていた。いかにも"水漏れ"を起こしそうなボルト締めタンクを何故使っていたのかというと、どうやら、"急場しのぎ"ということだったようだ。

福島第一原発のある幹部は、「原発では本来、ネジ1本から特別仕様のものを使うが、今回の貯水タンクは緊急事態ということで、品質にばらつきがある既製品で間に合わせた。…ボルト式にしたのは短時間で増設できるという理由でした。でも、ボルト式は緩んだり、止水用パッキンが劣化すると汚染水が漏れるんじゃないかと当初から懸念されていた。途中で溶接された頑丈なものに交換すべきだった」とコメントしていて、当初からその危険性は指摘されていた。

また、先日亡くなった、事故当時、福島第一原発の所長を務めていた吉田昌郎氏は、生前「汚染水には、地震、津波の影響でがれきもまじっており、タンクの傷みが予想より激しい。耐用年数はかなり短くなるだろうな」とこぼしていたという。今回、漏洩が起きたタンクの耐用年数は4~5年と言われていたのだけれど、設置からわずか2年弱しかもたなかったことは今後の教訓とする他ない。

次に汚染水浄化については、東芝製の多核種除去設備(ALPS:Advanced Liquid Processing System)の本稼働が待たれる。

ALPSは、放射性トリチウムは除去できないものの、汚染水に含まれる多くの種類の放射性物質のほか、マグネシウムやカリウムなどのアルカリ性金属、更には、有機物なども除去できる装置で、東電の発注で東芝が受注し、昨年3月から建設を開始し、約1年かけて完成させた代物。

当初は、この装置によって、汚染水を浄化して海に放出することで、汚染水を保管するタンクは不要になると期待されていた。ところが、ALPSの試験稼働中に水漏れを起こし、わずか4カ月で停止を余儀なくされた。

水漏れは、溶接部が腐食して、目視で確認できるだけでも20ヶ所以上の穴が開いていたことが原因だと分かったのだけれど、これによって、8月中旬にも終わる予定だった試運転は年末までずれ込むことになった。

或いは、このALPSの計画遅延によって、汚染水タンクの増設が必要になり、タンクを取り換えられなくなったそうで、それもまた、汚染水漏洩の遠因になっているかもしれない。それに、APLSの溶接部分で腐食して孔が空いたということは、汚染水タンクを溶接タンクに取り換えたとしても同じように孔が開くことはないのかが懸念される。

それに、汚染水は原子炉の冷却に使用された海水なので、錆や腐食には、一段の配慮が必要になる。アクアラインなどの橋桁には、海水による腐食を考慮した溶接が施されていると思うのだけれど、そうしたことも含めて、対策とノウハウを積み重ねていくしかない。

東京オリンピックまでの7年の間に、完全にコントロール下に置くことが出来るか。政府および東電には、力を尽くしてもらいたい。

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この記事へのコメント

  • 白なまず

    ひふみ神示 第21巻 空の巻 第八帖

     衣類、食物に困った時は竜宮の音秘(オトヒメ)様にお願ひ申せよ。五柱の生神様にお願ひ申せば災難のがらせて下さるぞ、ゆわ、あれ、地震、風、雨、の神様なり、いろはに泣く時来るぞ、いろは四十八ぞ、四十九ぞ。神示はその時の心にとりて違はん、磨けただけにとれて違はんのであるから、我の心通りにとれるのであるから、同じ神示が同じ神示でないのざぞ。悪の世が廻りて来た時には、悪の御用する身魂をつくりておかねば、善では動きとれんのざぞ、悪も元ただせば善であるぞ、その働きの御用が悪であるぞ、御苦労の御役であるから、悪憎むでないぞ、憎むと善でなくなるぞ、天地にごりて来るぞ、世界一つに成った時は憎むこと先づさらりと捨てねばならんのぞ、この道理 腹の底から判りて、ガッテンガッテンして下されよ。三月三日、ひつ九のか三。

    いろはとは2011、2012、2013年の事です。
    一二三(ひふみ)とは2014年から始まる事です。2022年8月上旬まで続きます。
    2015年08月10日 15:22
  • 55

    震災が起きた年も他しか大きい台風来てませんでしたっけ?
    その時も汚染水とかさまざま漏れてたのではないでしぃうかね?
    というか最近の汚染水漏れ出の騒ぎ具合はいったいなんなのでしょうか
    事故当初から言われてたはずですが・・・原発収束宣言以降騒がれてましたかね?
    2015年08月10日 15:22

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